『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回は、2001年アウディTTクワトロに乗るエヴァン・クラインが、誕生25周年を迎えたアウディTTの魅力を再認識した話題をお届けする。
【画像】他の車に乗れば乗るほど、アウディTTの魅力を改めて知ることができる(写真3点)
今年お祝いすることがあるとしたら、初代アウディTTが誕生25周年を迎えたことだ。 フリーマン・トーマスよ、この素晴らしく生き生きとしたミニマルなデザインを生み出してくれて、本当にありがとう。形、機能、そして美しさ、どれをとっても申し分ない。少々ひいき目があるかもしれないけれど。
これを機に私は考えてみた。この数カ月に渡り、私は自動車の歴史とデザインの過去、現在、未来を体験してきた。『Octane』のマーク・ディクソンが今年の初めにロサンゼルスにやってきて2週間滞在した際、私たちは新型の電気自動車、KIA(起亜)EV6 GTを移動手段にし、アリゾナまでドライブした。その時、私たち2人は未来を垣間見た。見た目もよく、機能的だったが、実用巡行距離が220マイルしかなかったため、次の充電ポイント選びに多くの時間を費やすこととなった。
KIAと過ごすうちに、たとえ低速でもリアハッチを上げたままEV6を走行させるのは無理なことがわかった。車はすぐロックされ、動かなくなる。つまり、ホームセンターから木材を持ち帰るようなときに不便であるだけでなく、雑誌の写真撮影の定番である並走や前後の走行シーンの撮影もほぼ不可能に近い。
そのため、アリゾナへのドライブからLAに戻った後、『Octane』244号に掲載されたブルベイカー・ボックスのような特別な車を撮影する必要があるときは、KIAではなくアウディTTを使った。リアシートを倒せば、驚くほどたくさんの道具を収納できる。
ときには、もっとシンプルで輝かしき時代を思い返すこともある。最近、426-Hemiエンジンを搭載した、1966年プリムス・ロードランナーを撮影した。この巨大な鋼鉄のモンスターは、走行距離わずか2800マイルで、オリジナルかつ修復歴もなかった。工場出荷時のままと言っていい。重いドアはバタンと戦艦のように閉まるし、アイドリングの音は凄まじい。会話するのはほとんど不可能で、走行中の私たちはお互いに叫びあっていた。落ち着きの悪い足回り、効きの悪いドラムブレーキ、道路をふらつくヴィンテージなラジアルタイヤ。いやはや、なんとも恐ろしかった。こういったことも、1966年の車にとっては当たり前だったりする。
では、この3台の中で「最高」の車はどれだろう?日常的に一緒にいたいのは? 価値を維持できるのは? 希少過ぎて乗る気にならないのは?
私の答えはこうだ。電話が鳴って友達に会いに行くことになったとしよう。私は迷うことなく、「その車」の鍵をつかんでドアの外に出る。私が暮らすカリフォルニアの気温は30℃。私は、ターボチャージャー付き、そして四輪駆動のクワトロのエンジンを始動させ、エアコンをオンにする。そう、アウディTT誕生25周年のこの年、私はこの車がちょうどいいと思うのだ。
文:Evan Klein