「学校での英語教育が変わっていく……」とよく耳にしますが、何が変わっていっているのでしょうか?

小中学校での英語教育が変化しているということを多くの方は耳にされると思います。しかし、実際には何がどのように変わってきているのかをご存じでしょうか? 今回の記事では、今の小中学校で行われている「新しい」英語教育についてお話しします。

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■小中学校の教育内容はどう決められる?

学校の教育内容や教科書などは、基本的には文部科学省が定める「学習指導要領」というものに基づいて決められます。この「学習指導要領」というものは、およそ10年おきに改訂され、現行のものは、小学校では2020年から、中学校では2021年から導入されています。

例えば、数年前に「小学校でプログラミング教育がはじまる」といったようなことが話題になりました。これも「学習指導要領」によって定められたことです。

■小中学校別の具体的な変化とは?

ここでは、以前の英語教育と比べて、どのような変化が起きているのかを小中学校別にみていきます。

・小学校では…

最大の変化は、英語教育の3・4年生への引き下げと、5・6年生への教科化でしょう。以前までは、5・6年生に対して「外国語活動」という授業が行われていました。これが3・4年生にも導入されるということです。

さらにより一層インパクトのある決定が、5・6年生への「外国語活動」から「教科」への移行なのです。この違いは分かりにくいですが、児童や教員にとってはとても大きな違いがあります。以前からも小学校5・6年生に対しては、英単語を使ってかるたのようなゲームをしたり、英語で簡単なあいさつをしたり、すでに英語の授業がおこなわれていました。

しかし、5・6年生にとって、以前までは「外国語活動」であったため成績はつきませんでした。また、学校側も、授業内容や使用教材などは自由に決めることができました。しかし、「教科」になることによって、国語や算数と同じように学習内容や使用教材(教科書やワークブック)が指定され、文部科学省の方針通りに教えなければならなくなったのです。

さらに、生徒一人一人に「成績」をつけることもします。また、習得する単語の数も600~700語と定められ、今までは中学入学後に学んでいたような文法も指導されるように。

これらの変化は小学校の教育現場に非常に大きな影響を与えています。まず、小学校の先生の中には、今まで英語の授業すら行ったことがない方も(中には、英語が苦手だから小学校の先生を選ばれた方がいる話も耳にします)。このような現状を改善するために、市町村によっては外国語助手などを導入したり、先生向けの研修会を充実させたりするなどの対策を行っているようです。

・中学校では…

今まで中学で行われていた英語教育の一部が小学校で指導されるようになり、高校の内容の一部が中学で扱われるようになりました。

しかも「仮定法」や「原型不定詞」などといった、高校生でも理解するのに苦労していた文法事項が中学で指導されています。このため、中学校教員の中にも、これまで教えていない分野を教えることに対して不安を感じているケースも耳にします。

習得を目指す単語数も以前の1200語から1600~1800語と1.5倍に増え、小学校で習得したものと合わせて、およそ2500語を中学時に習得することが求められます。

授業の行われ方も、かつてから日本の英語教育の課題とされてきた、英語を用いたコミュニケーション能力不足を改善するため、「英語の授業は英語で行われる」ということが原則になっています。英語をコミュニケーションのツールとして用い、自分の考えや気持ちなどを伝えられることを目指した教育が重視されているのです。

■今後の課題とは?

英語教育の早期化は、メリットもデメリットもあります。

最大のメリットは、子どもたちがより早い段階で英語に接することでしょう。単に英語学習を早く始めるというだけでなく、より低年齢で英語に触れることで、英語学習そのものというよりも、より海外の文化や歴史に興味を持つようになるでしょう。

一方、デメリットとしては、英語教育の早期化により、高校や大学に進学したときの生徒の英語力に大きな差がついてしまうこと。教師のスキルや使用教材の質などが一様でない場合、その差がどんどん広がっていく懸念もあるでしょう。