本日4月6日は、ウルトラマンシリーズの人気作『ウルトラマンタロウ』(1973年)第1話「ウルトラの母は太陽のように」放送日である。円谷プロダクション創立10周年記念作品として製作された『タロウ』もついに誕生から50年。つまり円谷プロも今年で創立60周年という節目を迎えることとなる。

  • 『ウルトラマンタロウ』レコードジャケット(著者私物)

「ウルトラ6番目の弟」という触れ込みでスタートした『ウルトラマンタロウ』(TBS/円谷プロ)は、前作『ウルトラマンA(エース)』(1972年)で確立した「ウルトラ兄弟」という魅力的な設定を継承した上で、ウルトラの父、ウルトラの母を加え「ウルトラファミリー」へと発展。いわゆる「特撮もの」「変身ヒーローもの」ジャンルの決定版として製作され、子どもを中心としたファミリー層に強くアピールした。

『ウルトラマンタロウ』が放送された1973年の春は、まさに「特撮変身ヒーロー」がテレビのゴールデンタイムを席巻していたころ。前年の1972年に盛り上がった変身ブームが最大のピークを迎えていたのが、1973年番組改編期の4月だったのだ。

この年に放送されたテレビ特撮ヒーロー作品の特色といえば、「奇抜なアイデアを盛り込んだ作品の増加」と「人気特撮ヒーローのシリーズ化」の2つが挙げられる。前者は前年の特撮怪獣作品、変身ヒーロー作品の人気の高まりを見据え、既存の作品と方向性の異なる斬新なアイデアを詰めこんだ作品が話題を集めた。また、それまでテレビで特撮変身ヒーローを作り出したことのない制作会社が参入した作品が多いのも特徴である。

  • 『流星人間ゾーン』レコードジャケット(著者私物)

『ゴジラ』をはじめとする東宝怪獣映画で手腕をふるった「東宝映像」の特撮チームが日本テレビと組み、テレビの世界に参入した『流星人間ゾーン』(4月2日放送)では、ゴジラ、ガイガン、キングギドラといった東宝の映画スター怪獣のゲスト出演や、宇宙からやってきた一家(ゾーンファミリー)が全員超能力を備え、長男のゾーンファイター、長女のゾーンエンジェル、次男のゾーンジュニアと兄弟ヒーローが活躍する点など、さまざまな独自性で攻めた快作となった。通常は等身大で戦うゾーンファイターが、ガロガ(ガロガバラン星から地球を狙う侵略者)が送り込む恐獣と戦うとき、巨大な姿に変身(ゾーンダブルファイト)するという「二段変身」ギミックは、東洋エージェンシー/ひろみプロ制作の『サンダーマスク』(1972年)のほうが先だったが、戦闘中にエネルギーを消費してピンチになると、エンジェルとジュニアによって頭部アンテナのゾーンマーカーをチェンジし、エネルギーチャージを行うなど、工夫に満ちたヒーローイメージを築き上げている。

独自性といえば、フジテレビ/国際放映の『魔人ハンターミツルギ』(1月~3月放送)がかなりすごい。徳川幕府を狙い、日本征服を狙うサソリ魔人の送り込む怪獣たちに挑むのは、ミツルギ三兄弟(銀河、彗星、月光)が合体変身する巨大神ミツルギ。ミツルギと怪獣たちの戦闘シーンはすべて、ミニチュアモデルをヒトコマずつ動かす「モデルアニメーション」で表現されているのだ。人間が中に入って動かす「着ぐるみ/ぬいぐるみ」方式でないため、4本の足を器用に動かすものや、首を斬られても平気で動いているものなど、人間のシルエットに縛られない奇怪かつユニークなスタイルの怪獣が登場した。

  • 『白獅子仮面』DVDジャケット(著者私物)

フィルム撮影によるテレビドラマの老舗・日本電波の流れを汲む大和企画が日本テレビと組んだ『白獅子仮面』(4~6月放送)は、松竹・京都映画スタッフによる本格的な時代劇として作られており、火焔大魔王が送り込む数々の悪い妖怪たちに挑む、剣兵馬/白獅子仮面の活躍を描いた。本作では、一つ目小僧、からかさお化け、三つ目入道、河童といった古典的な妖怪が、思わぬ特殊能力で迫ってくる痛快アクションが見どころとなり、子ども向け時代劇としてサービス満点、申し分のない内容となっている。

  • 『スーパーロボット レッドバロン』レコードジャケット(著者私物)

『シルバー仮面ジャイアント』(1971年)『アイアンキング』(1972年)など、巨大特撮ヒーローの名作を生み出した宣弘社は日本テレビと共に、1973年に実写巨大ロボットアクション作品『スーパーロボット レッドバロン』を制作した。初期ウルトラシリーズの流れを汲む「日本現代企画」スタッフによる卓越したビジュアルセンスで命を吹き込まれたレッドバロンや鉄面党ロボットたちの個性(デザイン:野口竜)、レッドバロンの武器発射プロセスなどに見られるこだわり抜いたメカニック描写の数々、地球を守るSSIメンバーの愛すべき人間味と、独特な魅力を打ち出した。