NTTグループによる保育・学び・ワーク・コミュニティ複合施設として、神奈川県横須賀市に設立された次世代型ICT施設「スカピア」にて、学童小学生を対象としたゲーム開発体験会が開催された。
■学生プログラマーのサポートのもと、ゲーム開発!
体験会には、スカピア内学童施設「Nキッズアカデミー横須賀校」より、小学1~3年生の生徒が参加。横須賀市主催の「横須賀プログラミング“夢”アカデミー」の受講生・卒業生で「YASUULAB(ヤスウラボ)」に所属する学生プログラマーがサポートを行った。
YASUULABは、若手プログラミング人材育成事業を全国展開しているイトナブが運営するITプラットフォーム交流施設。参加した学生プログラマーは、中学生、高校生、専門学校生で、参加する子供たちとも年齢が近く、講師というよりも先輩的なポジションでのサポートを行っていた。
体験会では、イトナブ 教育部 部長の武山将己氏が講師を担当。パソコンを前に、少し緊張気味の子供たちに向かい、まずはゲーム開発ツール「unity」について紹介する。紹介動画を流した後、実際に「unity」を使ってゲーム開発を行った小学生クリエイター兄弟「千葉ブラザーズ」の話や、YASUULABの学生プログラマーが作成したゲームを実際にプレイしてもらうことで、子供たちの興味を引きつけていく。
そしてここから「unity」を使ったゲーム開発を実践。プリセットされたオブジェクトを設置したり、空のデータを入れ替えたりといった簡単な作業ながら、画面上を自分の手で変化させるという初めての体験に、会場のあちらこちらから、喜びや驚きの声が上がっていた。
最後は、マップ上にクリスタルのオブジェクトを設置した宝探しゲームを作成。ほかの参加者が作ったゲームをプレイすることによって、自分たちの手で作ったゲームという実感をより深くし、満足げな表情を浮かべていた。
■スキルを学ぶのではなく楽しさを知る
今回のゲーム開発体験会が実施された「スカピア」のテーマは「未来ある若者の育成」と話す、NTT東日本 神奈川事業部 地域ICT化推進部 シニアコンサルタントの加来良太郎氏。今年5月にYASUULABがオープンした際に横須賀市から紹介されたところから、両者の関係が始まったと振り返る。
当時、地域企業と連携した新しいコンテンツを模索していたという加来氏。ゲーム開発に対する市場価値、市場規模の高まりを感じ、YASUULABと連携した子供向けのゲーム開発教室の開催を企画したという。
一方のYASUULABも、認知拡大の必要性に加え、YASUULABに参加する学生プログラマーのアウトプットの場を求めていたと話すのは、今回の体験会で講師を務めたイトナブ 教育部 部長の武山将己氏。自分たちだけでイベントを開催すると、いかに集客するかが問題となるため、「今回、スカピアさんと組めたことは大きかった」と笑顔を見せる。しかし、その一方で、通常YASUULABでは、中学生・高校生に教えることがメインとなっているため、小学生を相手にどのように教えるのかという課題が残ったという。
その点についても、これまでから小学生向けの教育プログラムを展開していたスカピアにはノウハウがあったので問題なかったという加来氏。「プログラミングを学ぼうと思っても、初めてのお子さんには絶対に意味が分からなくて、楽しいはずのコンテンツが楽しめなくなってしまいます。だから、今回はスキルを学ぶのではなく、自分たちの身近にあるゲームは、自分たちでも開発できるということを知ってもらうことを目的にしました」と提案した内容と振り返る。また、コードを書くなど難しい操作ではなく、色を変えたり、素材を置いたりといった、直感的に楽しめる方向性を模索したという。
実際に体験会を開催してみて、「小学生は素直なので、“楽しい”、“つまらない”をはっきり直接言ってくれるので、自分にとっても良い体験になった」という武山氏。そして、それはサポートを行った学生プログラマーたちも同じで、「彼らにとっても、自分の知識を教える機会ができたことは非常に良かったのではないかと思います」。
「参加した子供たちも非常に楽しんでくれていて、終わった後に『次はいつやるの?』『明日は?』と声を掛けられました」と苦笑いの加来氏。「今回は1時間という短い時間でしたが、2~3時間程度のコースでやってみても面白いかもしれませんね。今後も継続的に開催できるようにYASUULABさんと話をしていきたい」と今回の成功に自信を深めた様子。
「あくまでも初心者の方に興味を持っていただくためのイベントを企画し、そこで興味を持った方が、次はYASUULABさんで本格的に学んでもらえたらいいかなと。そういった循環モデルが作れたら、我々にとっても、YASUULABさんにとっても、横須賀市にとっても喜ばしいことだと思います」(加来氏)
そして、今後も継続して開催することによって、学生プログラマーたちのアウトプットの場をもっと増やしていきたいという武山氏。
「エンジニアとしてコードを書くのはもちろんですが、自分たちが学んだことを教えるということも立派なアウトプットになると思います。だから、自分よりも下の世代の子供たちに教えるという経験をもっと積んでいってほしいですし、その機会をもっと増やしていきたいと思います」(武山氏)
今回のゲーム開発体験会のように、小学生の低学年向けの教育コンテンツを充実させるスカピア。子供向けだけではなく、高齢者に向けたコンテンツも展開しており、今年10月にはアクティブシニア向けロボットプログラミング教室の実施も予定されている。ダンボールでできたロボット「embot」のクラフト工作とプログラミングを体験する教室となっており、全6回、隔週2時間の開催予定(有料)で、現在参加者募集中。こちらもあわせて注目してほしい。