藤井聡太竜王に伊藤匠七段が挑戦する第36期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は第3局が10月25日(水)・26日(木)に福岡県北九州市の「旧安川邸」で行われました。対局の結果、相掛かりのねじり合いを96手で制した藤井竜王が開幕3連勝とし、防衛まであと1勝に迫りました。
相掛かりの力戦形
本局を落とすとカド番に追い込まれる伊藤七段は奪取の望みを先手番相掛かりに託します。後手の7筋の歩突きに反応して十字飛車の要領でこの歩をかすめ取ったのは積極的な指し方。「先手の歩得対後手の手得」という構造で駒組みが進みます。
定跡の整備されていない展開を前にしてともに1日目午前中から長考が続きます。簡素な囲いで済ませた伊藤七段が棒銀の要領で飛車先突破を目指したのに対して後手の藤井竜王は軽い歩突きで対抗。これは狙われた角をさばいて先手の棒銀をぼかす狙いです。
藤井竜王の大局観光る
藤井竜王の記した封じ手が立会人の森内俊之九段によって開封されて2日目の戦いが開始。藤井竜王はここから飛車の活用でリズムをつかみます。銀交換によってがら空きになっていた2筋に飛車を大転回したのが先手攻勢のムードを断ち切る好手でした。
受けていてもキリがないと見た伊藤七段は攻め合いに転じますが、藤井竜王は今度は冷静な受けでリードを拡大。潜在的に王手馬取りの筋がチラつくものの、馬を取らせる間にと金を作れば大丈夫と踏んだのが「終盤は駒の損得より速度」の格言通りの深い読みでした。
藤井竜王が貫録示す
一分将棋になるまで考えて逆転を目指した伊藤七段は後手玉に詰めろをかけて下駄を預けますが、藤井竜王は先手玉に詰みがあることを読み切っていました。終局時刻は18時21分、自玉の詰みを認めた伊藤七段が投了。藤井竜王はこれで開幕3連勝を飾りました。
敗れた伊藤七段は「封じ手前後の攻防で攻め合いを選ぶつもりだったものの自信が持てなかった」と一局を振り返りました。注目の第4局は11月10日(金)・11日(土)に北海道小樽市の「銀鱗荘」で行われます。
水留 啓(将棋情報局)
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