白絹病とは? 主な症状や発症時期

白絹病は、ネギやウリ科、マメ科、ナス科など多種多様な植物を襲う土壌中の糸状菌(カビ)によって引き起こされます。
感染した株は白色の菌糸で覆われ、褐変腐敗し、次いで黄化して最終的には枯死へと至ります。初期段階では葉鞘(ようしょう)に白い絹糸状の菌糸が見られ、進行とともに葉や株にも広がっていきますが、最も厄介なのは、菌糸から形成される菌核が土壌中に残存し、越冬して次作の感染源となる点です。

発症しやすい時期

白絹病は25℃〜35℃の気温で、初夏から初秋にかけて発症しやすい病気です。
ハウス栽培では5月〜6月、露地栽培では7月〜9月下旬に多く発症します。

地表に近い場所で未熟な有機物(たい肥や鶏ふん肥料など)を多く使用すると病原菌が繁殖しやすくなり、感染リスクが高まります。感染が一度始まると、菌核が土壌中で長期に渡って生存するため、再発の可能性が高まります。

発症後の治療や復活は困難

白絹病は発症後の治療が難しく、感染株は取り除き処分が必要です。
露地栽培では夏季にマルチを使った太陽熱消毒や、薬剤消毒などの土壌消毒をすると良いでしょう。プランター栽培では土を取り替えたり、太陽熱消毒をすることが効果的です。いずれにせよ、感染抑制のための予防・管理が欠かせません。

人体への影響はない

基本的に、植物の病気は人体に影響しません。
直接罹患部分を食べたりするのは避けたほうが賢明ですが、手で触れるなどは問題ないでしょう。しかし、白絹病は周りの株に感染してしまうので、発見次第早急に対処することが大切です。

白絹病を発症する原因とは

白絹病の主な発症原因は以下のとおりです。

・原因菌は糸状菌
・土壌中で長期生存する菌核

それぞれ詳しく解説していきます。

一番の原因は糸状菌

白絹病の原因は糸状菌で、特に梅雨から夏終わりの高温多湿な時期に繁殖します。乾燥が続くと感染力が強まり、酸性土壌を好む特性も持っています。対策として適切な土壌管理と湿度コントロールが重要となります。

菌核は土壌中で5〜6年ほど生存する

白絹病に感染した野菜は、枯れる際に菌核を土壌中に残してしまいます。
この菌糸の塊(菌核)は土壌中で5~6年間生存可能であるため、越冬することで毎年同じ土地で発症のリスクが続く可能性があります。一度発生した場所では土壌の消毒を行うと良いでしょう。

白絹病になりやすい野菜や植物の例

白絹病にかかりやすい野菜や植物には、以下のようなものがあります。

ネギ

カボチャ

ニンジン

スイカ

キク

サンダーソニア

ニチニチソウ など

上記の作物のほか、200種類以上の野菜や植物に感染するといわれています。

地面に可食部が触れる野菜

原因菌が土壌中に潜んでいることから、地面に可食部が触れる野菜は特に注意が必要です。
例えば、ネギやスイカ、カボチャなどが挙げられます。

ネギ白絹病では、被害部分が腐ってしまい、地上の葉は黄色く枯れてしまいます。
スイカ白絹病では、茎の地際部や果実が腐敗し、割れてしまいます。
カボチャ白絹病では、茎や果実の地際部から地表にかけて菌糸が広がり、腐ってしまいます。

風通しを良くしたり、土壌が過湿や酸性に偏った状態にならないようコントロールをしましょう。

花や観葉植物

花や観葉植物でも白絹病は発症することがあります。
露地植えの花はもちろん、鉢植えやプランターの観葉植物でも、風通しが悪かったり管理が不十分だったりすると白絹病になることも。
白絹病が出てしまった場合は、鉢も土も奇麗なものに交換しましょう。殺菌剤で根を殺菌するとなおよしです。

白絹病に有効な薬剤・殺菌剤

白絹病は発生してしまうと、治すことは難しい病気です。そのため、薬剤を使った予防がとても大切です。白絹病の予防に使える薬剤には以下のものがあります。

・石原フロンサイド粉剤
・カナメフロアブル
・リゾレックス
・モンガリット粒剤
・バリダマイシン液剤

それぞれ詳しく解説していきます。

石原フロンサイド粉剤

石原フロンサイド粉剤は土壌殺菌剤で、土に混ぜたり株元に散布したりすることで土の殺菌・消毒が可能です。広範囲の病害、例えば根こぶ病、苗立枯病、菌核病、白絹病、そうか病などに対して、優れた予防効果を発揮します。この効果は持続し、長期間にわたって特に根こぶ病の被害を抑制する働きがあります。

カナメフロアブル

カナメフロアブルはSDHI殺菌剤で、ネギや大豆の白絹病をはじめとする多くの病害に対し高い防除効果を発揮します。浸達性と浸透移行性を持ち、多くの作物において収穫前日まで利用可能な薬剤です。

