先月、人と組織に関する研究機関「リクルートワークス研究所」が民間企業における、2024年卒の新卒者を対象とした採用見通しに関する調査を発表した。
前年に続き、大手を中心に採用意欲が回復
同所の調査による2024年卒の新卒採用の見通しについて、リクルートワークス研究所、研究員アナリストの茂木博之さんは「2年連続で、大手企業を中心に採用意欲が大幅に回復した」と述べ、次のように解説した。
「前年と比較すると、新卒採用が『増える』企業の割合が15.5%であり、『減る』は3.6%。『増えるー減る』のポイントは+11.9%ポイントとなり、2023年卒の+7.0%ポイントからさらにプラスの幅が増加。また、「わからない」が2023年卒の24.1%から22.6%へ−1.5%ポイントと2年連続で減少しました」。
すべての業種で採用意欲が回復
業種別に見ると、どういう変化があったのだろうか。
「業種別では、全ての業種において『増える』が『減る』を上回りました。特に『増えるー減る』のポイントが大きい業種は、情報通信業(+19.3%ポイント)、飲食店・宿泊業(+17.1%ポイント)、卸売業(+13.9%ポイント)、機械器具製造業(+13.2%ポイント)、金融・保険業(+13.2%ポイント)などとなりました」と説明。
新卒採用の経年比較推移での特徴としては、「『増えるー減る』は+11.9%ポイントで、コロナ禍による景況感の悪化のために、2022年卒は、10年間続いた採用増加傾向が途絶えて、久しぶりに−3.9%ポイントになりました。しかし、2023年卒はコロナ禍による採用意欲の停滞からの反動で一転して、プラスになり、2024年卒はさらに採用意欲が回復し、『増えるー減る』のポイントは比較可能な2011年卒以来、最大ということになっています。なお、『増えるー減る』のポイントの伸び幅は、2023年卒の7.0%ポイントから11.9%ポイントの差分をとって+4.9%ポイントとなり、これは2012年卒のリーマンショックが終わった時の+5.6%ポイントに次ぐ数字。これを茂木さんは「大きな回復だと捉えている」と言及した。
すべての従業員規模において、初任給の引き上げ進む
2024年卒採用のトピックスに挙げている初任給の引き上げについても、特徴的な結果が出ているようだ。
「初任給の引き上げを実施、または予定しているという質問に対して、『既に取り組んでいる』企業の割合は27.8%、『今後取り組む予定である』企業は27.1%となり、合わせて54.9%の企業が初任給の引き上げを実施、もしくは予定している。前年の44.5%から+10.4%ポイントと大きく増加しました」
また「5,000人以上の企業において、積極的な初任給の引き上げが63.5%と最も高いものの、300人未満の企業も46.6%と中小企業にも、その傾向は波及している可能性がある」と茂木さんは示唆した。
過去10年間で最も低い充足率
最後に、2023年卒の新卒採用の充足率について説明があった。
「2022年10月1日時点での充足率(=2022年10月1日時点での内定数÷2022年4月時点の採用予定数)は78.5%で、過去10年間で最も低い水準で、全体では計画通りに採用が進んでいない結果となりました。
従業員規模別では、充足率は5,000人以上の企業が98.7%、1,000~4,999人の企業が90.1%となっており、5~299人の企業と300~999人の企業ではそれぞれ、65.5%、84.8%と低い水準にとどまっています。規模が大きい企業ほど計画通りの採用を行うという傾向は前年と同様ですが、前年と比較するとすべての従業員規模で充足率が減少し、採用意欲の急速な回復に対して、実績が追いついていないのが分かります。
業種別では、金融業が63.7%と最も低く2022年卒と比較すると、96.0%から63.7%へ、-32.3%ポイント大きく減少。また、建設業について充足率が54.2%から67.0%と、12.8%ポイント増加しました。建設業は2022年2月時点での採用予定人数も+3.0%と増加したことを踏まえると、初任給の引き上げなどで採用力が高まった可能性があります」。
このように、2023年卒の新卒採用の充足率が低いこともあり、2024年卒での新卒採用の増加は大いに期待できそうだ。