藤井聡太竜王の師匠・杉本昌隆八段は、東海地方への将棋普及に尽力した名門・板谷一門の系譜にあたります。この系譜を継いだ杉本昌隆門下は、家族のように仲よしで知られています。普段の集まりでの話やあまり表に出ないオフのときの話、藤井竜王のエピソードを姉弟子、妹弟子である室田伊緒女流二段と中澤沙耶女流二段が語ります。(本インタビューは、2023年1月31日に日本将棋連盟から発売された『藤井聡太BOOK2023―不敗の王者が望む盤上の景色』から一部を抜粋したものです)
――普段はどう呼んでいるんですか。
室田 昔はそうちゃん。今は藤井くんです。
中澤 私ももうそうちゃんとは呼べないなー。
室田 呼んでみてよ(笑)。
中澤 いやー(笑)。もう解説会とかで藤井先生って言うのが習慣づいちゃって。直接会った時はアイコンタクトで話しかけるから名前呼ぶこともないです。
室田 向こうからも名前で呼ばれないよね。二人で話している時は沙耶ちゃんのこと中澤さんって言ってたよ。
中澤 伊緒ちゃんのこと何て言ってたかは覚えてないな。
室田 裏で何て呼んでるか今度聞いてみて。
――ちなみに室田女流二段の「女帝」という愛称はどこから?
室田 糸谷さん(哲郎八段)が言い出しました。私は認めてません!
――藤井竜王に愛称をつけるなら?
室田 えーなんだろう。足が速いからそれにちなんだ名前?
中澤 異次元?って感じかな。アニメとか創作を超えているから。
――杉本一門は新年会をされていると伺いました。
室田 私が入門する前からやっていました。前はみんなで将棋指してお鍋を食べていましたが、今はこのご時世なのでお鍋はやっていないです。少し前は藤井竜王相手に、三段優先で順番順番に対戦していました。
中澤 以前は普通にグットッパーで分かれて対局していましたね。
――ぐっとっぱー?
中澤 えっ言わないですか??
室田 私はグッピーラムネだった。みんなよくわからず出してたかも(笑)。私が入門した時は4人だったんですが、今は10人以上になったので、2日に分けて指したりしていました。
中澤 今年は日程をずらしての開催でしたが、藤井竜王はお正月に高崎(上州将棋祭り)にいくし、その後も王将戦と忙しいので参加できないですね。
室田 4日に奨励会もあり、今年は開催自体がぎりぎりまで未定で。やらなかったら「損だよね」と藤井竜王が話していました。20歳以下の門下生には師匠が毎年お年玉をあげていたんですが、会がなかったらもらえないから。自分は去年最後のお年玉をもらっていたから「セーフ」って。
『藤井聡太BOOK2023―不敗の王者が望む盤上の景色』(発売・日本将棋連盟)掲載内容、巻頭カラー「写真で振り返る藤井聡太の2022年」、木村一基九段が語る「羽生世代と藤井世代―読み? 研究? 激変する将棋の価値観」、藤井聡太を追う者たち―高見泰地七段、佐々木大地七段、増田康宏六段の実力派若手3棋士のインタビューほか。