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一定年齢以上の読者なら、「洋食」に対する憧れやちょっと上のイメージを持っているだろう。
小さい頃に親に連れて行ってもらったレストランでハンバーグやポークジンジャーを注文。
するとごはんは「ライス」の名でお茶碗ではなく皿に盛られて登場し、箸ではなくフォークで食べる。
そこにある非日常感が、当時は贅沢に思えたものだ。
ここまでは全国共通の思い出だと思うが、大阪で洋食の話をするとちょっと違和感があることが出てくる。
「お皿のライスに塩かけてね」と大阪マダムが言う。ライスに塩?何を言っているのか?
「薄っぺらいお皿にライスが出てきたら、塩かけますよね?」「かけますよね?」と
マダム同士はうなずき合っているのだが。取材陣はポカンとするばかり。
別の男性2人にも洋食屋さんの思い出を聞く。
「オムライスのスプーンに巻かれたナプキンを解くのがむっちゃ嬉しかった」
わかります、それはわかります。ところが「ライスがお皿に出てきて」とライスに話を振ると「なんやったら塩かけて」とまたまた言い出した。
別の女性に「洋食屋さんで出てくるお皿のライスに塩かけることありますか?」と質問したら、
「え?塩かけて食べへんの?」と逆に質問に驚かれた。
「どういうこと?おかしいな。白皿+米=塩」と決まりきったことのように言う。
ちなみに東京で聞いてみると「おかずに味がついてるのにわざわざごはんになぜ塩をかけるのかなあ」とストレートな疑問を提示。洋食屋さんで聞いても「それは身体に悪いと・・・」と心配する始末だ。
大阪に戻るとやはりみんな塩をかけると言う。
「親がやってたからかけたくなる」どうやら代々続く食文化らしい。「一回かけてみたら、世界が変わると思う」とまで言う。
大阪の老舗洋食店「スエヒロ」に行くと、
卓上にはソースなどと共に塩があり、湿気を防ぐ炒り米が混ざっていたりする。
観察していると、お客さんのテーブルに料理とライスが運ばれるたび、次々に皆さんライスに塩をかけている。
「暗示にかかってるみたいに、洋食に来たら塩を振る」のだそうだ。
年配のお父さんも、減塩など気にせずたっぷりかける。
「水飲んで、尿で出してしまえばいい」と気楽なことを言ってて大丈夫?
別の洋食屋さん「ボナンザ」でも観察すると、皆さん続々塩をかける。
「まず塩の場所を確認して、ライスが来るのを楽しみに待ってた」そこまでですか!
おかずの味が物足りない時に使うものでは?と聞くのだが「かけへんかけへん。そんなんお店の人になんか失礼やん」そうかなあ。
でもお店の人も、塩を卓上に置いてるのは「ごはん用」と断言。「料理にかける人はほとんどいない」そうです。
ではお茶碗に盛られたごはんにも塩をかけるのだろうか。
ところが、同じご飯を皿に乗せるとかける、お茶碗に盛るとかけないのだという。
「皿のはライス、お茶碗のはごはん。ごはんにかけたらアカン、ライスはOK」同じものですけど。
なぜ大阪ではライスに塩をかけるのか。武庫川女子大学の美食空間学教授、三宅正弘さんが言うには、
「ごはんに塩をかけるのは、洋食屋さんに行った家族の思い出。いい思い出の中で定着していったのでは。塩をかけることを語る大阪の人はみんな笑顔ですよね」確かにそうでした。
どうやら大阪だけでなく、関西一円の食文化らしいが、なぜライスに塩をかけるのか、どうして関西だけなのかはよくわからない。いや、関西だけでもないと言う人もいるようなので、これはもう少し調べてもらいたいね!