文章、特に新聞や出版物、公用文を読んでいると、漢字の「共に」とひらがなの「ともに」が混在していることに気付くのではないでしょうか。実はこれは、あるルールに沿って書き分けられているのです。
本記事では「共に」「ともに」の意味や違い、使い分け方を詳しく、わかりやすく解説。公用文でのルールや、さらに「倶に」「供に」の意味・使い方もまとめました。
「共に」と「ともに」の意味と違い、使い分け方とは
ここでは新聞や出版物などで、「共に」と「ともに」がどのように使い分けられているか解説します。普段の文章も以下のルールに従って「共に」と「ともに」を使い分けるようにすると、文章がより読みやすくなりますよ。
「一緒に」「同じ」という意味なら漢字で「共に」
「一緒に」や「同じ」という意味で使われている場合は、「共に」と漢字で表記するのが一般的です。それだけではわかりにくいかもしれませんから、以下の例文を用いて解説しましょう。
- この成果は同僚と共にやり遂げた結果です
- 彼は自他共に認める、臨床医学界の第一人者だ
最初の文章では同僚と「一緒に」仕事をしたことを、次の文章では自分も他者も「同じく」認めているということを表しています。よってこれらは漢字の「共」で表記するのが一般的です。
「同時に」という意味ならひらがなで「ともに」
「同時に」という意味で使われている場合は、「ともに」とひらがなで表記します。すなわち、何か2つ以上の出来事が同時に起こっている場合に「ともに」がよく使われます。この場合についても実際に例文を見てみましょう。
- 列車の到着とともに、ホームに団体客がなだれ込んできた
- 遅い春の訪れとともに彼は帰国した
これらの文章では何かの出来事と「同時に」他の出来事が起こっています。そのため、ひらがなで「ともに」と表記します。
公用文での表記は?
2022年(令和4年)に文化審議会国語分科会が作成した資料「公用文作成の考え方」では以下のように記述されています。
例)共→とも(「…するとともに」等。ただし「彼と共に…」などは漢字で書く。)
例の中で挙げられている「彼と共に」は「彼と一緒に」という意味です。「…するとともに」は、「…すると同時に」と言い換えることができます。つまり「共に(ともに)」は公用文でも「一緒に」といった意味では漢字で、「同時に」という意味ではひらがなで書くと考えていいでしょう。
「共に」と「ともに」の使い方・例文
言葉は用法を知るだけでなく実際に使えるようになることが重要です。その助けとなるように、ここでは「共に」と「ともに」の例文をご紹介しましょう。ぜひ実際に読んでみて、どのように使い分けられているかの感覚をつかんでください。
漢字で「共に」と書く場合の例文
漢字で「共に」と書くのは、「共に」が「一緒に」や「同じ」「同様に」という意味で使われている場合です。それぞれの意味で使われている例文をご紹介しましょう。
以下は「一緒に」の意味で用いられている例文です。
- 彼と共に新しいプロジェクトに取り組んでいます
- 仕事がどれほど忙しくても、家族と共にいる時間は大切にしたい
- 今年は新年の幕開けを、家族と共に迎えられました
- チーム全員が協力し、目標に向かって共に進むことが大切です
- 紆余曲折あり、今は彼と行動を共にしている
以下は「同じ」「同様に」の意味で用いられている例文です。
- 彼らが食堂で食べているメニューは、共に期間限定で提供されています
- 去年と今年は共に暖冬のため、経営が厳しいスキー場が増えているようだ
- あの双子の兄弟は共にとても背が高い
- あの作者が今年になって出版した2冊の本は、共にベストセラーになっている
ひらがなで「ともに」と書く場合の例文
ひらがなで「ともに」と書くのは、以下のように「ともに」が「同時に」という意味で使われている場合です。
- 冬の訪れとともに、湖には多くの渡り鳥がやってきました
- 夕闇が深くなるとともに強い雨が降り始めた
- 私たちは、日の出とともに出発した
- 大きな爆発音とともに煙が上がるのが見えた
- 仕事で役立つように、大学卒業とともに自動車の免許も取得した
- 転職とともに新しい会社の近くへ引っ越しました
- プロジェクトの計画が定まるとともに、人事異動が発表されました
「共に」と「倶に」や「供に」との違い
さらにここでは、同じく「ともに」と読む言葉である「倶に」と「供に」についても解説します。
「共に」との違いや、それぞれの意味、さらに適切な使い分けを理解すると、実際に文章を書く際の参考になるでしょう。
「倶に」は「共に」とほぼ同じ意味だが常用外漢字
「倶に」も「ともに」と読む漢字です。辞書にも見出しに「共に」と「倶に」が併記されていることが多く、意味も基本的に同じであることがわかります。しかし、実際には「倶に」を出版物などで目にすることはあまりありません。
これは「倶に」が常用漢字ではないので、新聞や出版物、公用文で通常は使用しないためです。よって「ともに」を漢字で表記するときには、一般的に「共に」が用いられます。
普段の文章で「倶に」を使っても読みにくく、文章の意味がわかりにくくなるだけでメリットはありません。文学的な表現をしたいときや「倶に」が記された文書を引用するときなどの特別なケースを除いて、「ともに」を漢字で表記する場合は「共に」を使うようにしましょう。
「供」は従者のことなどを表す
「共」と間違いやすい漢字で「供」があります。これらは見た目は似ていますが、意味は全く違います。
「共」は一緒であることや同じことなどを表す言葉ですが、「供」は主人に仕える従者や、差し出す、申し立てるといったことを指す言葉です。「御供(おとも)」という表現もよく使われますね。
パソコンやスマホで文字を入力していると、変換を間違って「共に」とすべきところを「供に」にしてしまうことがあります。「従者に」など全く異なる意味になってしまうので、変換ミスには気を付けましょう。
意味を理解して「共に」と「ともに」を使い分けよう
「共に」と「ともに」は日常的によく目にする表現であり、新聞や公文書などでは意味によって使い分けられています。この記事では、それぞれの使い分け方を詳しく解説しました。
「共に」と「ともに」の表記は細かな差ですが、正確に使い分けると文章がより明確でわかりやすくなります。ぜひ「共に」と「ともに」の適切な使い分けを習得し、より洗練された文章を目指してください。そのときにこの記事がその一助となれば幸いです。