第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は7回戦が進行中。1月11日(木)には渡辺明九段―菅井竜也八段戦をはじめとする計3局が各地の対局場で行われました。対局の結果、四間飛車対居飛車穴熊の熱戦を105手で制した渡辺九段が4勝目を挙げました。

挑戦権争いの行方

5勝1敗の菅井八段は6戦無敗の豊島将之九段を追うため負けられない戦い。栃木県大田原市で行われた王将戦第1局の熱戦からわずか3日、後手番で迎えた本局での作戦はノーマル四間飛車でした。先手の居飛車穴熊を見た菅井八段は熟慮のすえ美濃囲いを選びます。

角交換を果たした菅井八段は先手陣のバラバラな金銀に注目して戦端を開きます。3筋に馬を作ったのは確実なポイントに思われましたが、本局ではここからの渡辺九段の対応が秀逸でした。素朴に見える飛車先の歩交換がいつでも十字飛車の含みを用意しています。

居飛車穴熊の快勝譜

素直に応じては不満と菅井八段もひねった受けを見せますが、渡辺九段の攻め手は止まりません。双方の囲い近く、狭いところに打った遠見の角が細い攻めをつなぐ好手。手順に6筋に回った飛車との協力で一気に美濃攻略が見えてきました。

終局時刻は19時55分、最後は攻防ともに見込みなしと認めた菅井八段が投了。投了図で先手の穴熊には寄りつきがなく、後手の美濃囲いは単純な数の攻めが受からない形でした。これで勝った渡辺九段は4勝3敗に。敗れた菅井八段は5勝2敗と一歩後退です。

  • 本局の勝利で残留を決めた渡辺九段は次戦で中村太地八段と対戦(写真は第80期名人戦七番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

    本局の勝利で残留を決めた渡辺九段は次戦で中村太地八段と対戦(写真は第80期名人戦七番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)