ディルとはどのようなハーブ? 特徴や由来など

ディルは南ヨーロッパ、地中海沿岸、イラン、西南アジアから中央アジアが原産で、現在は世界中に広がり、多くの地域で帰化しています。

耐寒性を持つ一年草や二年草で、特有の芳香を放ち、その香りにはカルボン、リモネンなどの成分が含まれます。成長すると草丈は60~150センチ、左右には30センチほど広がり、細い茎に柔らかく細かい葉が互生(ごせい)。夏には枝先に白または黄色の小さな花を咲かせます。

ディルの歴史は古く、5000年以上前から消化不良を治す薬草として使われていたことがわかっています。精油成分のリモネンやカルボンは、リラックス効果や消化を助ける効果が期待されています。栄養面ではカルシウムが豊富で、ビタミンA、ビタミンC、食物繊維、鉄、マグネシウムなどの栄養素も含まれています。

ディルとフェンネルの違い

ディルとフェンネルは両方ともセリ科の植物で、外観や用途が似ているため、混同されることがあります。ですが、ディルとフェンネルはそれぞれ違うハーブです。何が違うのか、ポイントをまとめてみました。

◯ディル
・セリ科イノンド属の一年草。
・細く、羽状に裂けた葉を持ち、黄色の花をつける。
・主に種子や葉が香辛料やハーブとして使用される。

 

◯フェンネル
・セリ科ウイキョウ属の多年草。
・より太く、青緑色の葉を持つ。また、フェンネルの茎の部分は肉厚で、食用にすることができる。
・種子だけでなく、茎や球状の塊茎も食用にされる。

ほかにも、フェンネルのほうがディルより大きくなったり、香りが強かったりなどの違いがあります。近くで栽培すると交雑しやすいため、採種する場合は植え付け場所に注意しましょう。

ディルの種まき時期と基本的な育て方

ディルの栽培に関しての基本的なガイドラインは以下の通りです。ただし、地域や気候によって適切な時期や方法が異なる場合があるため、疑問点が出た際は、地元のガーデニングセンターや園芸書を参考にすることをおすすめします。

種まき時期

ディルは耐寒性があるので、春の霜の後、気温が安定する3月~5月頃に種を直播(ちょくはん)します。一般的には春の初めから中旬が最適です。9月~10月の秋頃にも種をまくことができます。

土壌

よく排水される肥沃(ひよく)な土壌を好みます。pHは6.0から7.5の中性が理想的です。

日当たり

日当たりの良い場所で栽培してください。ディルは日照を十分に受けることで最もよく成長します。

水やり

ディルは乾燥に比較的強いですが、定期的な水やりで土壌を湿らせておくことが大切です。特に成長期間中は一定の湿度を保つよう心がけましょう。

収穫

葉は若いうちに、そして頻繁に収穫すると良いでしょう。収穫を続けることで、新しい葉の成長を促します。種は花が完全に咲き終え、茶色く乾いた状態になったら収穫します。

種まきの仕方

ここではディルの種まきについて解説していきます。
種まきの時期や抑えておきたいポイントなどに注意して種まきを行いましょう。

ディルの栽培はあまり難しくありませんが、種が非常に小さく軽いので、種から育てるとなると難易度があがります。種まきのやり方が良くないと、雨水などで種が流されてしまったり、腐ってしまったりすることが多々あるので、初心者の方や少量育ててみたいという人は、苗を買ってきて植え付けるのがおすすめです。

種まきの時期

ディルの発芽適温は15℃~20℃と少し涼しい時期。
季節でいうと、3月~5月の春先と、9月~10月の秋頃になります。
一般的には秋まきしたディルのほうが成長が良く、たくさんのディルを収穫できるようになります。

種まきの方法・コツ

ディルの種まきの方法は、以下のとおりです。

直まきの場合

①土に浅い溝を作る:指で軽く土に溝を作り、約0.5センチの深さにします。
②種をまく:ディルの種を均等に溝に20センチ間隔ですじまきします。最終的には間引い て株間20センチにします。
③土で覆う:まいた種を薄く土で覆い、軽く押さえます。
④水やり:まき終わったら、霧吹きで軽く水をかけて土を湿らせます。

