もはやハイブリッド車(HV)であることも低燃費であることも強みにならない令和5年に、コモディティ化することを拒み、「愛車」となることを目指して登場した5代目の新型「プリウス」。売り物は「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」だが、実際のところ、エコカーのプリウスに走りは期待できるのか。プラグインハイブリッド車(PHEV)バージョンにサーキットで乗ってきた。

  • トヨタの新型「プリウス」

    新型「プリウス PHEV」のプロトタイプで袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県袖ケ浦市)を攻めてみた!

「プリウス」の新旧PHEVを乗り比べ

新型プリウスのHVバージョン(2.0Lと1.8L)は1月10日に発売済み。今回は、3月の発売を予定するPHEVのプロトタイプに試乗した。

  • トヨタの新型「プリウス」
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  • PHEVは新型「プリウス」のハイパフォーマンスモデルという位置づけだ

新型プリウス PHEVが搭載するパワートレインは最高出力111kW(151PS)/6,000rpm、最大トルク188Nm/4,400~5,200rpmの「M20A-FXS」型2.0L直列4気筒エンジンに、120kW(163PS)/208Nmを発生するフロントモーターを組み合わせる。システム最高出力は164kW(223PS)だ。この数字、72kW(98PS)/142Nmの1.8Lエンジンと53kW(72PS)/163Nmのモーターを組み合わせた先代プリウス PHV(最高122PS)の約2倍となる。

新型プリウスの2.0L HVがFFで144kW(196PS)、4WDの「E-Four」で146kW(199PS)だから、PHEVの力強さが際立つ。まさに新型プリウスのハイパフォーマンスモデルと呼ぶにふさわしい動力性能だ。搭載するリチウムイオンバッテリーの容量は、先代の25Ahから51Ahに倍増。EV走行距離は50%以上向上していて、90km前後まで電気だけで走ることができるようになっている。日常の買い物や通勤であれば電気だけで十分にこなせるはずだ。

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    新型「プリウス」が搭載するPHEVシステムの概要

試乗は新型と旧型のPHEVモデルを乗り比べる形で行った。ラップはそれぞれ3周。1周目はEVモード、2周目はハイブリッドモード、3周目は好みのモードで、という形式だった。2週目までは最高80km/h程度、ラストラップはもう少し加速してみた。

  • トヨタの新型「プリウス」
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  • 左が新型「プリウス PHEV」、右が先代「プリウス PHV」

まずは新型だ。シフトレバー下側のモードスイッチでEVを選んでスタートすると、モーター走行らしい静かで滑らかな加速感が体感できる。車体の動きには、これまでのプリウスではあまり感じることがなかったどっしりとした落ち着きがあり、なかなかいい感じだ。

2周目はHVモードに変更。従来型では少しアクセルを踏み込むとすぐにエンジンがかかってしまっていたが、新型はHVモードでもむやみにエンジンが始動しないように調教されている。回生力の調整は3段階。ただし、モニター画面を呼び出して調整するタイプ(回生を調整するパドルやダイヤルなどは付いていない)なので、走行中に変更するのはちょっと難しい。ならば、シフトレバーで「B」モード(回生が強くなる)を選んでしまうのが早そうだ。アクセルペダルがオルガン式になったので、車速はコントロールしやすい。ブレーキユニットの構造も変わっているのだが、回生と摩擦ブレーキの協調がよくなり、減速も剛性感と一定感があって思い通りだ。

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  • 新型「プリウス PHEV」の車内

3周目はスピードを上げて加速性能やコーナリング性能を試してみる。中央部にスピードダウンのためのシケインが設けられたストレートを抜けた後、上り坂でアクセルを深く踏み込んでみると、さすがにエンジンはすぐにかかってしまったものの、そのエンジン音は後に乗った従来型に比べ、バリトンのような低音域が強調された音質になっている。音量とともに、音質のプアな感じも抑えられているようだ。シケインからシケインまでの到達スピードも比べてみたのだが、新型の方が10km/hほど高い。それもそのはず、新型プリウス PHEVの0~100km/h加速は6.7秒で、ちょっとしたスポーツカー並みの瞬発力を持っているのだ。

パドック裏に向かっていく下り坂の複合コーナー(100R→70R→60R)に高いスピードを保ったまま入っていくと、新型は車体の重さを感じさせつつグッとロールしながらも、しれっと回り切ってしまう。同じ場所でも先代の場合はタイヤを鳴らしてしまっていたので、新型の安定感は抜群だ。50mm伸びたホイールベースや20mm広がったトレッド、30mm低くなった全高とともに、同じ195のタイヤ幅ながら19インチに大径化して接地面積が増えた細幅大径タイヤ(ヨコハマブルーアースGT AE51)、ラゲージ下からリアシート下部にバッテリーの搭載位置を変更したことで得られる低重心化など、多くの要素がしっかりと効果を発揮している証拠だ。ちなみに、バッテリー移動の恩恵によりラゲージの床面が低くなったので、新型では荷室のスペースも広くなっている。

まあ、旧型は旧型で、ショートホイールベースや軽い車体をいかした楽しい走りが味わえたのだが、やはり進化は歴然。乗り比べると、新型のよさは残酷なほどはっきりと伝わってきた。

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    走りだけではなく、荷室容量もよくなっている新型「プリウス PHEV」

PHEVに試乗した後、サーキット周辺の公道でHVのFFと4WDを乗り比べたのだが、個人的には後者の方が好印象だった。本当であれば、新型プリウス PHEVにも「E-Four」モデルがあればもっとよかったのだが、今回はリアアクスルの近くに大きなモーターを搭載したことで、さらにリアモーターまで詰め込むスペースはなかったとのことだ。ラゲージの床面をもっと高い位置にしてモーターを積む手もあったはずだが、そうしてしまうといろいろな意味でバランスが崩れるし、現実的ではないのだろう。

それでも、PHEVモデルはプレミアム感もあり、速くて静か。新型プリウスのトップモデルであることは間違いない。