今年3月に終了したテレビ朝日のバラエティ番組『タモリ倶楽部』制作チームが、「第39回ATP賞テレビグランプリ」(全日本テレビ番組製作社連盟主催)の特別賞を受賞し、6日に都内のホテルで行われた受賞式にタモリと同番組のスタッフが登壇した。
5月には「第60回ギャラクシー賞」放送批評懇談会60周年記念賞を受賞したタモリは「私、最近褒められ続けておりまして、少々浮いた感じがしてる次第です」と切り出し、「40年前にこの番組が始まるときにうちの社長(田辺エージェンシー・田邊昭知社長)に呼ばれて言われた言葉が、今となってはもう話していいと思うんですけども、『今回やる“タモリ倶楽部”という番組は、今の番組は全て密度を濃くして、編集に編集を重ねて番組を作り出そうとしてるけども、全く逆のスカスカの番組をやれ』と言われたんです。その時はびっくりしました。スカスカの番組ってなんだろう。密度の濃いの反対ということは、間延びしてもいい、爆笑を取らなくてもいい、間違ってもいいと勝手に考えてずっとやってきて、40年が経ってしまいました。いまだに“スカスカ”という意味が分かんないですけど、今で言う“緩い”とか“脱力”とかいうに近いのかなと思ってます」と解釈したという。
しかし、「40年前はこの番組、散々叩かれました。まず『尻を出して下品』というのもありますけど、『素人番組』『省エネ番組』『力抜いてる』『面白くない』という評判でした」と回想。「40年経ってようやくATPから賞をもらえました。というのは、やってる間は絶対に賞をやらせないぞというATPの根性といいますか、そういうものに私は敬意を表します。ありがとうございました」と、皮肉をきかせた挨拶で会場を沸かせた。
その後、司会のNHK佐藤俊吉アナウンサーが「私が生まれた年に始まった番組です」と話すと、「あのときの!」と驚いてみせたタモリ。偽りの再会リアクションで会場を笑わせる中、40年続けられた秘けつを聞かれ、「反省しないことですね。テレビに出る自分が好きじゃなくて、なんかヌメッとして気持ち悪いんですよ。自分は自分のことを良いイメージ持ってないですからね」と謙虚に語り、それでも多くの支持を受けることについては、「これはやっぱり、国民の皆さん懐の広さじゃないですかね。感謝してます」と話した。
演出を担当した山田謙司氏(ハウフルス)は「やっぱりタモリさんの人柄というか、気負わない感じ。それと本当に緩い作りなもんですから、決め込まないでやるということがありまして、2,000回近くやってるので、タモリさんも感じてらっしゃると思いますけど、失敗も多々ありました。失敗をOAしても許されるのは『タモリ倶楽部』ぐらいかなという感じの気持ちでやってきました」と、制作に臨んでいたことを明かす。
最終回の料理企画はタモリ発案だったそうだが、タモリは「番組的に言うと全部大失敗だった(笑)。僕はほとんど企画出さないんですけども、タレントとしては、本当はもう1回撮り直したい(笑)」と吐露。山田氏が「本当は3品作る予定だったんですけど、我々も脇が甘いんで、40年やってても尺が読めなくて、2品で終わったんです」と言うと、タモリは「実際を言うと、1品で1時間収録してました」と打ち明けた。
改めて、番組をやり切ったことについて、山田氏は「感無量ですね。毎週毎週違うことを考えなきゃいけないのもありましたし、大変でもありましたけども、『タモリ倶楽部』は遊びですから、楽しかったです」とその心境を述べた。