物価高が続く今日この頃。「そろそろ投資でも始めようかな」と思っても、投資方法やリスクなど、初心者にはわからないことが多いものです。そこで本記事では、「お金を堅実に増やす投資法」について、お金のプロに詳しくお話を伺いました。

  • 初心者が「やってはいけない投資法」って? お金のプロに聞く"低リスクで儲ける"資産運用法

    Money&You取締役 高山一恵さん

今回、教えてくださったのは、Money&You取締役であり、FP(ファイナンシャルプランナー)でもある高山一恵さん。主に一般の方に向けて講演・執筆・相談業務のほか、YouTubeチャンネル『Money&YouTV』(@moneyandyoutv)やPODCAST番組『マネラジ。』にて、マネー知識を届けています。また、ご自身でも株やFX、不動産投資などさまざまな投資法を実践。

著書である『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)は、25万部を突破するなど多方面で活躍する高山さんに、初心者がやってはいけない投資法などキホンを聞いていきます。

■「投資のリスクとリターンは表裏一体」と心得えよう

―― 高山さんも投資をされていると思いますが、最初はどんなことから始めたのでしょうか。

投資は前職を辞めてFPになってから始めたのですが、当時は相場も良かったので勉強もしつつ株式投資からスタートしました。でも、その頃は儲かっていたものの、最初に買った会社の株価が数年後に下がってしまい、株ではけっこう痛い目にも遭いましたね。

その後、『投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識』(ハワード・マークス著)という資産運用の名著に出会いました。その本には、いかに大きく負けずにお金を安定的に増やすのか、投資の基本について書かれていてすごく腑に落ちたんです。そこで、株もやりつつ投資信託を積み立てていくやり方にシフトしていきました。

――若い世代などはライフプランが定まっていない人もいると思いますが、とりあえず資産形成をスタートする場合、どのような方法で始めるのがいいのでしょうか。

最近だとiDeCoやNISAが話題になっていますが、iDeCoは基本的に60歳まで資金が引き出せないんですね。それを考えると、NISAを使うのがおすすめです。NISAのいいところは、非課税で運用でき少額から投資できる点。それに、いつでも引き出せる気軽さが若い世代に向いていると思います。

――投資といっても多くの種類がありますが、その選び方やリスク管理の仕方、投資ルールのポイントなどを教えていただきたいです。

まず、「投資のリスクとリターンは表裏一体の関係」ということをおさえてほしいです。株やFXは大きく儲かるかもしれないけど、その分値下がりのリスクがあります。一方で、預貯金はほとんど増えないけど、元本は割れないですよね。

その上で、「自分は何年後にどのくらいのお金を貯めたいのか」ということと、「自分のリスク許容度」を明確にするんです。リスク許容度は、資産額や年齢、家族構成、投資経験、あとは性格などによって変わります。

自分は資産がどのくらい減っても耐えられるのかを見極めて商品を選ぶことが、とても大事なんです。例えば投資信託は、株や債券などいろいろな資産に分散投資していて「ミドルリスク・ミドルリターン」にあたり、万人受けする商品です。

そこを中心軸にして、リスクがあまり取れない人は預貯金や債券、もっと増やしていきたい人は株やFXを選ぶ、という風にするのがいいですね。

あと、投資信託は長期でコツコツ積み立てるのが基本スタンスですが、株式投資の場合は「2割儲かったら売る、1割下がったら損切る」など、機械的なルールを持つのが大切です。

■リスクを抑えて儲ける方法はあるの?

