神社や寺院のおみくじに書かれている「待ち人」の意味について、「心待ちにしている人」と考えると、つい恋愛をイメージしてしまいがちです。しかしおみくじの「待ち人」には実はもっと広い意味があります。
この記事では、「待ち人」の意味や由来の他、「待ち人来ず」「待ち人来る」などの解釈や、おみくじの引き方のマナーを解説します。大吉や小吉といった運勢の順番に、恋愛や縁談など、各項目の意味もまとめました。
おみくじの「待ち人」とは誰のこと? 意味や由来を解説
おみくじには吉凶のみならず、さまざまな項目の運勢が記載されています。その中でも「待ち人」の項目は、どのような人を指しているのか気になる方も多いのではないでしょうか。まずは「待ち人」の意味を紹介します。
「待ち人」の意味・由来
「待ち人」とはもともと、「会いたいと待ち望んでいる人」を表していました。おみくじが人々に広く知られるようになったとされる江戸時代には、当然ながら今のように電話やメールがありませんでした。そのため、家族や大切な人が遠くの町へ出掛けてしまうと、簡単に連絡を取ることができません。
安否確認が簡単にできない状況で、事故に遭っていないかと不安に襲われることが多かったと推測できます。そのような背景から、「無事に帰ってきてほしい人」のことを「待ち人」と呼んでいたといわれています。
「待ち人」は恋愛相手とは限らない! 違いはより対象が広いこと
「待ち人」というと、好きな人や恋人のことを思い浮かべがちですが、おみくじの「待ち人」が指すのは、恋愛相手だけではありません。
将来親友になる人や、仕事上の大きな縁をもたらしてくれる人など、より幅広い対象を指します。
待ち人とは、人生において鍵となる人物のこと
現在でいうところの「待ち人」は、良い方向へ手を差し伸べてくれる人、人生に大きな影響を及ぼす人のことです。すでに知っている人の可能性もあれば、新しく出会う人の可能性もあります。
例えば、将来の方向性に悩んでいるときであれば、そのヒントをくれる先生が待ち人に該当する場合も考えられます。また、転職のきっかけになる会社の先輩が待ち人である場合もあります。人生において鍵となる人物だと覚えておくといいでしょう。
「待ち人」にまつわる言葉の意味
「待ち人」の項目には、よく「来る」「来ず」「たよりあり」といった言葉が記されています。それぞれの意味を知って、おみくじの内容を正しく理解しましょう。
待ち人来る
「待ち人来る」と書いてある場合は、運命が変わるきっかけを与えてくれる人との出会いが期待できるという意味です。
待ち人来ず・待ち人来たらず
「待ち人来ず」や「待ち人来たらず」は文字通り、しばらく運命の人がやってこないという意味になります。
がっかりしすぎずに、現状を改善して待ち人を引き寄せるにはどうすればいいか、自分で考え、行動するきっかけにしてもいいかもしれません。
待ち人来るたよりあり
「たより」とは、「便り」、つまり連絡のことを指します。あなたにとってのキーパーソンから、SNSやメール、手紙、電話などで何かしら連絡が来るかもしれません。
待ち人来ずたよりあり
「待ち人来ずたよりあり」とあった場合は、その人の姿は見えないものの、何らかの形で連絡は来るだろう、という意味です。
待ち人来ずさわりあり
「さわり」は漢字で書くと「障り」ということで、障害がある、邪魔されているといった意味を指します。
待ち人つれがある
「待ち人つれがある」とは、人生に転機をもたらしてくれる人に加えて、誰か別の人が一緒にやってくるという意味です。
またこれには人だけではなく、人生の転機となるきっかけも含まれています。そのため、状況や出来事を伴って来るという可能性もあります。
待ち人来る驚く事あり
「驚く事あり」と記されていれば、待ち人が来るとともに驚くことが待っている可能性を表しています。
「待ち人」「恋愛」「縁談」の違いとは
先ほども少し触れたように、おみくじの「待ち人」が指すのは、恋愛相手だけではありません。
おみくじの項目の「待人」「恋愛」「縁談」の違いを確認しておきましょう。
- 待人:恋愛だけでなく、自分を良い方向に導いてくれる人物や物事が現れるかどうか
- 恋愛:交際をしている相手、片思いの相手を含めた恋愛の行方
- 縁談:結婚や将来一緒に過ごす人との出会いについて
恋人や好きな人にまつわることは「恋愛」の項目を、結婚にまつわることは「縁談」の項目に特に注目するといいでしょう。
そもそも「おみくじ」とは? 意味や引き方の作法を解説
そもそも、おみくじとは何なのか、基礎知識を紹介します。
おみくじの意味・由来
