『呪怨』シリーズなどでJホラーブームをけん引してきた清水崇監督による『忌怪島/きかいじま』(6月16日公開)は、赤い女“イマジョ”の怨念が解き放たれた孤島で、不可解な連続死が発生していく最新ホラー。西畑大吾(なにわ男子)が、VR研究のために島に来ていた天才脳科学者・片岡友彦役で主演を務める本作で、友彦とともに真相を追うことになる園田環を演じているのが山本美月だ。

「ホラー好き」で「ホラーの現場も好き」と笑顔を見せる山本にインタビュー。主演の西畑の印象や、芸能デビューから15年目の今年、「お仕事はセーブしなければいけないタイミングになっていますが、それもいいきっかけになっています」と語る現在の心境も聞いた。

  • 山本美月 撮影:望月ふみ

    山本美月 撮影:望月ふみ

■ドロドロとした人間関係の描写が多くて、そこがすごく魅力的

――出演が決まったときの率直な感想を教えてください。

ホラー作品には何作か出演させていただいているので、また出させていただけるんだとうれしかったです。ホラーは好きですし、現場も好きなんです。みんなが愛情を持って夢中で作り込んでいる情熱が伝わって来て。特に今回の作品は、人間の怖さがすごく描かれていると感じました。ドロドロとした人間関係の描写が多くて、そこがすごく魅力的だと思いました。

――作り込みというお話が出ました。詳しくは書けませんが、環と少女・リン(當真あみ)が、一緒にある出来事に遭遇する場面があります。ホラー好きとしては、楽しめたシーンなのでは。

そうですね。作り込んだ部分は、撮影の本番まで見せてくれないんです。段取りはするので「ここでこれが動く」といった説明はされるんですけど、リアルにお芝居をするということにこだわっているので、私たちが目撃する“あるもの”も、新鮮な驚きのため本番まで見せないよう配慮した演出をしていただきました。優しいですよね。

――清水監督はどんな方でしたか?

ホラー作品を昔からやられていて、作品を通して清水監督のことは知っていたので、勝手な想像で、最初は怖い方なのかなと思っていたんですけど、全然そんなことなくて、すごく気さくでよくお話してくれました。心霊スポットに行ったお話とかも教えてくださって、楽しかったです。ホラー作品を撮られる監督さんって、怖がりの方と怖がりじゃない方といらっしゃるようなんですけど、清水監督は全然怖がりじゃないです。

■「ああ、西畑くんも人間なんだな」(笑)

――主演の西畑さんの印象を教えてください。

みんなと楽しくされていて、踊ったりしてるときもありましたね。最初は可愛らしいイメージだったんですけど、朝が弱くて、すごい寝癖をつけているのを見て、「ああ、西畑くんも人間なんだな」と思いました(笑)

お芝居では、難しくて長いセリフが一番多いので大変そうでした。プログラミングとか、私にはわからないんですけど、プレッシャーだったと思います。西畑くんが演じた友彦くんと距離が縮まっていく部分に関しては、少し難しかったです。でも清水監督がキャラクターひとりずつの詳しい設定を書いた紙を渡してくださっていたので、友彦くんは人が嫌いなキャラクターですけど、環も不器用な子で、不器用と不器用のぶつかり合いなんだなと思って進めていくことができました。

――そうした資料はやはり大きな助けになりますか。

今回は特に登場人物が多い分、どうしても一人ひとりの描写が少なくならざるを得ません。準備稿の段階では入っていたものも削られていたりするんです。でも、もともとはあった部分や、いただいた細かい設定から、お父さんとの関係や、普段何をしているのかなど考えて役を作っていけました。それがあったので、友彦くんが「人と関わり合いのない世界がいい」と言ったときに、環が「いいかもね、そんなところ見たいな」と返したり、「友彦くんって本当は人のこと好きなんじゃないの?」と投げかけるセリフも、理解して言うことができました。

■本物のハブを見たくて、こっそりナイトツアーに参加!

