渡辺明棋王に藤井聡太竜王が挑戦する第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は、第1局が2月5日(日)に長野県長野市の「長野ホテル犀北館」で行われました。対局の結果、125手で勝利した藤井竜王が六冠達成に向けて好スタートを切りました。
角換わり腰掛け銀の定跡形
振り駒が行われた本局、先手となった藤井竜王は角換わり腰掛け銀の序盤戦を志向しました。藤井竜王が9筋の歩を突いたとき、これを放置して銀を中央に腰掛けたのが後手の渡辺棋王の作戦。渡辺棋王としては後手番ながら積極的に局面を動かす狙いを持っています。先手が6筋の歩を突く前に渡辺棋王が桂を五段目に跳ね出して、対局開始から15分ほどで早くも戦端が開かれました。
渡辺棋王の先攻を受けた藤井竜王は、これに対し丁寧に面倒を見る指し方を採ります。このあたりは藤井竜王は4年前、渡辺棋王は2年前にともに公式戦で経験している形ということもあり、両者速いペースで指し手が進んでいきました。渡辺棋王が自陣三段目から突き上げた端歩には放置する手も考えられましたが、藤井竜王はここも素直に歩を取って後手からの攻めを待ちます。
渡辺棋王の用意と藤井竜王の長考
先手の藤井竜王が9筋に歩を成って手を渡したとき、6筋の歩をぶつけて争点を作りに行ったのが後手の渡辺棋王が用意していた一着でした。ここは手が広く「どれも一局」となりやすい局面なだけに、自分だけ深く研究している形に誘導するという渡辺棋王の勝負術が見て取れました。この手を見た藤井竜王は本局初の長考となる51分を記録して対策を練ります。
6筋の折衝を収めた藤井竜王は、飛車先から歩頭の桂捨ての手筋を放って反撃を開始します。右辺から攻めると見せつつ、昼食休憩をはさんで今度は盤面左方のと金を活用したのが継続手。9筋で手にした香をさらに盤面右方に活用するという構想に従って、盤上には藤井竜王の流れるような攻めが展開していきます。
藤井竜王が盤石の勝利で先勝
盤面右方にできた藤井竜王のと金が渡辺玉を脅かしているのが大きく、局面は藤井竜王有利となって終盤戦に突入しています。形勢容易ならずと見た後手の渡辺棋王が馬を切って金と刺し違えたのは6筋の飛車を生かして先手玉を狙う勝負手でしたが、藤井竜王もこれに対して王手で後手玉を6筋に呼んで後手の飛車の働きを弱めつつ攻めを継続する冷静な対応を用意していました。
渡辺棋王の勝負手をかわした藤井竜王は、手にした持ち駒を使って最後の攻撃に出ます。終局時刻は19時1分、攻防ともに見込みなしと認めた渡辺棋王が投了を告げて熱戦に幕が下ろされました。勝った藤井竜王は自身初となる六冠獲得に向けて好スタートを切りました。一方、敗れた渡辺棋王は「狭い範囲にあった勝負所をサッと過ぎてしまった」と悔しさをにじませました。
注目の第2局は2月18日(土)に石川県金沢市の「北國新聞会館」にて行われます。
水留啓(将棋情報局)