数々のドラマや映画に出演し、昨年はNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(22~23)やGP帯ドラマ初主演となったフジテレビ系ドラマ『こっち向いてよ向井くん』(23)などで注目を集めた俳優の赤楚衛二。2月14日に発売されたインタビュー&フォトブック『E』では、赤楚にとって激動となった2022年9月から2023年11月までを追い、作品ごとに変わる心境など本音に迫っている。多忙な日々を送る中で俳優として大きな収穫もあったという赤楚にインタビューし、密着を受けた約1年半、さらに過去にも遡り、自身の変化について話を聞いた。

  • 赤楚衛二

    赤楚衛二 撮影:加藤千雅

“変化の過程”をさらけだした同書について、赤楚は「僕のすべて」だと語っている。

「前向きで名言が出てくるような明るいものになるのではないかと思っていましたが、意外と深く暗いところまで描かれていて、形としてはいびつなものではあるかなという印象を受けました。お見せするのは恥ずかしいという気持ちもありつつ、頑張ってきたから見てもらいたいという気持ちが強いです」

同書では、赤楚の発案で企画された“同じスーツを着て撮り重ねる写真撮影”を5回実施。その時々でまったく違う風貌・表情を見せているが、自身も「数カ月ごとに全然違う顔だな」と感じたという。

「主に作品によって影響されるんだろうなと感じました。当時の心境、忙しさ、そして、体重の増減。パツパツになっている時もあれば痩せている時もあれば、目がちょっと血走っているような時もあるので、けっこう変化はあったかなと思います」

赤楚自身が最も驚いた表情は、無造作なヘアで、はだけたシャツから肉体美がのぞくワイルドなカットとのこと。

「マネージャーさん曰く“荒ぶり期”と。誰かに攻撃的になったり迷惑をかけることはないですが、脱いだ靴下が絡まっている時にバッとやるじゃないですか。それを僕は思い切りやっていたみたいで、荒ぶった感じだったみたいです(笑)」

  • 赤楚衛二インタビュー&フォトブック『E』 撮影:宮脇進 ワニブックス刊

「自分は自分でしかないんだ」と諦めた途端に心がフラットに

“荒ぶり期”なんて想像できないほどフラットで穏やかな印象の赤楚。この日のインタビューでは、登場時にダース・ベイダーの音楽を流して笑わせてくれるなど、茶目っ気もたっぷりだが、気持ちをフラットに保つために意識していることは? との質問に「諦めですね」と答えた。

「それは悪い意味ではなく、理想を持ちすぎると、理想の自分と現実の自分の差が生まれて落ち込んだり、これならできるだろうと思ってできなかった時に落ち込んだり、そういうことを繰り返し、自分は自分でしかないんだと諦めた途端にフラットになりました」

“諦め”を覚えたのはコロナ禍の緊急事態宣言時だったそうで、「それまでずっと自分が嫌いでしたが、『自分やることはやってきたよね。頑張ったよね』と褒めてあげたら、自分のことが嫌いじゃなくなりました」と振り返る。

さらに、「いつの間にもう1人の自分が自分を操っているような感覚になった」という変化も告白。

「赤楚衛二というものがキャラクターのように思えて、良いところも悪いところもそのまま、どこか他人事のように受け止めるように。傷つくような言葉を言われても、あなたの目にはこう映っているんだなと思うだけで、何を言われても傷つくこともなく冷静に受け止めています」

その達観の境地も、やはり“諦め”からたどり着いたものだという。

「嫌われたくないとか、負けたくないとか、勝ちたいとか、そういうものが自分を大きく見せたり、頑張ろうとするので。頑張らなかったら『だって頑張ってないんだもん』で済む。そこに気づけるか気づけないか。散々いろいろ失敗してきての答えですが、それぐらい追い込めたらそこに行き着くのではないかなと思います」