人に頼ることで、作業効率が上がったり、周囲の人との信頼関係が構築できたりと、メリットがたくさんあります。いきなり人に頼るのは簡単ではないですが、気遣いの方向性を少し変えることで、人に頼るのが苦手な自分を克服できるでしょう。

本記事では人に頼れない理由や人に頼るメリット、頼らないことのデメリットなどを紹介。逆に人に頼るのが上手な人の特徴や、頼り下手の克服方法もまとめました。

  • 人に頼るのが苦手な人とは

    人に頼るのが苦手なのはなぜなのか、その原因や特徴、克服方法などを紹介します

人に頼るのが苦手なのはなぜ? その原因とは

人に頼るのが苦手な人は、物事を一人で抱え込み、頑張りすぎる傾向があります。相手を気遣える素晴らしい人間性を持っていることがほとんどですが、人に頼らないことで、周囲からは「信頼されていないのかな」とマイナスに受け取られている可能性もあります。

そこでまずは、なぜ人に頼るのが苦手なのか、考えられる原因について一つずつ解説します。

人に頼ることに罪悪感がある

人に頼るのが苦手な人は、「自分一人で最後までやらなければ」と責任を強く感じている人が多いでしょう。「人に頼ることは悪だ」とすら感じていることも。人に迷惑を掛けてはいけないと、過剰に気を遣っているのです。

「仮に自分が頼った後の相手の状況」を予測し、頼る前から罪悪感を抱いてしまいます。

例えば「自分が頼ることで相手の時間を奪ってしまい、相手が忙しくなる」「頼った結果もし失敗に終わったら、相手に責任を感じさせてしまう」などと想像し、相手を過剰に守っているのです。

人間関係が面倒と感じている

人に頼む場合、多かれ少なかれコミュニケーションをとらなければなりません。人に頼むのが苦手な人は、人間関係が面倒だと感じている可能性があります。コミュニケーションをとらなければならないなら、自分でやった方が楽だと思っているのです。

また、「誰に頼むのがふさわしいだろう?」「この人に頼んだら、他の人はどう思うかな」など深く考えすぎてしまい、人に頼るのをやめてしまうこともあるでしょう。

このような考え方をする人は日頃から人間関係に疲れており、人との関わりをわずらわしいと感じています。

幼少期からの影響

人に頼れないのは、幼少期の環境が原因の場合もあります。特に長男・長女は、弟や妹から頼られたり、両親から「お兄ちゃんでしょ!」などと言われたりすることが多かった場合も。周囲に頼れずに育ち、大人になっても頼り方がわからないまま、というケースがあります。

きょうだいの有無にかかわらず、親が支援や協力をせずに「自分でやりなさい」と突き放すタイプだった場合も、人に頼るのが苦手な大人になってしまう可能性があるでしょう。

自分でやった方が速い・出来がいいと思っている

人に頼れないのは「他人を信頼できていない」ことが原因の場合もあります。他人よりも自分の方が優れている、自分でやった方が速いと思っているケースです。実際に、周囲に頼れるような信頼できる人がいない場合もあるでしょう。

このような場合、人に頼ることで効率が下がったり、質が落ちたり、失敗したりするのが嫌で、頼めないのです。頼むことで自分が楽になったとしても、結果に少しでも不備があると納得ができない、完璧を求めるタイプの人に多いでしょう。

断られるのが怖い

人に頼る前から頼った後のことを想像し、断られるのが怖くて頼めない場合もあります。相手の反応によって自分が傷つくのが怖くて、頼む勇気が出ないのです。実際に人に頼んで、冷たく断られた経験がある人に多い原因でしょう。

また根底として、人に頼ることは悪いことだと考えている可能性があります。

プライドが高く、頼ることをカッコ悪いと思っている

人に頼るなんてカッコ悪い、恥ずかしい、と思っているから頼めない、という場合もあります。本当は人に頼りたい状況でも、自分のプライドに反するのでできないのです。そして甘え上手な人を見ると「カッコ悪い」と思ってしまいます。

