「昼ドラ」を52年にわたり制作してきた東海テレビによる全国ネット連続ドラマ枠は、2016年4月に現在の土曜23時台に移行してから、『テイオーの長い休日』で46作を数える。こちらも2サスに負けず劣らず、サスペンスから社会派、ホラー、コメディ、SFに至るまでバラエティに富んだ作品がラインナップされてきたが、どのような意識で企画を立てているのか。

「各プロデューサーの共通認識として、“日頃光が当たっていないところに、ちゃんと光を当てられる枠に”というのを持っていると思います。GP帯や配信でもどんどんドラマ枠が増えていく中で埋もれないためには、他がやらないことをやらなきゃいけない。本当に“隙間産業”の最たるところですが、名古屋のいちローカル局が唯一持ってる全国ネットのドラマ枠で、1時間弱という決して短くない時間を視聴者の方に頂く以上は、選んでもらえる題材をちゃんと作らなければいけないという意識で、企画ありきで毎回作らせていただいています」

そのため、キャスティングは「この人じゃないと描けない」という決意でオファー。『その女、ジルバ』が9年ぶりの連ドラ主演だった池脇千鶴の場合は、「企画と原作を読んでくださって、『テレビとか時間帯とか関係なく出たい』とおっしゃってくださったんです」と成立したが、最近でも、萬田久子や大地真央など、GP帯のドラマならキャストの最後にクレジットされる“トメ”になるような役者が主演を張る理由は、そこにあるのだ。

■配信でウケやすいテーマでは埋もれてしまう

演者側も、そんな制作スタイルを楽しんでいるそうで、「この前、『限界団地』で主演された佐野史郎さんと『最高のオバハン 中島ハルコ』でご一緒したんですけど、違う現場で『火の粉』に主演されたユースケ(・サンタマリア)さんと土ドラの話題になって、“超大変だけど、すごく楽しい枠だよね”と話していたそうなんです。大地さんも『中島ハルコ』のシーズン3をやりたい、船越さんも今の続編をやりたいと言っていただいて、役者さんたちにとっても、注目していただける枠になったのかなと思います」と手応えを語る。

  • 佐野史郎(左)とユースケ・サンタマリア

『その女、ジルバ』では、「当時87歳の草笛光子さんをはじめ、コロナの真っ最中でも熱い気持ちで現場に来てくださっていたので、おこがましいですが、そんな皆さんの思いを大事にしてこの枠をやり続けるために、改めて何よりも企画を大事に作っていくしかないと思いますね」と決意を新たにしたそう。

近年はTVerでの再生回数も重視されるようになってきたが、「回らないよりは回ったほうがいいと思います」とした上で、「あれだけ社会現象になった『silent』(フジテレビ)も、配信を回すことを第一に作ってないと思うんです。それに、配信でウケやすいテーマ、企画、キャスティングでやっていくと、他の局とバッティングしてしまい、埋もれてしまう懸念のほうが強い。だとしたら、自分たちが“これがベストだ”と思うものを肩が壊れるまで直球で投げ続けるしかないと思います。そうした中でも、『ジルバ』や『中島ハルコ』など、配信でもスマッシュヒットするような作品が幸いにして出てきていますので」と、意識は揺るがない。