ポット育苗、プランターや鉢植えの場合

①土に植え付け穴を作る:深さ0.5センチほどの穴を作ります。
②種をまく:ディルの種を植え付け穴に4~5粒まきます。大きなプランターで栽培する際 は、株間20センチほど取りましょう。
③土で覆う:まいた種を薄く土で覆って、軽く押さえます。
④水やり:まき終わったら、霧吹きで軽く水をかけて土を湿らせます。

種まきをする際は、種をまく深さに注意しましょう。深すぎても浅すぎても発芽率は悪くなるので、やりすぎないことが重要です。
ディルは種が軽いので、しっかり発芽し根を張るまでは、水やりも注意深く行ってください。

植え付け時期

ディルの苗を植え付ける時期は、4月〜6月頃と、10月〜11月頃になります。
本葉が4〜5枚くらいに育ったころに植えつけましょう。
ディルは暑さと霜に弱いので、しっかり根が活着するように早め早めに植え付けると良いでしょう。

注意点

ディルはもともと直根性の植物です。直根性の植物は、根が敏感で植え替えに強くありません。露地栽培、プランター栽培問わず、直まきできる場合は直まきした方が、発芽後の管理は楽になります。

苗から植え付ける場合は、根っこを崩さないように優しく植え付けましょう。

植え付けする際に知っておきたいこと

ディルを苗から植え付ける場合に必要なものや、土作りについて解説していきます。

・プランターで栽培する場合
・地植えの場合
・水耕栽培の場合

以上の3パターンをそれぞれ説明していきます。
基本的な考え方は一緒ですが、細かいところが異なってくるので参考にしてください。

プランターで栽培する場合

◯用意するもの

・ハーブや野菜用の培養土
・60センチ前後のプランターまたは8号くらいの植木鉢
・底石と鉢底ネット

◯置く場所

・日当たりが良く風通しの良い場所
・室外機の近くには置かないこと
・直接地面や床に置かず、ブロックやすのこの上に置くと風通しが良くなる

プランターの準備が終わったら、植え穴を作り、ディルの苗を植え替えます。
植え替えのときに根っこを崩してしまわないよう注意してください。

地植えの場合

ディルを露地栽培する場合の土作りは、以下の点を中心に行うとよいでしょう。

◯排水性の確保

ディルは水はけの良い土を好みます。水はけが悪い土では、根腐れのリスクが高まるため注意が必要です。
腐葉土や有機質を混ぜることで土の団粒化を促すと、排水性を向上させることができます。

◯土作り

ディルは肥沃な土でよく成長します。有機質の豊富な堆肥(たいひ)や腐葉土を混ぜ込むことで、土の肥沃さを高めることができます。

◯土のpH調整

ディルはpH 6.0〜7.5の中性からややアルカリ性の土を好むので、必要に応じて石灰や硫黄を使用してpHを調整します。

◯深く耕す

ディルの根は比較的深く伸びるため、土を深く耕して軟らかくすると、根の伸展を助けます。20~30センチ程度の深さで耕すと良いでしょう。

◯土をならす

種まき前に、土をしっかりとならして平らにします。これにより、種を均等にまきやすくなります。

水耕栽培の場合

ディルを水耕栽培する場合、以下の手順を参考にしてください。

◯用意するもの

・水耕栽培キット(自作のものでも可)
・ディルの種または苗
・液体肥料
・ロックウールやスポンジなど

◯水と液体肥料の準備

キットに水を入れ、薄めた液体肥料を加えます。液体肥料は指定された倍率で希釈しましょう。

◯種まき

ロックウールやスポンジなどにディルの種を植えます。
発芽するまで温かく、湿度の高い環境を保つようにしてください。

◯日光と照明

ディルは十分な光が必要です。自然の日光が十分に確保できない場合は、ライトなどで光を当てましょう。

◯培養液の管理

培養液の量と品質を定期的にチェックします。必要に応じて追加や交換を行い、清潔な状態を維持しましょう。

◯収穫

ディルが成熟したら収穫します。葉や茎が十分な長さに達したら、必要に応じて切り取ります。

ディルの管理方法

ディルの栽培管理のポイントは、下記の四つです!