そういった考えが表に出てしまうと、人を見下していると捉えられてしまう場合もあります。

人に頼るのが苦手な人の特徴や性格

  • 人に頼れない人の共通点

人に頼るのが苦手な人には、共通する特徴や性格があります。それぞれ解説します。

責任感が強い

人に頼るのが苦手な人には「これは自分の仕事だから、最後まで責任を持って取り組まなければ」といった強い責任感がある人が多いでしょう。

自分のことは自分でやるのが当然と考えているため、そもそも人に頼る考えが浮かばないことが多いのです。周囲からは「もっと頼ってくれればいいのに」と思われている可能性があります。

完璧主義

人に頼るのが苦手な人は中途半端な成果を嫌う場合が多く、最後まで自分で完璧にやらないと気が済まないタイプの人もいます。完璧主義の人は、他人が入ることで完璧な結果にならないのが許せません。

他人を信頼しておらず、「頼っても自分が理想とする完璧な結果にはならないだろう」と判断して、何でも自分でやろうとします。

頼られると断れない

人に頼るのが苦手な人は、逆に人から頼られることが多く、そして頼られると断れない人も多いでしょう。

責任感の強さや完璧主義とも関係していますが、「頼られたからには引き受けなくては」と、自分が大変な状況でも、断らずに頑張ろうとします。人のために頑張れる優しい性格の持ち主ですが、キャパオーバーになってしまうリスクが高いです。

そしてそういった状況に陥ったことがあるからこそ、相手に対しても「私がこれを頼んだら、この人は断れず、大変な状況に陥ってしまうかもしれない」と思って、頼むことに尻込みしてしまうのです。

相手の反応に敏感(HSP気質)

人に頼るのが苦手な人の中には、物事を深く考え、敏感で繊細な性格の人も多いでしょう。

人に頼ることについて「ちょうど相手が忙しくてタイミングが悪いかもしれない」、「冷たい態度をされたらどうしよう…」などネガティブな方向に予測や想像をしてしまいます。

そのため、たとえ人に頼りたい状況でも、自力で解決した方が平穏に過ごせると考えるのです。

人に頼ると起こる良いこと

  • 人に頼ることのメリット

職場や日常生活において積極的に人に頼ると、良いことがたくさん起こります。自身の負担やストレスが軽減できるだけでなく、自分も相手も大きく成長させ、自己実現につながる可能性もあるのです。

具体的にどんなメリットあるのか、それぞれ詳しく解説します。

作業効率が上がる

人に頼ることで、単純に作業効率が上がります。たとえ自分の仕事をこなすスピードに自信があったとしても、やはり複数人で行うスピードにはかなわないものです。

そしてしっかりと役割分担ができると、時間短縮になるだけでなく、一人当たりの肉体的・精神的な負担が減ることによって、質が自然と高まります。また「餅は餅屋」というように、得意とする人に頼むことで専門性が上がり、結果、チームとして高品質な結果を出せるようになります。

浮いた時間で、自分は違う仕事に着手することもできるかもしれません。

また自分のキャパを理解している人は、自己管理能力が高く計画性があると、周囲から高い評価を得られるでしょう。

信頼関係が構築できる

人には「人の役に立ちたい」という気持ちがあるものです。これはアメリカの心理学者であるアブラハム・ハロルド・マズローが提唱した「マズローの欲求5段階説」の「社会的欲求」からも理解できます。

社会的欲求とは、「何らかの組織に所属し、そこの人たちに受け入れられたい、必要とされたい」という欲求を指します。「人に頼るなんて申し訳ない」「嫌われるのではないか」と感じているかもしれません。しかし、頼ることで相手は「私を信頼してくれているから頼ってくれたのだ」「私は人の役に立っている、認められているんだ」と感じるため、相手の欲求を満たすことにもつながるのです。

