ホンダ、CESで新型EV「0シリーズ」を初公開。43年ぶりにエンブレムを一新

ホンダは2024年1月10日、アメリカ・ネバダ州ラスベガス市で開催されている世界最大のエレクトロニクスショー「CES 2024」において、新たな電気自動車(EV)シリーズ「ホンダ0(ゼロ)シリーズ」のコンセプトモデル2車種を世界初公開した。また、43年ぶりに刷新した新エンブレムの採用もトピックである。

【画像】ホンダはEVでも低全高を目指す

 

ホンダ0シリーズは、2026年から北米市場を皮切りに日本を含むグローバルで発売するEVシリーズ。ホンダは2050年に全製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルを目指しており、その実現に向けて2040年までにEVとFCEV(燃料電池自動車)の販売比率をグローバルで100%とする目標を掲げて、電動化に取り組んでいる。0シリーズはそんな大きく変革するホンダを象徴するモデルである。

 

■車名の「0」には3つの意味がある

0には大きく3つの意味が込められている。

①M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想や操る喜び、自由な移動の喜びといったホンダの原点に立ち返り、次世代のホンダの新たなる起点・出発点をつくる。

②グローバルブランドスローガン「The Power of Dreams - How we move you.」のもと、つねに「夢」を動機に、ゼロからの独創的な発想で新価値創造に取り組むことで、ユーザーに新たな起点となる体験を提供。人を動かし、心を動かす。

③企業活動を含めたライフサイクルでの「環境負荷ゼロ」、ホンダの二輪・四輪が関与する「交通事故死者ゼロ」の達成に向けた決意を示す。

このように、新たなEVシリーズの開発にあたって、ホンダのクルマづくりの原点に立ち返り、ゼロからまったく新しいEVを創造していくという決意が込められているのである。

 

ホンダ0シリーズは、「これからの時代にホンダが創りたいEVとは何か」がテーマ。従来のEVは長い航続距離を確保するための大きくて重いバッテリー+大型の車体やプラットフォームを採用するなど、「大きく重い」のが一般的だったが、ホンダは新たに「Thin(薄い),Light(軽い), and Wise(賢い)」というアプローチで開発を進めている。

 

●Thin:フロア高を抑えた薄いEV専用プラットフォームによって、低全高のスタイルなどデザインの可能性を広げ、高い空力性能を実現。

●Light:独自技術でこれまでのEVの定説を覆すような軽快な走りと電費性能を実現。

●Wise:創立以来75年のものづくりで培った知見を注ぎ込んだAD(自動運転システム)/ADAS(先進運転支援システム)やIoT(あらゆるモノをインターネットやネットワークに接続する技術)・コネクテッドなどによるホンダならではのソフトウェア デファインド モビリティ(まずソフトウェアを定義したうえでハードウェアを決めていくクルマづくり)を実現。

 

■0シリーズは5つのコアバリューを実現

 

こうした開発アプローチのもと、専用開発したアーキテクチャーをもとに次の5つのコアバリューを提供するという。

 

●共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン

デザインコンセプトは「The Art of Resonance」。環境・社会・ユーザーとの共鳴をテーマに、見る者の共鳴を呼び起こし、暮らしの可能性を広げるサステナブルなモビリティを提供。

●安全・安心のAD(自動運転システム)/ADAS(先進運転支援システム)

2021年にホンダは自動運転レベル3:条件付自動運転車(限定領域)に適合したレジェンドを発売。この技術を活用した先進運転支援システムをはじめ、2020年代後半には自動運転システムを採用し、より多くのユーザーが手の届きやすい自動運転車として展開する。これによって、高速道路における自動運転領域を拡大するとともに、現在、高速道路のみで使用可能なハンズオフ機能を一般道で一部利用可能とすることを目指して開発を進めている。

●IoT(モノのインターネット)・コネクテッドによる新たな空間価値

ホンダ独自のビークルOSを軸とするIoT・コネクテッド技術により、運転して楽しい、使って楽しい、つながって楽しいという価値の提供を目指す。使えば使うほどクルマとユーザーが親密になり、生活のさまざまな場面でつながる楽しさを提供する。

●人車一体の操る喜び

ホンダ独自の電動化技術とダイナミクス技術により、軽快で、心も身体もクルマと一体になる高揚感が得られる操る喜びの提供を目指す。低全高のスタイルにモータースポーツで鍛え上げた空力技術を投入することで、空力性能・ダイナミクス性能・デザインを高次元で融合。

●高い電費性能

ハイブリッド車の開発などで培った電動化技術をベースに、エネルギー効率を突き詰め、高い電費性能を実現する。電気変換効率やパッケージングに優れたe-Axle(イーアクスル=モーター、インバーター、ギヤボックスによって電力から動力へエネルギー変換を担うシステム)や軽量で高密度なバッテリーパック、高い空力性能のよって、バッテリー搭載量を最小限にしながら300マイル(約482km)以上の航続距離を目指す。また、15%〜80%の急速充電時間を10分〜15分程度に短縮し、使用開始から10年後のバッテリー劣化率は10%以下を目標とする。

 

■ホンダ0シリーズの2つのコンセプトモデル

 

【サルーン】

ホンダ0シリーズのフラッグシップコンセプトモデル。EV専用アーキテクチャーによってデザインの自由度が増し、EV時代にM・M思想を昇華させた点が特徴。低全高でスポーティなスタイルのなかに、外観からは想像できないほどの広い室内空間を両立。室内は爽快な視界と直感的な操作が可能なインターフェースによって楽しいドライビング体験をもたらすという。

 

【スペースハブ】

人々の暮らしの拡張を提供することをテーマに開発したモビリティ。広々とした空間と見晴らしのよい視界を実現。車名のSPACE-HUBとは、ユーザーの“やりたい”に即座に応えるフレキシブルな空間を備えるこのクルマが、人と人、人と社会をつなぐハブとなり共鳴を生み出すという思いを込めている。

 

■43年ぶりにHマークが刷新

 

今回のホンダ0シリーズのコンセプトモデルの公開とともに、新Hマークがお披露目された。新Hマークは、次世代のEVを新開発するにあたり、ホンダ四輪車の象徴であるHマーク(1981年改定)を新たにデザインすることで変革への思いを示し、原点を超え、挑戦と進化を絶えず追求するホンダの企業姿勢を表現している。また、両手を広げたようなデザインは、モビリティの可能性を広げ、ユーザーに向き合う姿勢を表現しているという。この新たなHマークはホンダ0シリーズを含むホンダの次世代EVに採用される。ちなみに、現在のHマークは内燃機関を積んだモデルに継続採用され、ホンダの目標では2040年にすべてのモデルがEVに切り替わるため、その時点で消滅する見通しである。

〈文=ドライバーWeb編集部〉