トヨタ自動車の新型「プリウス」についてはさまざまな意見があるようだが、SNSなどを見ているとデザインについてはおおむね好評な様子。興味はあるけど納期が気になるという人もちらほら見かける。今回はプリウスの試乗会に参加できたので、トヨタ広報に気になることを聞いてみた。
イメチェンは成功したのか
プリウスは「世界初の量産ハイブリッドカー」として1997年に発売となったトヨタのロングセラーカー。これまでにグローバルで累計505万台を販売した人気車種で、世の中にエコカーとしてのハイブリッド車(HV)の実力を印象付けた画期的な1台だ。今回の新型は5世代目となる。
そんなプリウスも、今回のモデルチェンジではキャラクター設定に悩んだらしい。というのも、今やHVは自動車メーカー各車が取り扱う当たり前のクルマになってしまっているし、トヨタ車のラインアップを見ても、「カローラ」を筆頭にHVの選択肢は驚くほどの充実ぶりだからだ。もはやHVであることや低燃費であることが特徴にならない世の中で、新型プリウスは何で勝負するのか。これが問題だった。
HV=エコカーとしてのプリウスについては「やりきった」というのが、おそらくトヨタの実感だったのではないだろうか。豊田章男社長からはプリウスのモデルチェンジにあたり、いっそのこと「タクシー専用車にしては?」との提案まで飛び出したそうだ。
プリウスをコモディティ化するのか、それとも別の道を探すのか。新型プリウス開発陣が導き出した答えは、プリウスを「愛車として選んでもらえるクルマ」にすることだった。こだわったのは「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」だ。
開発陣に話を聞くと、新型プリウスはデザインから決まっていったクルマであるらしい。デザイナーのやりたいことをなるべく邪魔せず、いかに燃費を含めた性能を担保するか。そのあたりが開発陣のチャレンジになったようだ。
例えばホイールのサイズは、先代プリウスが15インチor17インチであったのに対し、新型では17インチ(UとX)or19インチ(ZとG)へと大幅に拡大している。空力性能を示すCd値についても、デザイン変更により数値上は悪化しているという。このあたり、プリウスがエコカーであり続けるつもりなら許容できない「改悪」といえそうだが、今回の新型が目指したのは「愛車」であり、そうであるなら「魅力的な個性」や「普遍的な美しさ」が不可欠ということで、これまでのプリウス像とは一線を画す今回のデザインができあがったそうだ。
ちなみに、デザインは大幅に変わったのに燃費性能は先代より向上している。伝統の低燃費を維持しつつ、システム最高出力を先代比1.6倍の196PS(HVの値)に向上させ、加速性能を引き上げた。基本骨格は「第2世代TNGAプラットフォーム」に進化しており、ハンドリングや応答性についても進化を遂げているとのことだ。
プリウスのイメージチェンジは新しい(若い?)客に響くかもしれないが、これまでのユーザーからは反発を招きかねないギャンブル的な側面もある。初期受注が何台くらいに達しているのか非常に興味があったのでトヨタ広報に聞いてみると、「好評なんですが、具体的な数字はいえないんです」とあっさりかわされた。これまでであれば、「受注開始から○週間で○万台」といった感じの数字を教えてもらえたものなのだが……。ちなみに「月販基準台数」は4,300台とのことだ。
では納期はどうなのだろうか。オーダーがたくさん積み上がっているのであれば、半年や1年は待たされるのでは? このあたりについてトヨタ広報は「一概にはいえないんです」とする。
というのも、トヨタでは新型プリウスの生産枠(いつまでに何台を生産できるか)を前もって割り出し、その生産枠を販売店に(系列ごとに)割り当てる、という手法をとっているのだという。なので、A系列の販売店では「納車まで半年」であったとしても、B系列の販売店では「来月にも納車可能」といったような事態も起こりうるとのことだった。半導体不足などの影響で生産状況を先の先まで見通すことが難しいので、確実に作れる台数を販売店に伝えて注文を取るという手法を試しているらしい。
だから新型プリウスが欲しいという人は、近くの販売店で納期を聞いてがっかりするような結果だったとしてもあきらめず、別の系列店にも問い合わせをしてみた方がいい。それと、クルマのサブスク「KINTO」では、KINTO専用の生産計画のもと新型プリウスを全国展開しているので、こちらで申し込んだ方が早くクルマが手元に届く可能性もある。