千葉県勝浦市内の店舗や宿泊施設などにおいて8月1日〜31日、観光客向け「デジタルスタンプラリー」が実施されている。どんなイベントなのだろうか。NTT東日本の担当者に聞いた。

スタンプラリーで観光客の周遊と買い物を活性化

このイベントは、勝浦市商工会、勝浦中央商店会、勝浦市、NTT東日本 千葉事業部が連携した取り組み。コロナ禍が落ち着いたことで観光客の大幅な増加が期待される、今年の海水浴シーズンにあわせて実施する運びとなった。NTT東日本 千葉事業部 地域ICT化推進部で千葉県、茨城県エリアのまちづくりコンサルティングなどを担当する豊後碧氏は、デジタルスタンプラリー実施の経緯について「勝浦市商工会からの依頼によるものでした」と明かす。

  • 千葉県勝浦市「デジタルスタンプラリー」

勝浦中央商店会では、かねてより季節に合わせた様々なイベントを開催し、誘客、およびリピーターの創出に努めてきた。そんな「市民の皆さまから愛されてきた商店会」(豊後氏)より依頼を受けたNTT東日本では、従来型の紙ベースのスタンプラリーから脱却した、スマートフォンを用いたデジタルスタンプラリーを提案する。

具体的には、商店会約50店舗および市内宿泊施設9か所にスタンプスポットを設置。各スポットで「QRコード」を読み込むとスタンプを取得でき、スタンプを3つ集めて応募すると抽選で商店会が厳選した豪華景品が当たる仕組みとなっている。スタンプラリーを簡単に構築・開催することが可能な、ボールドライトが提供するサービス「プラチナラリー」を活用した。

  • 千葉県勝浦市「デジタルスタンプラリー」では各スポットのQRコード読み込みでスタンプを取得できる

NTT東日本では、ICT化に向けたデジタルツールの運営支援、および検証の取りまとめ、分析などの側面から支援する。豊後氏は「市内のオススメスポット情報を観光客の手元のスマートフォンに直接届けることで市内の周遊を活性化させ、また匿名の来訪者情報(属性・居住地など)を得ることでリピーターさんを増やしていきます。周辺の宿泊施設にもご協力いただいたことで、観光客の皆さまに個性的で魅力的な勝浦中央商店会の店舗の数々を知っていただけるようになりました。デジタルスタンプラリーをきっかけに勝浦市を丸ごと楽しんでもらえたら、と考えております」と期待を寄せる。

  • 千葉県勝浦市「デジタルスタンプラリー」スタンプスポットと観光スポット

参加手順
(1)「QR コード」からスタンプラリー画面へアクセスする。
(2)各スタンプスポットに設置の「QR コード」を読み取る。
(2)スタンプを3つ集めて景品を応募!
※応募フォームに必要事項を記入し、応募完了となる。
景品
スタンプを3つ集めて応募すると、抽選で商店会厳選の景品がプレゼントされる。
(1)商店会 豪華賞品50名(各品10名ずつ)
・お肉セット
・新米勝浦産こしひかり5kg
・シャインマスカット
・干物詰合せ
・バウムクーヘン
(2)商店会 オリジナルグッズ(トートバッグ等)50名

観光客の「見える化」にも取り組む

ちなみにNTT東日本では昨年(2022年)から、勝浦市を訪れる観光客の「見える化」に取り組んできた。アプリ不要のIoTセンサー「AIBeacon」導入も、その成果のひとつ。スマートフォンのWi-Fiを検知し、匿名のアクセス情報を取得するAIBeaconの導入により、勝浦朝市の来訪者数、来訪回数分布、性別、年代、居住地などの情報が得られるようになったという。

豊後氏は「たとえば『2023かつうらビッグひな祭り』(2023年2月24日~3月3日実施)は4年ぶりの開催となりましたが、AIBeaconで得られた情報を分析した結果、非常に多くの観光客の方に来ていただけたことがわかりました。来訪者の多い時間帯を把握できたことで、より長く滞在していただくための示唆を得ることができました」と成果を振り返った。

そのうえで「テレビなど各メディアで『夏でも猛暑にならずに涼しく過ごせる地域』ということで今話題の勝浦市ですが、AIBeaconなどの技術を活用して、今夏の来訪者も見える化していけたら」と意気込む。なお来年の『2024かつうらビッグひな祭り』(2024年実施予定)でもデジタルスタンプラリーを実施していきたいと話す。


デジタルスタンプラリーの実施が決まるまで、関係者の間では活発な議論があったようだ。豊後氏は「商店会の皆さんが忙しくなる海水浴シーズンに同時開催することになり、企画検討の場では様々な意見が出ました。勝浦市商工会、勝浦中央商店会をはじめとした皆さまの『勝浦市を良くしたい』という熱い想いを感じた次第です。地域のことを考え、意見交換を楽しみつつも真剣に議論する皆さんの姿が印象に残っています」と振り返る。

さて、この4者では今後、どのようなビジョンを描いているのだろうか。豊後氏は「スタンプラリーで得られた各種データ、分析結果をもとに、事業提案をいただいた勝浦市商工会と連携を図り、今後の勝浦中央商店会のイベント企画・立案に活かしていきます。リピーターを含めた来訪者の増加と安定化、周遊の促進、ひいては移住促進(人口増加)と地域経済の拡大を含め、勝浦市全体の賑わいの創出に努めていきます。引き続き、勝浦中央商店会、勝浦市商工会、勝浦市と連携した取り組みを進めていきます」と説明した。