ヒーターの暖かさと布団のぬくもりが心地良い「こたつ」。冬の室内でのんびりと過ごすには最適ですが、「こたつで寝てしまい風邪をひいた」という失敗を経験した人は多いはず。
そこでこの記事では、こたつで風邪をひいてしまう原因や、こたつで快適に過ごすための正しい使い方を内科医の正木初美先生にうかがいました。
■こたつで寝て口が乾くのは「軽い脱水の初期症状」
━━まず、こたつが原因で風邪をひいてしまうのは、どのような場合なのか教えてください。
そもそも、こたつを使う冬は、風邪が流行る時期です。冬に風邪が流行る主な要因は、「気温の低下」と「湿度の低下」の2つ。寒くなると風邪をひきやすいですし、湿度が低下すると風邪のウイルスが活動しやすくなります。冬というのはこうした環境になっているんですね。
そのうえで、こたつに入って寝てしまうと、起きた時にすごく口の中が渇いていると思います。これは、「軽い脱水の初期症状」なんです。こたつに限らず、電気毛布や電気カーペットをずっと使っていると皮膚の乾燥や口の渇きがみられます。
また、こたつをずっと使っていると暑くなって汗をかいたり、汗はかかなくても目に見えない水分が体から蒸発したりして、夏のようなひどい脱水ではないにせよ、体が渇いた状態になります。
さらに、こたつというのは下半身はこたつの中に入っていて暖かいけれど、こたつに入っていない上半身はこたつの中よりも低い気温にさらされていて喉も冷たくなります。
これらの状態は、先ほど言った風邪をひきやすい冬の環境と同じなんですね。つまり、「湿度の低下(体の渇き)」や「気温の低下(上半身の冷え)」により、風邪をひきやすくなってしまうのです。
■「平熱より1℃以上高い」は不調のサイン
━━では、こたつで風邪をひいてしまうと、どのような不調のサイン、症状のサインが現れるのでしょうか。
1つは、先ほどもあったように、口の中が乾きカラカラする脱水の症状ですね。また、顔などもカサカサと突っ張るような乾燥の症状が出ることもあります。あとは、暑くて汗ばんだ感じ、起きた時にけだるいような倦怠感が出る人もいるでしょう。
それと、体温にも注意が必要です。平熱というのは人それぞれで、「平熱が35℃台」という方もいらっしゃいます。「37.5℃以上が発熱」というのは教科書通りかもしれませんが、平熱が低い方ですと、熱が1℃上がって36℃台になっただけでもしんどいと思います。ですので、「平熱より1℃以上高い場合は不調のサイン」と捉えることが大切です。
そうした不調に気づくためにも、普段から自分の平熱を知っておくことはとても重要です。平熱というのは、季節によっても多少変わるんですよ。今年の夏は特に暑かったですが、真夏の時期に外に出ていると体温が上がりますし、寒い環境の中にいると体温は下がりやすいです。
━━こたつで寝てしまうと風邪をひきやすいということですが、他にはどのようなリスクがありますか。
まず1つは、先ほどもあった脱水症ですね。これが脳梗塞や心筋梗塞につながることもあります。また、こたつで寝ると、布団と同じようには自由に体を動かせません。そのため、体がねじれたまま寝てしまい、硬い床の上ですので、肩や腰、首を痛める場合もあるでしょう。
それと、こたつの中の温度にもよりますが、特に高齢者の方は体温調節がうまくできないので、同じところにずっといるとヒーターの熱でやけどを負いやすい、というリスクもあります。ですので、ヒーターの近くに足や体を当てたまま寝てしまわないというのが大切です。
■こたつでのうたた寝対策にはタイマーがおすすめ
━━では、風邪をひかずにこたつで過ごすためのポイントを教えてください。
やはり、こたつで寝てしまうと、風邪や先ほど言ったようなリスクにつながります。でも、こたつは暖かいので、知らないうちにうたた寝をしてしまうことも多いですよね。なので、こたつでうたた寝してしまうという人は、こたつに入ったらタイマーをセットして、決まった時間になったら音が鳴るような「寝ないための対策」をしておくといいでしょう。
やはりこたつは寝るものではないので、眠くなったらこたつから出て布団で寝るのが一番です。
また、こたつに入る時でも軽く羽織れるものがあったほうがいいですね。布団から出ている上半身は冷えやすいので、寒いと感じたらパッと羽織れるものをそばに置いておくと便利です。
それと、こたつの温度はあまり高くしすぎないようにするのもポイントです。最初は気持ち良いかもしれませんが、だんだん暑くなって布団から体が出てしまうことがありますから。また、あらかじめ水分を補給しておき、テーブルのところにも水分を置いておくことが大切です。汗をかいてきたら拭けるよう、タオルなども準備しておきたいですね。
━━こたつで風邪をひかないためには、加湿器やエアコンなども併用したほうがいいのでしょうか。
そうですね、やはり乾燥対策として加湿器は使った方がいいでしょう。また、エアコンをつけていないとこたつ内部と部屋の温度差がひらいてしまいます。最初はエアコンをつけていても、こたつの中に入っていると暑くなってきてエアコンを切ってしまう人もいると思うんですね。
でも、そのまま寝てしまって起きると寒く感じます。一番良い使い方は、こたつ内部とエアコンによる室温の差を大きくしないこと。エアコンで部屋全体を暖めながら、じっと過ごす時に下半身を暖めるという意識でこたつを使うのが良いでしょう。
■風邪のリスクに気を付けながらこたつで暖を取ろう
こたつに入って過ごす機会が増える年末年始。こたつを囲みながらの家族団らんは良いものですが、風邪や体調不良を引き起こすリスクには充分注意したいですね。こたつに入る時は、そのまま寝てしまわないように気を付け、水分や羽織るものを準備して快適に暖を取りましょう。