――大きく儲からなくてもリスクを抑えて着実にお金を増やしたい場合、具体的にはどのような運用方法がおすすめですか。

下がった時のリスクが大きすぎるので、一つの商品に集中投資するのは絶対にダメ。そうではなく、まずは資産を目的別に分け、それに合わせて金融商品を選びます。

「生活費や病気・ケガに備える緊急予備資金は、すぐに引き出したいので預貯金」
「住宅の頭金など3~5年先に使うお金は、すぐに使うわけではないけれど、近い将来に使うお金なので、預貯金より金利が高くて安全性が高いネット定期や個人向け国債など」
「教育資金や老後資金など10年以上使わないお金なら、投資で増やす」

といった具合です。この時、リスクとリターンを考えて、資産全体の7~9割くらいは預貯金や定期預金、債券、投資信託など長い目で見て安定的に運用できるもので構成したいですね。

■初心者が避けるべき手法

――投資で初心者がやってはいけない手法、注意が必要なポイントがあれば教えてください。

最近とても多いのが、お金に困り一発逆転を狙ってFXや暗号資産で投資した人からの相談なんです。高いレバレッジ(借り入れを利用することで、自己資金のリターン(収益)を高める効果が期待できること)をかけて失敗し、借金が200~300万円くらいに膨らんでいる人もいます。

なのでやはり、初心者はあまりハイリスク・ハイリターンなものには手を出さないことですね。まずは余裕資金として半年分くらいの生活費を貯めておくと、心に余裕ができてむちゃな投資をしなくなると思います。

――お金を増やすには長く投資を続けていくことが大切だと聞きますが、運用の途中で資産が減ってしまった時はどのように考えればいいでしょうか。

何に投資しているかにもよりますが、いわゆる「長期・積立・分散」で運用している場合には、「値下がりしている時は多くの口数を買えるチャンス!」と思えるかがポイントだと思います。

もったいないのは、ある程度投資を続けて複利効果(運用で得た収益を、当初の元本にプラスして再び投資することで利益が増えていくこと)も得られているのに、怖がって運用をやめてしまうこと。大体10年くらい積立投資を続けると、「元本割れしづらいな」という感覚が得られてくるものなので、それを知っているかどうかはとても大きいですね。金融庁のデータを見てもらうと、20年程度積立投資を続けていると、元本割れのリスクがほぼなくなるようです。

ただし、株の場合は業績がすごく下がっているケースもあるので、その時は損切りが必要です。

■投資にどのくらいあてればいいの?

――毎月の収入やボーナスから投資に回す割合は、何%くらいが適切ですか。

実家暮らしか一人暮らしかなどステータスによっても変わりますが、一般的な貯蓄割合は、手取り金額の2割が理想です。半年分の生活費が確保できていないなら、まずは手取りの2割を預貯金で貯めていきましょう。すでに確保できている場合、例えば手取りの2割が6万円なら4~5万円は投資してもいいと思います。

ただ、結婚など資金が必要なイベントがあるなら元本確保型の商品の比率を増やすなど、その人のライフプランによって配分は変わります。

半年分の生活費が確保できている人ならボーナスを半分くらい投資に回してもいいですが、残りの半分は自己投資や経験に投資することも非常に大切です。

――物価高で「貯金するのも難しい」という声を耳にしますが、将来を見据えれば、生活費を抑えてでも投資を始めておくべきでしょうか。

物価高ということは、預貯金だけしていてもお金の価値は目減りしてしまうんです。それに、今後もおそらく物価は上がっていくので、「投資して増やす」という考え方は取り入れる必要があると思います。まずは1,000円、2,000円の少額投資でも「今は投資に慣れていく時期」と考え、トライしてみるとよいかもしれません。

――お金を右肩上がりに増やしていくために、最も重要なポイントは何でしょうか。

これはやはり「長期・積立・分散投資」ですね。投資信託なら、資産も投資する時期も分散できるので、長期的に見ると安定して資産を増やせる可能性が高いんです。なので、やはり初心者の方が安定的にお金を増やすなら、「長期・積立・分散投資」が基本になると思います。

■ポイントをおさえて資産運用を始めてみよう

今回のお話では、投資のリスクとリターンの関係性を知ること、自分のリスク許容度を把握すること、そして、「長期・積立・分散投資」を基本にすることなど、投資をする上で欠かせないポイントをいくつも教えていただきました。高山さんのお話を参考に、堅実にお金を増やす資産運用をスタートしてみてはいかがでしょうか。

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