縄文杉で有名な鹿児島県の屋久島にアウディが大挙上陸し、隊列を組んで島を駆け巡った。いったいなぜ?
屋久島と脱炭素の関係とは?
アウディジャパンでは「持続可能な社会に実現の重要性について、一人一人が考えるきっかけを作る場」として「アウディ・サスティナブル・フューチャー・ツアー」を続けている。バイオマス発電を行う岡山県真庭市、地熱発電を行う岩手県八幡平市に続く3回目の舞台となったのが、水力発電で島のほぼ100%近くの電気をカバーする屋久島だ。
屋久島は雨が多い。年間平均降水量は本土の約2倍にあたる4,500mmで、険しい山間部では8,000~1万mmに達するという。林芙美子の小説には、「屋久島は月のうち35日が雨」という一説がある。
一方で、雨水という「水の力」(=再生可能エネルギー)を利用してほぼ全ての電力をまかなう“脱炭素に最も近い島”であることは、意外に知られていない事実だ。これまでと同様、今回のツアーでは稼働中にCO2を排出しない電気自動車(BEV)で島内の訪問ポイントを巡った。クルマは東京と鹿児島から船便で運び込んだものだ。
ツアー初日には、島特産のトビウオの唐揚げでエネルギーをチャージした後、樹齢1,000年の「千年杉」をはじめとした巨木が茂る「ヤクスギランド」を地元のガイドさんとともにトレッキングし、島の自然を体感。次に水力発電の源となる200万トンの水を蓄える島唯一のダム「屋久島電工尾立ダム」を訪問、14キロ先の下流にある「安房川第2発電所」も見学した。特殊なエレベーターに乗って百数十メートルの深さまで地中に降りた巨大な空間では、安房川第1発電所と合計して総発電量5万8,500kWを誇るタービン2基が、900rpmで回転する姿を目の前で見ることができた。
2日目は島で1校だけの公立高校「屋久島高等学校」を訪問。アウディジャパンのブランドディレクターを務めるマティアス・シェーパース氏が出張授業を行い、「CO2排出削減に対して自動車会社は何ができるのか、アウディはそれにどう取り組んでいるのか」などの講義を実施した。授業の後、校庭に置かれたアウディのBEV「e-tron」各モデルの周りに集まった生徒たちは、普段はなかなかお目にかかれない多数の輸入車、しかもそれがすべてBEVという事実に大興奮。見ているこちらが嬉しくなるほど興味津々な様子だった。
さらにシェーパース氏は、アウディの地元ディーラー「ファーレン九州」の金氣重隆社長および屋久島町長の荒木耕治氏との間で、「8kW普通充電器を役場など島内7カ所に設置して、BEVの普及に貢献するインフラ整備のサポートを行う」「ファーレン九州がBEVを使用したレンタカー事業を島内で開始するとともに、公用車/社用車としてBEV2台を貸し出す」「地元高校生が未来を考えるための授業や島外学習を行う機会を提供する」という3つの取り組みを行う旨の包括連携協定を締結した。
シェーパース氏は、「日本でも稀有な脱炭素に最も近い島で、こうしたパートナーシップが実現できたことを大変嬉しく思います。サステナビリティに取り組む屋久島の皆様をサポートさせていただくとともに、さらにさまざまな分野で連携していきたいと考えています」とあいさつ。荒木町長は「屋久島が世界自然遺産に登録されて30年という節目の年に、こうした取り組みに参加できて嬉しく思います。BEVの導入を拡大することで、台風襲来に起因する停電時に車載蓄電池という形で活用したり、さらに充電ステーションを整備したりすることで、非常事態でも電力を供給できるシステムの構築についても考えていきたいと思います」と話していた。