27年にわたり地域密着の情報を伝え、熊本県民に愛されてきた『てれビタ』。様々な調査結果から、この時間帯ではニュースが求められている傾向が出ており、東氏は「ここ数年、一生懸命取材したものが見てもらえないというつらさがありました」と率直に打ち明ける。TVerをはじめ配信ビジネスを見据えたIP(知的財産)の活用を考えた時に、生放送の情報番組はなじまないことがあり、収録番組のコンテンツを持ちたいという方針もあった。

一方で、看板番組を改編するのは大きな決断だ。「今、金曜19時でネットしている『小5クイズ(クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?)』も数字が良いので、そこをクリアするのは編成的にも絶対条件になります。でも、このチャンスを逃すわけにいかないんです」(平田氏)、「みんなが大好きな『てれビタ』という番組を終えてスタートするので、熊本から全国で見てもらう番組を作っていきたいと強く思っています」(東氏)と勝負に出た。

ちなみに、平田氏が上田晋也に「社運が懸かってます」とプレッシャーをかけたところ、「なんでそんな背負わせるんだよ!」と心地よいツッコミが返ってきたそうだ。

  • 平田毅取締役

  • 東美希プロデューサー

■有田からも企画提案「こんなことやろうよ!」

命運を託されたのは演者だけでなく、熊本県民テレビや、子会社の制作プロダクションの若手社員も同様。今回の番組は『てれビタ』のスタッフが主に担当し、レギュラーのバラエティ番組制作は全員未経験だが、東氏は「今の熊本の魅力を紹介するということで、情報番組でやってきたことは決して無駄ではないと思っています。私たちが変に何か仕掛けてやろうみたいなことは考えず、真面目に熊本の自慢できるところを紹介していきたいと考えています」と意気込む。

平田氏は「ローカル局の経験値が低い制作者が知恵を絞ったところで太刀打ちできる相手ではないので、くりぃむさんに気持ちよく遊んでいただいて、彼らから“こんなことできないか?”と言ってもらい、それを我々がちゃんと受け止めて一緒になって作っていけばいいのではないかと思います」と捉えており、『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)では自ら総合演出を務めるなど制作者目線を持つ有田哲平からは、「すでに3本くらい“こんなことやろうよ!”とお話を頂いています」(東氏)という。

また、スタート時は日テレの高橋利之氏が監修として参加しており、「だいぶ面倒を見てもらっています(笑)」(東氏)とのことだ。

大きな被害を受けた2016年の熊本地震から8年。熊本城とともに街の復興が大きく進んでいることに加え、台湾の半導体メーカー・TSMCの巨大工場進出も相まって、熊本が大きく変わろうとしていく中で今回の番組がスタートできることに、平田氏は「今の熊本を象徴しているのではないかと思います」と感慨深く語っている。

  • くりぃむしちゅー

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