永瀬拓矢王座への挑戦権を争う第71期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、挑戦者決定トーナメント2回戦の豊島将之九段―斎藤慎太郎八段戦が6月21日(水)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、102手で勝利した豊島九段がベスト4進出を決めました。

相掛かり腰掛け銀の急戦形

振り駒で先手となった斎藤八段は相掛かりの戦型に誘導。4筋の歩を突いて右銀を腰掛け銀に構えたのは持久戦を思わせる指し方ながら、斎藤八段はここから積極的な作戦を披露します。すぐさまこの銀を五段目に繰り出したのが臨機応変の対応で、後手の豊島九段が角頭の弱点を放置したのをとがめる狙いです。

歩をかすめ取ろうとする銀の進出に対し、豊島九段は自然な金上がりでこれに対応。後続の攻めを急ぎたい斎藤八段は端で入手した香を2筋に据えて飛車先突破を図りますが、ここからの豊島九段の指し回しが秀逸でした。香を成られた瞬間に先手の飛車の前に歩を垂らしたのが「大駒は近づけて受けよ」の格言通りの好手です。

豊島九段が快勝

一時停止を強いられた格好の斎藤八段を尻目に、手番を得た後手の豊島九段は好調な反撃を開始します。五段目に跳ね出した桂は先手玉のコビンをにらむ寄せの好形で、この直後7筋の拠点に香を打ち込んだのも単純ながら厳しい手。形勢は難解ながら、正確な攻守のバランスを見せた豊島九段が徐々にペースをつかんで終盤戦に突入します。

7筋から先手陣を破った豊島九段は駒得を拡大しながら攻めを継続します。終局時刻は21時28分、斎藤八段の粘りを振り払って正確な寄せを決めた豊島九段が勝利。反撃を開始してからは一度も形勢の針を譲らない快勝で、挑戦を決めた前期に続けて2年連続となるベスト4進出を決めました。準決勝では渡辺明九段-石井健太郎六段戦の勝者と対戦します。

  • 豊島九段は今年度7勝1敗と絶好調をキープ(未放映のテレビ対局を除く)(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

    豊島九段は今年度7勝1敗と絶好調をキープ(未放映のテレビ対局を除く)(写真は第6期叡王戦五番勝負第4局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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