ヒューリック杯第95期棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)は、一次予選1回戦の池永天志五段―高田明浩四段戦が6月8日(木)に関西将棋会館にて行われました。対局の結果、軽快な攻めを見せた高田四段が106手で勝利。高田四段は午後の対局で山本真也六段にも勝って予選3回戦進出を決めています。
矢倉の力戦形
池永五段は大阪府出身の30歳。居飛車党で、角換わりをはじめとする最新形に精通することで知られます。対する高田五段は岐阜県出身の20歳。居飛車に主軸を置くオールラウンダーで、定跡形から力戦まで幅広く指しこなします。振り駒が行われた本局、先手となった池永五段は矢倉の戦型に誘導。後手の高田四段は近年流行の中住まい型で応戦します。
池永五段が銀矢倉に組み替えて穏やかな駒組みを目論んだのに対し、高田四段は積極的な仕掛けで主導権をつかみます。軽快な歩の突き捨てで二枚の桂を中央に跳ね出したのは、右玉戦法を得意とする高田四段らしいこなれた指し回し。結局この二枚桂は先手の銀との交換に落ち着きますが、先手陣を乱しながら豊富な持ち駒を蓄えた点が大きな主張点です。
高田四段が攻め切って勝利
手番を握った後手の高田四段は持ち駒の角と銀を生かして猛攻に出ます。先手陣の深いところに角を打ち込んで飛車金両取りをかけたのが部分的な定跡ともいえる好手筋。手順に飛車を奪って先手玉の寄り形が見えてきました。反撃を目指したい先手の池永五段ですが、離れ駒の多い高田四段の布陣には妙にスキがなく、最後までその広さに苦戦した格好です。
終局時刻は12時15分、飛車を手にしてからは順調な攻めで先手玉を寄せきった高田四段が快勝で2回戦に進出。午後の対局ではこの勢いのまま山本真也六段との相掛かり戦も制して藤本渚四段の待つ3回戦への進出を決めました。高田四段は局後にSNSを更新し、5月の加古川青流戦で敗れている藤本四段へのリベンジに意気込みをのぞかせました。
水留 啓(将棋情報局)
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