2023年12月1日に発売された、『将棋世界2024年1月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)の記事内容からいくつかご紹介したいと思います。

藤井聡太八冠達成記念トークショーが開催

藤井八冠が誕生して一月あまり。東京大手町の日経ビルで行われた、藤井八冠のトークショーは多数の参加者を集め、聞き手に山口恵梨子女流二段をの軽妙な突っ込みと相まって大きな笑いに包まれました。その一場面をご紹介します。

(以下抜粋)
山口 藤井王座は脳内将棋盤がなく、符号で考えているとのことでしたが(※過去に脳内将棋盤はないと答えたことがある)、将棋盤がなくてどのように考えているのですか?
藤井 ……すみません将棋盤はあります。
(会場大爆笑)
藤井 目の前にある盤に、局面、局面の駒の配置を投影するイメージのときもありますし、常に頭の中にある盤で駒が動いているという感じではないのかなと。
山口 脳内将棋盤は人によって違いますよね。羽生先生は4分割とおっしゃっていましたけど、どう思います?
藤井 4分割? どういうことですか?
山口 誰もわからないんですよ、棋士全員。そもそも4分割できない(笑)。でも若いときからいまも4分割と答えられています。
藤井 そうなんですか。参考になります。
山口 佐藤康光先生は、脳内将棋盤の中で、駒が高速で動いて、20手先くらいの局面でパッと切り替わるらしいんです。
藤井 そうですね。頭の中の盤で考えるときは1手ずつ動いているということはなくて、何手かまとめて進んだ先の局面を頭に浮かべて、ということが多いと思います。
山口 渡辺明九段は藤井王座のすごさを異次元の計算力とおっしゃっていました。自信を持っている長所と課題を感じている点はありますか?
藤井 特に何かに自信を持っているわけではないですけど、ここは自分の強みだと思って無理矢理それを生かす展開に、という意識が出てしまうのもよくないのかなと。あまり長所というのは意識しません。課題のほうは序中盤の形勢判断ということになるのかなと思います。
(中略)
山口 無人島に持っていくとしたら、3つ何を選びますか。
藤井 何日くらいいるのかに……。
(会場笑い)
山口 一生です。帰ってこられません。
藤井 一生だと生活できないと困るから必要なものを持っていかざるをえないですけど……。1週間だったら詰将棋、チェスプロブレムの作品集で時間を潰すかなと。
山口 人生でやりたいことを3つ挙げるなら何ですか?
藤井 やりたいことですか……。やりたくないことはたくさんあります。
(会場笑い)
山口 ではやりたくないことは?
藤井 バンジージャンプはやりたくない。
山口 めちゃくちゃ楽しいですよ、先生! 空を飛びたくなったらバンジージャンプしたほうがいいですよ。
藤井 そうなんですかあ(小声)
山口 ほかにはありますか?
藤井 同じ系統ですけど、ジェットコースターも乗りたくないです。
山口 そういうのが、苦手なんですね。
藤井 ほとんど乗ったことがないんですけど、地元の東山公園にちょっとした遊園地があって、そこのジェットコースターしか乗ったことがないので、それより怖いのは無理かなと(笑)。
山口 新たな聖地ができましたね。
(編集部編「藤井聡太王座&八冠トークショー&自戦解説会」より)

衝撃のストレート決着となった竜王戦を広瀬章人九段が解説

棋界最高峰の第36期竜王戦は藤井竜王の4連勝決着という衝撃的な結果となりました。最先端の研究を武器に高勝率を誇る伊藤匠七でしたが、藤井の牙城は崩せませんでした。ジョーク交じりに口にした「やばい」という広瀬章人九段の言葉には重みが感じられます。

(以下抜粋)
4連勝で藤井竜王が防衛に成功、3連覇となりました。一局を振り返ると伊藤七段の研究が功を奏して、これ以上ない状況で2日目を迎えました。正直そのまま押しきるのかと思ったのですが、やっぱり外野はAIの正解を知っているので気楽ですし、対局者は違います。▲5九桂と受けられて、予想以上にどうにもならなかったんでしょうね。▲4七角だと思い込んでいてそれが結果的に致命傷になったようです。
感想戦を見ていると藤井竜王の読みが深くて速くて正確で、研究云々の問題ではない。こういう人を番勝負で負かすのは大変だと改めて思いました。伊藤七段もついていくので精いっぱいだったのではないでしょうか。
番勝負前に読売新聞社の記者に予想を聞かれて、「いい勝負とは思うけど、伊藤七段が真っ向からぶつかったらストレート負けもあるかもしれません」と話しましたが、その通りになってしまいました。自分も対藤井戦で番勝負を指したことがありますが、真っ向勝負を挑むと本局のような目に遭うだろうと感づいていました。今後、伊藤七段は藤井竜王に挑戦するチャンスは山ほどあると思いますが、真っ向勝負で勝てる日がくるのかどうか。それを押しつけられましたよね。
改めて藤井竜王について思ったことは、この人やばいな、と(笑)。あの一人感想戦についていける人が藤井竜王に勝てるんでしょう。そういう人がいるのかもわかりませんが。ええ、私が止めることはないと思います。去年の七番勝負で2勝したのが全盛期でしたね(笑)。
(広瀬章人九段解説、大川慎太郎「衝撃のストレート決着」より)

若手棋士のインタビューや現役棋士ポケット名鑑も必見

1月号はほかにも「ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ 全局ファイル【前半戦】」、若手棋戦W自戦記。石井健太郎六段、水町みゆ女流初段のインタビュー、戦術特集「優位な局面の逃げきり術」。付録は保存版!「現役棋士ポケット名鑑 2023年秋版(下巻・ち~わ)」など、価値ある企画が目白押しです。

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『将棋世界2024年1月号』
発売日:2023年12月1日
特別定価:920円(本体価格836円+税10%)
判型:A5判244ページ
発行:日本将棋連盟