• 『Nドキュポケット』 (C)NTV

通常30分、拡大版の場合は55分の番組を3~5分のサイズにするにあたって意識する点を、「単なるダイジェストにせず、1本の作品としてちゃんとストーリーが分かるようにしています」と解説するのは、編集を担当する斉藤真也ディレクター。

その上で、「テレビ番組は、最後に大きな出来事が起きることが多いんですけども、スマホで見る動画は平均8秒で飽きられると言われるので、そこで脱落されないために、必ず頭に山場を持ってきます。そして、ドキュメンタリーでは“間”が大切だと思うのですが、間を作らずに次々に展開していく形にしています」(斉藤D)とのこと。最初はナレーターも苦労していたそうだが、「だんだん慣れてきて、通常だと5秒に入らないだろうという尺もうまく読めるテクニックを身に着けてくれました」(同)と、プロの仕事を果たしている。

本編のドキュメンタリーを担当したディレクターが編集すると、どの場面にも愛着があるため、ここまでの短尺に凝縮するのは困難な作業。だからこそ、第三者の視点で斉藤Dが編集する意味があるのだという。

今村Pは「斉藤がドキュメンタリーの本質をしっかり押さえて編集するので、系列局のディレクターさんからは、安心して預けていただきます。自分の作ったものがまた違う動画になって、例えて言うなら、さっきまで食べていた鍋が、リゾットになったような感じで、『こうなるんですね!』と驚きと喜びの反応が多いです」と明かした。

また、作品のクオリティにこだわっており、パソコン上の簡易な作業ではなく、『NNNドキュメント』本編と同じ編集室を借りてMA(音編集)を実施。「若いミキサー(スタッフ)が、スマホで見るのに最適な音を意識してミックス(編集)をしてくれています。イヤホンでもグイグイ見てしまうような編集を勉強してくれているので、普通の番組ではディレクターの指示を受けて作業するのですが、『Nドキュポケット』に関しては彼らに任せているんです。それによる見やすさや安定感も、再生回数や完走率の高さにつながっていると思います」(今村P)と信頼を寄せている。

■リスク覚悟もコメント欄開放で称賛の声続々

誹謗中傷のリスクもあるが、YouTubeのコメント欄を開放する選択をとった。アンチのコメントが増えたら閉鎖するという体制をとっているものの、実際には多くが称賛の声で占められている。また、取材対象者にYouTubeでの配信を辞退されるケースはほとんどないといい、そこは、取材時からのディレクターとの信頼関係も大きいようだ。

今村Pは「全国放送されても、取材対象者への反応というのは周囲の人に『良かったよ』と言われたり、ディレクターに『ありがとうございました』と言われるくらいだったと思うのですが、日曜深夜の放送では限定的だった視聴対象が広がり、YouTubeだと全国、全世界からコメントが届くんですよ。そうすると、『あなたの頑張っている姿を、うちの学校で講演してぜひ伝えてください』とか、『こんなチャレンジをしてみませんか?』とか、ここからまた新しいストーリーが始まるんです」と話し、取材対象者にとってチャンスが広がる可能性も秘めている。