第73期ALSOK杯王将戦(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定リーグが進行中。10月30日(月)には羽生善治九段―渡辺明九段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、横歩取りの力戦を80手で制した羽生九段が3勝目を挙げ挑戦に望みをつなぎました。
1年前の対局
羽生九段2勝2敗、渡辺九段0勝3敗で迎えた一戦はそれぞれ挑戦と残留に向け負けられない戦い。先手番を得た渡辺九段は横歩取りの出だしに誘導します。この直後、あえて後手に横歩を取らせたのが渡辺九段の用意と思われる作戦でした。
1年前に両者の間で戦われた本挑戦者決定リーグでは後手を持った羽生九段が横歩を取らせて制しており奇しくも本局はその逆を行く形に。駆け引きのすえ局面は相横歩取りに進みますが、飛車交換の決戦は回避されて穏やかな駒組みに落ち着きました。
両者自陣角、働いたのは…
両対局者が盤上中央に据えた攻防の自陣角をきっかけに局面が動き出します。後手の羽生九段の角は7筋の桂頭攻めと2筋の飛車先突破を目指した両狙い。これに対し適当な受けがないと見た渡辺九段が攻め合いで応じたことで局面は一気に終盤戦に突入しました。
渡辺九段は8筋にと金を作って飛車先突破を目指しますが、羽生九段もここは読み筋。銀を取らせている間に2筋に角を飛び込んで先に竜を作ることに成功します。手番を握って攻め続ける羽生九段はここから基本の寄せで優勢を確立しました。
羽生九段が挑戦に望み
早逃げで開き直った渡辺玉を先回りの桂打ちで包囲したのが「玉は包むように寄せよ」の基本手筋でした。終局時刻は16時36分、攻防ともに見込みなしと認めた渡辺九段が投了。一手勝ちを読み切っての快勝で羽生九段がリーグ成績を3勝2敗としました。
全6局で行われる本リーグ、羽生九段は11月14日(火)に行われる永瀬拓矢九段(3勝0敗)との直接対決を制するのが挑戦への最低条件です。なお敗れた渡辺九段は2戦を残してリーグ陥落が決まっています。
水留 啓(将棋情報局)
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