女優の趣里が主演を務める連続テレビ小説『ブギウギ』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)。このたび語りの高瀬耕造アナウンサーが本作参加について語った。

高瀬耕造アナウンサー

連続テレビ小説(朝ドラ)第109作となる『ブギウギ』は、満面の笑顔と底抜けに明るいヒロイン・花田鈴子(趣里)が、多くの困難を乗り越え、歌手の道を突き進み、人々に勇気と希望を与えていく物語。戦後の大スター・笠置シヅ子さんをモデルとするが、激動の時代の渦中でひたむきに歌に踊りに向き合い続けたある歌手の波乱万丈の物語として大胆に再構成し、フィクションとして描く。

――「ブギウギ」に語りとして出演することが決まったときのお気持ちは?

正直に申し上げると、これはまずいことになったなと(笑)。これまで“朝ドラ”の前番組のエンディングでコメントする”朝ドラ送り”を5年間続けてきて、毎朝楽しみにしている視聴者の皆さんと一緒にスタートを迎えたいという一心で勝手に応援していただけだったのですが、今回語りを担当することになり、ファンとして“越えてはならない一線”を越えてしまうのでは? と思いました。
また、ニュース番組で情報を伝えるという仕事を長くしてきた人間にとって、“朝ドラ”のナレーションは似て非なるものです。ドラマに感情や時代の空気をのせて語るというのは、アプローチとしては全く違いますし、実際、声の使い方や発声方法も違います。アナウンサーとしては未知の分野で新たなチャレンジだと感じました。

――どういった語りを目指していますか?

自分の中に声の引き出しとなるものがなかったので、「スカーレット」の語りを担当した先輩の中條誠子アナウンサーに相談したところ「“朝ドラ送り”で視聴者の皆さんに広く認知されているのだから、存在感を消して影になる語りではなく、高瀬さんらしい語りで“息遣い”を大切に」という助言をもらいました。
また、ドラマの制作チームと顔合わせをしたときにディレクターが言った「出演者たちがうれしい場面では一緒に喜んでください。悲しい場面では一緒に泣かないで一歩引いて見守ってください」という言葉がとても印象に残っています。そのときに、これまで“朝ドラ送り”でやってきた視聴者の皆さんと一緒に楽しんできたスタンスとそう遠くないんだ、とようやく自分らしいアプローチが見えた瞬間でした。

――語りで苦労された点、工夫された点など教えてください。

どれも難しいですが、やはり第1週第1回の冒頭の第一声ですね。「今から75年前、昭和23年の東京です」と私の語りからスタートしますが、物語の空気やカラーを見誤ってしまうと、最初から違和感を与えてしまうのではないかと危惧していました。台本をいただいてからは部屋にこもって、声を出して自分で録音をして確認するという作業を延々と繰り返しました。録音した数は2000ファイルを超えています。練習をしすぎてどれが正解かわからなくなってきたので、“朝ドラ送り”込みで練習しました。「さあこの後はいよいよ朝ドラ『ブギウギ』のスタートです。どんな始まりなのでしょうか?」という朝ドラ送りから始めて「今から75年前・・・」とナレーションを続けるのが、一番自分の中でうまくできるリズムなんです。

――放送を楽しみにしている視聴者の方々へのメッセージをお願いします。

私が語りでいいのかどうか今も一抹の不安がありますが、新たな“朝ドラ”に向けて自分も新しいチャレンジをさせてもらっています。これまで多くの“朝ドラ送り”をしてきて、“朝ドラ”を見てきた経験から言わせてもらえば、自信を持っておすすめできる作品です。1日の始まりに、ぜひ見ていただきたいです。

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