――奄美大島での撮影だったとか。

すごく気持ちがよかったです。神様が降り立った島と言われているだけあって、パワーを感じました。私、パワースポットに行ってもパワーを感じられないタイプなんですけど、奄美大島は感じました。どこに行っても気持ちがよくて、素晴らしかったです。海もキレイで食べ物もおいしくて。絶対もう一度行きたいです。撮影がお休みの日にはナイトツアーにも参加したんです。ジープに乗ってハブなんかを見に行くんです。マネージャーとこっそり参加しました(笑)。

――ハブ!

行く前から「出るよ」とすごい言われていて。山の水たまりとか草むらにいっぱいいました。襲うために隠れてる感じで。ひとりで山奥とか絶対入っちゃダメですし、水たまりは注意です。

――貴重な体験になりましたね。さて、本作は奄美の自然や“イマジョ”といった超自然的なモノと、VR、メタバースといった最先端の技術の世界が融合した、これまでにない世界観の作品です。山本さんは仮想空間などには詳しいですか?

それが全然分かっていなくて(苦笑)。ニュースなんかで聞くので、どういう感じなんだろうとは思うんですけど。ネットの世界も詳しくないですし、YouTubeとかもハマり切れてなくて。心霊のものを見るくらいで。

――YouTubeでも心霊系を見るんですね。

見ますね。心霊ものとか、あとは昭和的な探検隊ものとか。ネットの世界はよく分からないです。ただ今回はそういう空間と、伝承みたいなものが合わさっているので、そういったものの方がワクワクします。

■自分がそのときにいいなと感じられる状態でいられれば

――芸能界にデビューして15年目です。俳優としてのキャリアも重ねてきて、取り組み方など、何か変化を感じていますか?

今回の作品もそうですが、当然、現場で共演者に年下が増えてくるといった違いはあります。それに昔よりは落ち着いて現場に入れるようになっています。前は周りのことばかり気になって、芝居以外で気が散ってしまっていたんです。でも最近は真摯にお仕事をしていれば、見てる人はちゃんと見てくれていると思えるので、周りのことはあまり気にならなくなりました。

――後輩の方が増えてきたとのことですが、本作しかり、大先輩もいらっしゃいます。

はい。長く活躍されている方はみなさん本当にお人柄もよくて、そういったところも大切だな、見習わなきゃなと毎回思います。今回共演させていただいた吉田妙子さんはご高齢ですが、セリフもお経も完璧で、本当に尊敬しました。笹野高史さんも本当にお優しくて、私、今回の現場で一番お話させていただいたのは笹野さんだと思います。周りにもとても気を使われて、清水監督ともたくさんお話されて、お芝居についても「こういうのどうかな」と、すごく真摯に取り組まれていました。三線の練習もずっとされていて、そうした姿はやっぱり刺激になります。

――山本さんが、これからのご自身に期待していることを教えてください。

妊娠、出産と、少しお仕事はゆっくりになっていますが、それもいいきっかけになっています。自分自身を見つめ直して、自分に合うものや合わないものについてだんだん分かってきました。そうしたことも見極めて、自分の体と心に悪くないものを選んでいけたらいいなと思っています。

先を考えたとき、「こういう俳優さんになりたい」といった具体的な憧れは特に決めていません。自分がそのときにいいなと感じられる状態でいられればそれでいいと思っています。お芝居はもちろん大好きですが、それ以外のことも含めて。

――ありがとうございます。最後に改めて作品のおすすめコメントをひと言お願いします。

この作品の見どころはやっぱり“イマジョ”なので、イマジョ伝説がどうして生まれたのかのくだりがすごく印象に残ります。それから私は笹野さんの役柄が好きです。なにか、ちゃんと人を感じてステキだなと思いました。

■山本美月
1991年7月18日生まれ、福岡県出身。2009年に第1回東京スーパーモデルコンテストでグランプリを獲得し、雑誌『CanCam』の専属モデルとしてデビュー。2011年からは女優活動も開始し、翌年には『桐島、部活やめるってよ』でスクリーンデビューを飾る。ほか主な出演作に、ドラマ『パーフェクトワールド』(19年)、『ランチ合コン探偵』(20年)、『星から来たあなた』(22年)、映画『貞子vs伽椰子』(16年)、『ピーチガール』(17年)、『去年の冬、きみと別れ』(18年)、『ザ・ファブル』シリーズ(19年、21年)など。

(C)2023「忌怪島/きかいじま」製作委員会