トヨタが昨年のリベンジ成功で1-2-3フィニッシュ! 勝田貴元は地元愛知でステージベスト10本をマーク【WRC ラリー・ジャパン2023】

WRC 2023 第13戦

第2回 フォーラム8 ラリー・ジャパン 2023

日時:11月16日~19日

サーフェイス:ターマック

SS総走行距離:304.12km(SS数22)

サービスパーク:豊田市

2023年WRC最終戦「フォーラム8 ラリー・ジャパン2023」が11月19日に競技最終日のデイ4を終えて、トヨタGAZOOレーシング(TGR)のエルフィン・エヴァンス/スコット・マーティン組がデイ2からのポジションを守り初優勝。続く総合2位にセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組、同じく3位にカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が入り、TGR勢が1-2-3フィニッシュで有終の美を飾った。

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今年も愛知・岐阜の両県にまたがるステージ構成で行われたラリー・ジャパン。本格的なステージが始まったデイ2から最終日のデイ4まで、天気と路面コンディションが一定ではない難しい状況が続いた。特に豊田市と隣接する設楽町でSSが行われたデイ2では、悪天候による劣悪なコンディションのなかトラブルが続出する。

デイ2オープニングのSS2では、ワークス3チームそれぞれにアクシデントが起きた。TGR勢では勝田貴元/アーロン・ジョンストン組がスピンを喫し、右フロントを大破するダメージを負ってしまう。そして、その後同じコーナーでヒョンデのダニ・ソルド/カンディド・カレーラ組と、Mスポーツフォードのアドリアン・フォルモー/アレクサンドレ・コリア組もコースアウト。勝田のヤリスはどうにかステージフィニッシュまでたどり着けたが、ソルドとフォルモーは復帰できずデイリタイアとなった。

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続くSS4では、雨足が強すぎたためステージキャンセルする事態に。その後、午後に天気は好転するものの、路面はウエットとドライが混ざり合う難しい状況に。そんななかでもTGR勢は落ち着いた走りを見せ、見事トップ3を独占する。首位のエヴァンスはSS2、3で連続ベストをマーク。午前だけで後続と26.0秒の差を早くも築き、デイ2終了時には50秒差までリードを広げた。

昨年1-2フィニッシュのヒョンデ勢は、ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組が、午後の1本目SS5でコースアウトしリタイア。ダニ・ソルド組に続く犠牲者となってしまい、唯一残ったエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組がデイ2終了時点で総合7位に着けている。Mスポーツフォードはオィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ組が同じく8位でデイ2を終えた。

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■トヨタが昨年のリベンジ! 気温がぐっと下がり曇天模様のなかスタートしたデイ3では、時折降雨も見られ、路面はデイ2同様に安定しない状況。濡れている上に落ち葉やコケが散在している状況では、「トリッキー」や「スリッパリー」という単語がドライバーの口から続出するようなことも当たり前に思える。

そんな困難な状況が続くなか、TGRの3クルーは落ち着いたドライビングでトップ3を堅守。ポジションは変わらず最終日デイ4を迎える。首位エヴァンスと2位オジエとの差は、1分15.0秒。オジエと3位ロバンペラとの差は25.6秒となった。

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デイ4は岐阜県でのステージが中心となり、朝の気温低下から降雪も予報されていた。しかし実際は、降雪はあったものの積もるまでには至らず。路面グリップは相変わらず少ないようで、ドライバーからは「グリップがない」とのコメントが多数聞かれた。

ステージ構成が低中速コーナー中心、そしてグリップレベルも低いとなると、スピードレンジが高くなりにくいためリスクも減る。選手権の行方もすでに決定しているため、ドライバー勢は無理をしない。ある程度タイム差もあったため上位3クルーはポジションキープ。そのまま1-2-3フィニッシュでラリーを終えた。トヨタは昨年達成できなかった地元ラリーでの勝利を、完璧な形でリベンジすることに成功。凱旋ラリーを見事な勝利で飾った。

■日本のタカが魅せた! 最速×10

地元愛知県出身ということもあり、開催地の愛知での知名度は抜群。現地では、勝田の応援目当てで訪れるファンも多く見られた。それだけに、SS2でのアクシデントは不運だったが、その後の走りは驚くべきタイムが連発した。

まずはSS2でのクラッシュ後、どうやってサービスまで戻ったのかを簡単に振り返ろう。ラジエーターや右フロントサスの一部が損傷したためエンジン出力はほぼ使えず、EVモードでステージフィニッシュまでなんとかたどり着くことに成功。その後ラジエーターの冷却水を補給し走り続けるが、SS3ではTCへの7分遅着により1分10秒のペナルティを受けてしまう。続くSS4が悪天候によりキャンセルとなったことが幸いし、サービスへ直行できた。途中のリエゾンでは、農業用水の水も使って冷却水にあてたようだ。

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30分のサービスで、チームは見事ヤリスの修復に成功。午後からは午前のリピートとなる3本が始まったが、ここから渾身のアタックを開始する。なんと勝田はこの3本すべてを制したのだ。天候こそ好転していたが、路面はほとんどが午前のウエットのままという難しい状況。そんななかでも、ベストタイムを3連続でマークしたのである。

この日のラリー後に、ちょっとだけ勝田と話すことができた。苦笑いしながらの返答ではあったが、悔しさを滲ませながらどこかホッとした表情が見えたことが印象的だった。

勝田/ジョンストン組の快進撃は、翌日のデイ3も続く。朝のSS9、10で連続ベストをマーク。そして、午後にはSS13、14、15と3連続のベストタイムを並べた。まさに鬼神の如くの追い上げ。地の利を生かし、最速タイムを次々とマークする走りは、今まで見たことがないほどのインパクトだ。この結果だけ見てしまえば、SS2でのアクシデントがなければ、優勝していてもおかしくない。驚くほど、他を圧倒するスピードだ。

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最終日デイ4でも2本のベストタイムをマーク。1-2-3-4フィニッシュを目指して猛烈に追い上げたが、4位のラッピにはわずか20秒届かず。総合5位でフィニッシュした。このラリー全22ステージ中、奪ったステージウインは10本。勝田貴元ココにありの存在感を、世界中にアピールした瞬間でもあった。

最終戦で魅せてくれた、勝田の本気のアタック。来シーズン以降の活躍が楽しみになる、見事な走りだったといえるだろう

<写真=Redbull 文=青山朋弘>