ホンダが米ゼネラルモーターズと組んで日本で自動運転タクシーサービスに参入するとのニュースはけっこう衝撃的だった。今のところ、法整備も含め実現に向けてはハードルもありそうだが、具体化すれば便利そうなサービスだ。ところで、同事業にはどんな車両を使うのか。実車を見てきた。

  • ホンダの自動運転タクシー車両「クルーズ・オリジン」

    ホンダが自動運転タクシーに使う車両を見てきた

日本で無人タクシー、これは便利そうだ!

GM クルーズホールディングスLLC(クルーズ)およびGMとホンダは合弁会社を設立し、日本で自動運転タクシーサービスの実現を目指す。2026年初頭に東京都心部で開始の予定で、まずは数十台からスタートし、500台規模での運用を見込む。その後は順次台数を増加させ、サービス提供エリアの拡大を図っていく。

使用する車両はクルーズ、GM、ホンダで共同開発した自動運転専用車両「クルーズ・オリジン」。配車から決済までをスマートフォンのアプリ上で完結できるサービスで、指定の場所に迎えに来るところから目的地に到着するまでの全てを自動運転で行う。

クルーズ・オリジンの実物は「ジャパンモビリティショー2023」(一般公開日は11月5日まで)で見ることができた。展示車両はコンセプトカーというよりも、「ほぼ実物」(ホンダ広報)と思っていいそうだ。

  • ホンダの自動運転タクシー車両「クルーズ・オリジン」
  • ホンダの自動運転タクシー車両「クルーズ・オリジン」
  • ミニバンよりは大きく、小型バスよりは小さいくらいのサイズ感。製造はGMが担当する

実物を見るとクルーズ・オリジンは、小型バスほどではないにしろ、けっこう大きい。なので、東京都にたくさんある細い路地に入っていくのは難しそうだ。利用するイメージとしては、自宅近くの幹線道路沿いにクルマを呼んで乗り込み、目的地付近の幹線道路沿いで降ろしてもらう感じなのではないだろうか。どんなルートを走行可能かも含め検討中とのことだが、バスのように決まったルートを走るのではなく、あくまで希望の場所から希望の場所へと移動できるタクシーのようなサービスが基本になるという。

  • ホンダの自動運転タクシー車両「クルーズ・オリジン」
  • ホンダの自動運転タクシー車両「クルーズ・オリジン」
  • ホンダの自動運転タクシー車両「クルーズ・オリジン」
  • 対面6人乗りで運転席は付いていない。バッテリーはGMの「アルティウム」を搭載。車両の上部はホンダが設計・開発を担当、自動運転関連はクルーズが担っているとのことだ

限られた台数のテクノロジー満載車両を使ったサービスなので、普通のタクシーよりも料金は高くなりそうな気もするが、ドライバーが不要であり、電気自動車(EV)だから燃料代もかからないとなると、どのくらいの金額に収まるのか。そのあたりについて確定的な回答は得られなかったが、ホンダ広報の受け答えから推測すると、とんでもなく高くなることはなさそうな雰囲気だった。

これまでに自動運転バスの実証を何度か見てきたが、大抵の場合は緊急時に備えて補助ドライバーのような人が乗っていた。ホンダの自動運転タクシーは本当の無人タクシーになるそうなので、例えば家族4人で乗って車内で水入らずのだんらんを楽しんだり、同僚6人で乗って機密情報満載の会議を行ったりといった過ごし方が可能になる。クルマの開発と同時に国や自治体との協議も進めているとのことだが、何とかスムーズに認可が下りてほしいと思えるサービスだ。