西島と芦田に加え、宮沢氷魚、新木優子、當真あみ、佐藤緋美、久間田琳加、大西利空、石田ゆり子、淵上泰史、津田寛治、満島真之介、玉山鉄二、西田敏行らが出演。

西島は「純粋な人たちが集まっているので、現場が常に清廉な空気が流れている」と言い、「それがきっと僕の役を作る上でも大きく作用していて、音楽に対して愛情と喜びを感じる人たちと共鳴することで本人も喜んだり傷を癒やされたりするということが当たり前のように感じる。そういう空気が現場に流れていて、撮影に入る前に考えていた役とは全く違う無垢な役になっています」と語る。

オーケストラのメンバーを演じるキャストたちは昨年9月頃からそれぞれの楽器を練習している。

「手を抜こうと思えばいくらでも抜けるはずなんですけど誰も手を抜かない。みんな真剣に、しかも楽しんで練習しているので、楽しいですね。役同士で共鳴するものと、楽器を本気でみんなが練習して音を出すという感動が一緒にあるので、それがこのドラマの特別な力になっているんじゃないかなと感じます」

娘役の芦田のことも「若いですけど、女優としても人間としても素晴らしい方」と絶賛する。

「柔らかくて温かい真っすぐな人ですが、強いからこそ真っすぐで柔らかくいられるんだなと改めて感じています。それはドラマだけではなくバラエティでご一緒したときも、待ち時間も感じます。時間的に大変なときや寒かったりいろんなことがありますが、つらそうな様子を1ミリも見せないので、本当にすごいなと。僕なんかすぐ『寒い』と言って、『寒がりマエストロ』ってあだ名をつけられているんですけど(笑)」

さらに、「集中する瞬発力がすごい。きっとそうだろうなと思っていましたが、改めて感じています。一瞬で役に入り込むという、それは独特な感性、才能だと思います」と称賛。一方で、完璧に見えて抜けているところもあると明かす。

「しっかりされているんですけど、意外と抜けているところもあって、現場でこけたりする場面も。かわいいからそのままポンコツなところも出してほしいですし、これからもそこを掘っていきたいと思っています(笑)」。

親子関係の揺らぎを「丁寧に演じていきたい」」

本作では、俊平と響がどう変化していくのかという親子の物語が大きな見どころとなるが、西島はその変化を大事に演じていきたいと語る。

「親子というのは不思議なものですよね。皆さん誰もが一言では言えない複雑な関係や感情を持っていると思います。たとえ怒っていて、うまくコミュニケーションがとれないというのがずっと続いていても、その中でも微妙に関係が変化していって、通じ合った、またダメになったという揺らぎを丁寧に演じていきたいなと思っています」

そして、「震災やコロナなど困難なことがあって、そのあとにどうやって立ち直っていくかというときに、娯楽や音楽、物語などが大きな力を与えてくれるということをとても実感しています。生き延びるのが困難な瞬間には全く必要ないですが、もう1回立ち上がらなきゃいけないときに娯楽やアートと言われるものが大きな力を与えてくれると僕は感じています」とエンターテインメントが持つ力に言及。

「このドラマのキャラクターたちは魅力的で個性的で、でもみんな生きている僕たちと同じように挫折や何かを抱えていて、音楽を通して乗り越えていく。物語を見ている皆さんと共感しながら一緒に物語を見ていきたいなと、一緒に付き合っていただきたいなと思っています」と語った。

■西島秀俊
1971年3月29日、東京都出身。1994年に『居酒屋ゆうれい』で映画初出演。以降、多数の映画やドラマに出演。近年では『散り椿』(2018)で日本アカデミー賞優秀助演男優賞、『ドライブ・マイ・カー』(2021)では、全米批評家協会賞でアジアの俳優で初の主演男優賞、そして日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した。

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