リゾレックス

リゾレックスは、コンニャク、ニラ、ネギ等多くの作物に利用できる有機リン系の殺菌剤です。病原菌の運動や細胞分裂に影響を与え、殺菌効果を発揮します。予防的な処理に効果的で、リゾクトニア属菌など複数の菌に効果を示し、優れた残効性と安定した効果を持つ使いやすい薬剤です。

モンガリット粒剤

モンガリット粒剤は、ネギ、ニラ、ニンニク、コンニャクなどの白絹病や、稲の複数の病害(紋枯病、疑似紋枯症など)に効果を示す薬剤です。根から迅速に吸収され、速効性に優れています。また、ネギの黒腐菌核病や黒穂病などにも有効です。

バリダマイシン液剤

バリダマイシン液剤は、耐性菌発生の可能性が極めて少なく、薬害の心配もほとんどないといわれています。白絹病のほか、糸状菌を原因とするさまざまな病害にも効果があり、多くの作物で登録されているため使いやすい薬剤です。

農薬以外にも。効果的な白絹病の対策

農薬散布が重要な対策になることは間違いありませんが、その他の方法でも白絹病を予防することができます。


・石灰肥料を散布する
・畝の温度や湿度をコントロールする
・農機具などをアルコール消毒する

以上のポイントについて、それぞれ解説していきます。

石灰肥料を散布する

白絹病予防には、酸性を好む糸状菌の生育を抑えるため、石灰を散布し、土壌を中性からアルカリ性に保つことが効果的です。ある研究では、石灰散布が白絹病発生を抑制することがわかっています。いずれにせよ、白絹病の原因菌が住みにくい環境を作ることが大切です。

畝の温度や湿度をコントロールする

白絹病の予防では、25℃~35℃の高温多湿を好むこの病気の発生を抑制するため、適切な温度と湿度管理が重要です。草や稲わらのマルチングは土の温度や湿度を保つ反面、白絹病の発生を助長する可能性があるため、使用後は放置せず捨てるかすき込むなどして片付けましょう。密集栽培は風通しを悪くするので、株間などにも注意が必要です。

農機具などをアルコール消毒する

白絹病に感染した株は発見次第除去が必要です。株の処分に使用した道具(スコップ、ハサミ等)は、糸状菌の付着を防ぐため、アルコールや熱湯で念入りに消毒を行いましょう。可能であれば、手で直接引き抜く方法が確実ですので、作業の選択肢に入れても良いかも知れません。

白絹病を発症した後の防除や土壌消毒

白絹病の恐ろしいところは、土壌中で越冬し、長期間生存するという点。
もし白絹病が出てしまったら、再発防止のためにも土壌消毒を行うことをおすすめします。

耕種的防除(こうしゅてきぼうじょ)

病害の発病に好適な環境条件を排除することにより、発生を抑制する。
糸状菌は地表近くで活発に繁殖しますが、10センチ以上の深さではその速度が減少します。この特性を利用して、天地返し(土を深く掘り返すこと)が糸状菌対策として効果的です。好気性の糸状菌は土中に埋められると死滅するので、50センチ以上の深さまで掘り返して、深いところの土を表に出すようにしましょう。

太陽熱による土壌消毒

太陽熱消毒は糸状菌防除に効果的で、7月中旬~8月下旬に水を多く含ませた土に透明マルチを隙間(すきま)なくかぶせ、約20~30日間放置します。これにより、土壌内の糸状菌を高温で死滅させる手法です。太陽熱消毒は時間やコストがかかるため、どちらかというとプロ農家向き。冬場に土を掘り返し冷気にさらす天地返しは、比較的手軽な防除法であり、特に家庭菜園でもやりやすいでしょう。

薬剤による土壌消毒

土壌消毒には、薬剤を使ったものもあります。くん蒸剤や粒剤など、さまざまな種類の薬剤がありますが、専用の機械が必要だったり、大掛かりなものになってしまったりすることも。

薬剤の中では、「クロルピクリンくん蒸剤」や「バスアミド微粒剤」が効果的です。
なお、くん蒸剤などの使用後にはガス抜き期間が必要。薬剤は用法用量を守って使いましょう。

まとめ

白絹病は一度かかってしまうと、治療ができずそのまま処分するしかありません。
農業の現場でも、時折発生しては大きなダメージを農家に与えています。常日頃から畑や作物をよく観察しているプロの農家でも発生をゼロにすることは難しい厄介な病気ですが、しっかり予防をすれば、発生数を抑えることは可能です。

白絹病の予防には、原因菌である糸状菌が住みにくい環境を作ること。これが最も大切です。適切な土壌管理や作物の栽培管理をきちんと行い、白絹病が発生する条件をできる限り潰していきましょう。

白絹病は恐ろしい病気ですが、対処ができないわけではありません。本記事を参考にして、予防をしっかり行っていきましょう。