人に頼ることは「あなただからこそお願いしたい」という信頼の証しでもあるため、信頼関係の構築にも役立つでしょう。

お互いに成長できる

人に頼る際には、物事に一緒に取り組んだり、依頼内容を伝えたりすることが必要なので、必然的にコミュニケーションをとることになるでしょう。これにより新たな意見やアイデアが生まれ、お互いの成長につながります。なぜなら人それぞれに違った考え方や解釈があり、仕事においても日常生活においても、正解が一つなことはほとんどないからです。

人に頼って、さまざまな意見を交わすことで「正解の選択肢が増える」ため、頼った人も頼られた人も成長できるのです。

人に頼ることは単に相手の仕事を増やすという側面だけではありません。独力では気付けないような学びがあると言えます。

大きな成功につながる可能性がある

人に頼ることは、人とつながることになります。人とのつながりによって信頼関係を構築し、その結果、思わぬ話が舞い込んだり、成功の糸口となったりする場合もあります。あなたも人と話していて、思わぬ方向に話が進んでいたり、新たな友達ができたりした経験はありませんか。

大きな成功を収めている人の多くは、人に頼るのが上手な人です。人に頼ることで大きな問題を解決できることもあります。時に、独力ではとても到達できないようなところまで進めることもありますよ。

人に頼らないことで起こりうる悪いこと

  • 人に頼らないことのデメリット

人に頼らないままでいると、悪いことが起こる可能性があります。

事前にどんなデメリットがあるのかを知っておくことで、一人で抱え込まず、誰かに助けを求められるようになりましょう。それぞれ詳しく解説します。

ストレスがたまりやすい

人に頼らないでいると、自分のやるべきことが積み上がっていくため、負担が大きくなります。結果、自分の自由時間も減り、ストレス発散ができずにどんどん蓄積されてしまうでしょう。

「やってもやっても仕事が減らない」「どうして自分だけこんなに大変なんだ」と、心のゆとりがないまま過ごすことになるため、体調を崩したり、うつ病になったりするリスクが高まる可能性もあります。

キャパオーバーになるリスクが高い

いくら仕事が速い人でも、一人の力には限界があります。人に頼らずに自分一人ですべて引き受けていると、仕事がたまっていくこともあるでしょう。

それでも引き受けていると、いずれ限界が来て、仕事に取り掛かれずに期限が過ぎてしまうといった失敗につながるリスクがあります。人に迷惑を掛けないようにしているつもりが、失敗に終わってしまっては本末転倒です。

成功するチャンスを逃すかも

人に頼らないで自分だけで無理していると、周囲からは「信頼されていないのかな」と思われてしまいます。さらに、上司からは「チームで働けない人だ」「役職はつけられない」などと評価され、出世の道を狭めてしまっている可能性もあります。

また、信頼関係を築かずに一人の殻に閉じこもっていると、必然的に周囲とコミュニケーションをとる機会が減るので、新たなつながりが減り、知らず知らずのうちに成功するチャンスを逃してしまうかもしれません。自分一人の力で一生懸命頑張っているのに、成功するチャンスを逃すのはもったいないことです。

逆に「上手に人に頼れる人」の特徴とは

  • 上手に人に頼れる人の特徴とは

周囲に「あの人は甘え上手だな」と感じる人はいますか。そういった人たちは一体、どうやって人に頼っているのでしょう。

上手に人に頼れる人は、普段から明るく笑顔で人とコミュニケーションをとり、愛想が良く、人の話をしっかりと聞く人が多いです。しかしそれだけではありません。頼り上手な人は、周囲の状況をよく観察しています。具体的には、以下のようなポイントをチェックしています。