おみくじとは、寺院や神社で吉凶を占うために行うくじのことです。現代では、健康や仕事などについて運勢を占うために利用されていますね。しかしもともとは、国の政治に関する重要な物事を決める際、神様の意志を問うために用いられていました。
現代のおみくじの形は、平安時代の僧侶、元三大師(がんざんだいし)が考え出した占いが起源だといわれています。その占いは、100本のくじが入っている、穴の開いた小さな箱から1本を取り出し、その番号に対応する漢詩によって運勢を占うというものでした。主に、政治を行う者が観音菩薩(ぼさつ)に祈願して、教えを請うために用いられていました。
また、元三大師の住居跡と伝えられる、滋賀県にある比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ)元三大師堂は、おみくじ発祥の地とされています。
おみくじの運勢の順番
おみくじの運勢は、神社や寺院によって順位や解釈が違います。中には凶や大凶を入れない寺院や神社もあるようです。一口におみくじといってもいろいろな種類があるため、気になる場合は神社や寺院の方に直接聞いてみるといいでしょう。
一般的な運勢の順番と意味は次の通りです。
- 大吉:最高の運気。しかしこれから運勢が下がる場合もあるので、謙虚に受け止める必要があります。
- 吉:大吉とまではいきませんが、良い運勢です。
- 中吉:「吉の半分」という意味です。神社や寺院によっては「大吉と吉の中間」という解釈の場合もあります。
- 小吉:可もなく不可もない運勢です。
- 末吉:現状は良くありませんが、末には「末広がり」という意味もあるので、後に吉となるという解釈もあります。
- 凶:良い運勢ではありません。自身の行いを思い返して改善することで、運気は上昇するでしょう。
- 大凶:縁起や運勢が悪いですが、さらに落ちる可能性も否定できません。無理に行動せず嵐が過ぎるのを待つといいでしょう。
ただしおみくじは吉凶よりも、書かれている言葉の内容をしっかり読むことが重要です。
悪い運勢でも明るいメッセージやアドバイスが記されていることもあれば、大吉でも厳しい言葉が書いてある場合もあります。おみくじは単に運勢を占うことを目的として引くのではなく、神様や仏様からのメッセージを頂くことと受け止めて、各言葉を今後の生活に役立てましょう。
おみくじを引くタイミング
初詣や参拝に行った際、おみくじを引くタイミングに迷った経験はありませんか。おみくじは、祀られている神様や仏様にご挨拶をした後に引くのがマナーといわれています。
神社であれば手水(ちょうず)で心身を清め、二礼二拍手一礼の作法でお参りをします。寺院の場合は、手水で心身を清め、両手を静かに合わせお祈りし、一礼します。神社のように拍手はしません。
その後におみくじを引くようにしましょう。
おみくじは持ち帰る? 神社の木に結ぶ?
おみくじを引いた後、持ち帰った方がいいのか、神社や寺院の敷地内の木などに結ぶべきなのか、悩むところですよね。これについて、正式な作法は神社や寺院によって異なります。
一般的には、吉凶に関わらず、持ち帰っても問題ないといわれています。おみくじを持ち帰ることで、内容を見返し、日々の指針とすることができます。
持ち帰らない場合には、神社や寺院の敷地内の、指定の場所に結びます。ただし木の枝など指定外の場所に、無許可で結んで帰るのは避けましょう。
おみくじの各項目とそれぞれの意味
おみくじには待ち人以外にも、学問や健康、住居など、ありとあらゆる項目の良しあしについて記されています。内容を深く理解するためにも、代表的な項目と意味を覚えておきましょう。
- 願望:自分の願いがかなうかどうか
- 走人:自分のところから離れていった人のこと
- 商売:ビジネスや売買に関する運勢
- 失物:紛失物や探し物のこと。物品に限らず、探しているものに出くわすかどうか
- 住居:引っ越しや転居など、住まいに関する良縁があるか
- 旅立:近場、遠出に関わらず、外出や旅行に関する運勢
- 健康:健康や病気に関することや、治るまでの期間について
- 学問:試験や勉強に関する運勢
- 争事:裁判や試合などの争い、人間関係のトラブルについて
- 抱人:雇う人、雇っている人に関する運勢
「待ち人」は人生において鍵となる人物のこと
おみくじの「待ち人」とは、自分の人生において鍵となる人物のことです。恋人に限らず、先生や友人、会社の先輩などの可能性もあります。
また、もし「待ち人来ず」と書かれていたり、凶を引いてしまったりしても、落ち込む必要はありません。神様や仏様からのメッセージを受け取り、自分の行動を振り返って、今後の活動に役立てることが大切です。
「待ち人」の意味を覚えて、おみくじを引いたときに内容を正しく理解できるようにしましょう。