・水やりの方法
・支柱を立てること
・剪定(せんてい)と摘心
・施肥の方法

 

以上のポイントについて詳しく解説していきます。

水やりの方法

◯プランター栽培の場合

土の表面が乾いたらたっぷりと水をあげましょう。
ディルの発芽がそろわないうちは、種を流してしまわないように注意深く水やりしてください。

◯地植えの場合

庭や畑で栽培している場合は、水やりをする必要はありません。
基本的に自然降雨で十分ですが、晴れの日が長く続く場合は水をあげたほうが良いでしょう。

支柱を立てる

順調に育ったディルは1メートルを超える背丈になります。
このサイズまで育つと、風の影響を強く受けてしまうようになります。
ディルが折れてしまったり倒れてしまったりすることを防ぐためにも、早めに支柱を立てて誘引すると良いでしょう。

また同じタイミングで土寄せをすると倒伏防止効果が高まります。

剪定と摘心

ディルの剪定は、株の健康維持と光の取り込みを増やすために行います。
春から夏の成長期にかけて、 枯れてしまった葉や病気の部分を切除しましょう。
葉が茂りすぎて、密集してしまった時は中心部をカットします。

また、摘心も必要です。摘心することで、ディルがより大きくなり収穫量もアップします。
ディルの高さが20センチを超えたあたりで、新芽の先を摘み取ります。すると、摘み取った部分から枝分かれして、全体的な葉のボリュームが大きくなります。

施肥の方法

◯プランター栽培の場合

市販の栽培用培養土を使っている場合は、別で施肥をする必要はありません。
その後は、2週間に1度くらいの間隔で液体肥料やハーブ用肥料を与えると良いでしょう。

◯地植えの場合

元肥として鶏ふんや油かすなどの有機肥料、ボカシ肥料を与えると良いでしょう。
緩効性化成肥料を使っても構いません。追肥には液体肥料やボカシ肥料を与えてください。

収穫方法

ディルの草丈が20~30センチほどになったら、順次収穫をしていきます。
柔らかいうちに下の方からハサミなどで摘み取っていくと良いでしょう。

ディルは花が咲くと葉が固くなり、食用に向かなくなります。
花を咲かせないように、芽を見つけたら摘み取ってしまいましょう。
一方で、ディルの未熟な種はピクルスなどの酢漬けの風味付けに使えます。風味付けに使う場合は、未熟な種のついた茎を、根元から切り取って収穫します。

ディルの増やし方

ディルは一年草なので、種を採種して増やしていきます。
種を採る際は、花が咲いた後に茶色く完熟した種を茎ごと刈り取って、よく乾燥させましょう。

地植えの場合、こぼれた種から自生するような形で生えてくることも少なくありません。
なお、ディルはフェンネルと交雑しやすいため、種を採って栽培に使いたい場合は、必ず距離を離して栽培するように心がけましょう。

ディルにつく害虫

病害虫

ディルは病気や害虫には比較的強いハーブですが、アブラムシやキアゲハの幼虫がつきやすいため、注意が必要です。

アブラムシは、ディルの葉や茎に吸着して植物の樹液を吸い取ります。アブラムシの排せつ物は、糖分を多く含みどろっとしています。これが黒カビや病気の原因となることがあります。

またキアゲハが好んで卵を産み付けるため、ふ化した幼虫による食害には要注意です。卵や幼虫は早めに発見して捕殺することで、被害を抑えることができます。普段からよく観察しましょう。

ディルはハーブ栽培の入門にぴったり!

繁殖力が高く、病害虫にも強いディルは、初めてハーブを栽培するという人にぴったりな作物です。

栽培管理においても、専門的な知識や経験などはあまり必要なく、育てやすいといっていいでしょう。ただ種が非常に小さいので、しっかり発芽がそろうまでは、注意深く観察しましょう。また植え替えは苦手なので、苗から栽培するときは、根を崩さないように優しく植え替えることを忘れずに。

自宅でディルを栽培できれば、気軽に料理やハーブ水などを作ることができるようになります。採れたてのハーブは香り豊かでフレッシュな気持ちにしてくれるので、ぜひ栽培に挑戦してみてください。