  • 誰がどの分野が得意なのか(誰に頼むのが適任か)
  • 今相手は、手が空いている状況か
  • 相手の今日の気分はどうか

これらを把握した上で、適した相手に、適したタイミングで頼むことによって、頼まれた相手も嫌な気分にならず、むしろ喜んで引き受けてくれるのです。

さらに「持ちつ持たれつ」を意識しているため、相手が必要なタイミングで手を差し伸べるのも上手です。

これらを参考にしつつ、次は人に頼るのが苦手な自分を克服するためのステップを踏みましょう。

「人に頼るのが苦手…」を克服するためのステップ

  • 上手に人に頼れる人になるためには

「人に頼るのが苦手…」を克服するためには、頼られた相手の気持ちを考えることが重要です。

具体的には以下のステップを踏んで、克服を目指しましょう。

  • 普段から周囲の人と積極的にコミュニケーションをとる
  • 周囲の人をよく観察する
  • 小さなことから頼んでみる
  • 感謝の気持ちを伝える

「そんなすぐにはできない」と感じたかもしれませんが、大丈夫です。それぞれのステップの意味を理解し、少しずつ日常に取り入れることで、気が付けば克服できるようになっているはずです。

一つずつ解説しますので、実践してみましょう。

普段から周囲の人と積極的にコミュニケーションをとる

普段から周囲の人とコミュニケーションをとることで、相手の状況を把握しやすいメリットがあります。また人は、仲の良い人の頼みほど「聞いてあげよう」と親身になってくれるものです。

しかしこれは得意・不得意が明確に分かれる部分です。無理して人とコミュニケーションをとってストレスになっては、元も子もありません。

コミュニケーションが得意な人は、無理のない範囲で積極的に取り入れましょう。苦手な人は無理せず、次のステップに進んで構いません。

周囲の人をよく観察する

周囲の人をよく観察するように意識しましょう。時間はとられますが、結果的に、自分にプラスの影響をもたらしてくれるはずです。

ただ観察するのではなく、以下のポイントに絞って冷静に観察しましょう。

  • その人の得意/苦手な仕事は何か
  • その人の好き/嫌いな仕事は何か
  • その人の現在の仕事量
  • その人の抱えられる仕事のキャパシティー
  • その人の性格
  • その人の持っている物や服装の特徴
  • その人の趣味
  • その人はどんなときに機嫌が良いか/悪いか

日頃から観察眼を養うことによって、誰に何を、いつ、どうやって頼めば、相手が喜んで引き受けてくれるかが判断できるようになります。

小さなことから頼んでみる

相手の状況がわかるようになってきたら、相手に敬意を払いつつ、頼みやすい内容や小さなことから実際に頼んでみましょう。このとき、「あなただからお願いしたい」という信頼の気持ちが伝わると、頼まれた相手も快く引き受けてくれる可能性が高いです。

もし断られたとしても落ち込む必要はありません。なぜ相手は断ったのかを冷静に考え、再び観察を強化して次に生かしましょう。あくまで冷静に、俯瞰(ふかん)的に捉えることが大切です。

感謝の気持ちを伝える

実際に頼んで、仕事を引き受けてもらえたら、「引き受けてくれてありがとう」「話を聞いてくれてありがとう」「おかげで本当に助かりました」といった、感謝の気持ちを伝えることを忘れないでください。

人に頼った後に「お手数をお掛けし申し訳ございません」などと謝る人も多いですが、よそよそしさがあり、距離を感じてしまう人もいます。せっかく信頼関係を築いているのに、もったいないことです。謝るのではなく、ポジティブな感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。

上手に頼ることでチーム力を向上し、大きな成果につなげよう

率先して人に頼らずに自分で解決しようとするあなたは自立心が強く、素晴らしいことです。しかし、チーム全体として見たときに、損をしている部分も多々あることを知っておいてください。

人に頼ることで単純に自分の作業量が減るだけではなく、お互いを成長させるため、チーム力の向上が見込めます。そして、自分が想像している以上の結果になることだって往々にしてあるのです。

日常生活でも仕事でも、「すべて一人で解決する」と考えるのは、自分の成長幅を狭くし、チャンスを逃すことにつながってしまいます。頼り下手を克服できるよう、今回紹介したステップを少しずつ実践してみてくださいね。