里見香奈女流王座に加藤桃子女流三段が挑戦する第12期リコー杯女流王座戦五番勝負は、第2局が12月6日(火)に岐阜県岐阜市の「十八楼」で行われました。対局の結果、115手で勝った加藤女流三段が通算成績を1勝1敗のタイに戻しました。
里見女流王座のゴキゲン中飛車
先手となった加藤女流三段は角道を開けないまま飛車先の歩を突いていきます。後手の里見女流王座が3筋に角を上がらない趣向を見せたため、加藤女流三段はそのまま飛車先の歩を交換することに成功しました。里見女流王座が見せたこの指し方は両者の間で戦われた8月の清麗戦に前例があり、ゴキゲン中飛車対超速の研究勝負を外す狙いがあると考えられます。
前述の対局では早めに3筋の歩を突いていた加藤女流三段ですが、本局では舟囲いの完成を急ぎます。反対に里見女流王座が3筋の位を取って石田流の布陣への組み換えを見せたとき、すぐさま同じ筋の歩を突き返して反発していったのが加藤女流三段の用意した構想でした。これに対して里見女流王座が5筋の歩交換に出たことで、局面は大きく動き始めました。
加藤女流三段の構想実る
5筋での折衝ののち、里見女流王座は△5六歩と打って攻めの拠点を作ります。これを見た加藤女流三段は、右の金銀を力強く前進させてこの歩を取ってしまう方針を立てました。ここまで里見女流王座が40分を消費しているのに対して加藤女流三段の消費時間は10分ほどで、加藤女流三段がある程度までこの展開を予期していたことがうかがわれます。
歩得に成功した加藤女流三段は、中段に構えた金銀を使って後手の飛車角を押さえ込む展開に乗り出します。ここに至って、序盤から角道を開けてこなかった加藤女流三段の狙いが明らかになってきました。大駒の華麗なさばきを得意とする里見女流王座としては自慢の武器を封じられた格好で、形勢も加藤女流三段が有利の時間が続きました。
加藤女流三段が押し切ってタイに戻す
盤面右方での小競り合いが続き、やがて局面は持久戦に落ち着きます。盤上では、大駒のさばきに苦労する里見女流王座に対して加藤女流三段は桂得の戦果を挙げました。さらに9筋での端攻めを起点に、後手玉に対して楔の桂を打ちこむことに成功します。里見女流王座が悩まし気な受けを連発して局面の複雑化を図るなか、加藤女流三段は今度は方針を転換して積極的な駒交換に打って出ました。里見女流王座としては先に打たれた楔の桂が自玉の目の上のたんこぶで、強い戦いに出られません。
このあと多少の予定変更があり一度は形勢がもつれたものの、加藤女流三段はここを踏みとどまってゆっくりながら確実に後手玉への寄せの準備を整えていきます。5筋に作った馬を銀打ちで追い返されたとき、この馬をスパッと切って寄せに出たのが加藤女流三段の勝着になりました。最後は一度打った銀を再度活用する味のいい寄せで玉を仕留め、追いすがる里見女流王座を振り切りました。
局後、勝った加藤女流三段は「端の対処が難しくずっと難解だった」、敗れた里見女流王座は「少しミスが多い将棋で、序盤も苦しかった」と振り返りました。これで五番勝負は1勝1敗の振り出しに。注目の第3局は12月13日(火)に東京・将棋会館で行われます。
水留啓(将棋情報局)