バイクの駐車取り締まり、全体に減る中で目立って増えた県が…なぜ?

2023年2月に、バイクの駐車取り締まりについて私は書いた。以下の記事だ。

歩道に駐車したバイク、駐車禁止の標識がないのになぜ違反? みんなやってるから…は大間違い!

その記事で、確認標章(黄色い駐禁ステッカー)の都道府県別の取り付け件数(2021年分)をご紹介し、こう書いた。

「2022年のデータは間もなくゲットできる。2021年と比べて『おおっ!』という点があったらまたご報告しよう」

間もなくデータをゲットした。「おおっ!」という点があった。なのに、例によって裁判傍聴に熱中してつい忘れ、こちらでのご報告がだいぶ遅れてしまった。申し訳ないです~。

■駐禁ステッカー、バイクがあまり減ってない?

さて、まずは確認標章の取り付け件数の、全車種の合計から見てみよう。左側は2021年、右側は2022年の件数だ。

全車種 91万2603件 → 84万4598件

7.5%ほど減った。これは驚くに当たらない。確認標章の登場は2006年7月。翌2007年の取り付けは296万7843件もあった。あれから15年、どんどん減り続けているのだ。

バイク(自二・原付)に対する取り付け件数は、2007年は52万1454件。その後、やはりどんどん減り続け、2021年と2022年はこうなった。

バイク 8万9282件 → 8万6462件

全車種の減少率が約7.5%なのに対し、バイクは約3.2%。バイクのほうが減り幅が小さい。バイクよりクルマの運転者のほうが、駐車監視員に対する警戒心が強く、すぐに戻ってくる傾向がある、のかもしれない。

■でも増えた県もある。なぜ?

「おおっ!」と感じるのは、全体に取り付けが減ったなかで、増えた県があることだ。増え幅が5割以上の県は以下だ。

愛知  1090件 → 1669件

宮城  656件 → 1168件

鹿児島  72件 →  129件

熊本   26件 →  67件

栃木   8件 →  41件

宮城と愛知の増え方が目立つ。たまたまではないはず。あるエリアについて、また、ある違反態様について、警察から駐車監視員へこんなお達しがあったんじゃないか。

「今までバイクは取らなくていいとお伝えしていましたが、来月から取りますんで、よろしく」

バイクに対する確認標章の取り付けの、都道府県別トップ10を挙げておこう。

1位 東京  2万4026件

2位 神奈川 1万8589件

3位 大阪  1万3135件

4位 兵庫    8456件

5位 埼玉    6339件

6位 京都    4435件

7位 広島    2693件

8位 愛知    1669件

9位 沖縄    1216件

10位 宮城    1168件

一方、青森、秋田、山形、山梨、石川、和歌山、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、香川、愛媛、高知の14県はゼロ。岩手、福島、富山、福井の4県は各1件。佐賀は2件。群馬と三重が各4件。茨城がようやく2桁で10件。大分が11件…。

たとえば山梨のライダーが東京へ行き、山梨でいつもそうしていたように、迷惑にならない場所に駐車、用事を終えて戻ったらバイクのハンドルに黄色い駐禁ステッカーが。「えっ、なんでだよ!」ということが起こりかねない。

駐車監視員は、放置車両(運転者が車両を離れて直ちに運転できない状態の違法駐車)を見つけたら直ちに、確認標章を取り付けるべく作業を開始する。それが仕事なのだ。迷惑かどうかを判断する権限はない。もしも見逃したら、

「駐車監視員が放置車両のそばを素通りした。あえて見逃した。賄賂をもらっているのか!」

などとがんがんクレームがくるおそれがある。迷惑性のない短時間の駐車で取り締まりを受け、ムカついて駐車監視員を恨んでいる運転者はたくさんいるようだ。素通りしたところを動画撮影し、ネットにあげるかも。大変だ。

交通ルールは交通安全のためにある。迷惑性も悪質性もない短時間の駐車は大目に見てもらえるだろう、という考えは、現実に照らせば甘いといわざるを得ない、残念ながら。

文=今井亮一

肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通事件以外の裁判傍聴にも熱中。交通違反マニア、開示請求マニア、裁判傍聴マニアを自称。