日産自動車が新型「セレナ」を発表した。ガソリンエンジン車は2022年冬、ハイブリッドの「e-POWER」搭載車は2023年春に発売する予定だ。「ノート」や「エクストレイル」はe-POWERのみのラインアップとなったが、セレナにガソリンエンジンを残した理由とは。e-POWERに「待望の」(日産いわく)8人乗り仕様が追加となったが、そこまで需要があるものなのか。気になることを日産に聞いた。
最上位グレード「ルキシオン」が新登場
セレナは1991年に初代が登場した日産のミニバンだ。新型で6世代目となる。このクルマを日産は「日本事業を支えるコアモデル」に位置付けている。日本における日産車の販売構成比でセレナは約15%を占める。
新型セレナのガソリンエンジン車は「X」「XV」「ハイウェイスターV」の3グレード展開で276.87万円~326.92万円。e-POWERは「X」「XV」「ハイウェイスターV」「ルキシオン」(LUXION)の4グレードで319.88万円~479.82万円だ。
e-POWERは新開発の1.4L専用エンジンを組み合わせた第2世代。エンジンで発電してモーターで走る仕組みで、モーターは最高出力120kW(先代比20%アップ)、最大トルク315Nmだ。セレナ自体の遮音性能が上がっているうえ、e-POWERはなるべくエンジンを作動させないような制御となっているので静粛性は高い。ナビで目的地を設定すると、目的地付近では自動的にEV走行(エンジンを回さずバッテリーの電気だけで走る)してくれる世界初の機能も搭載している。自宅付近の住宅地など、目的地周辺を静かに走れる新機能は便利そうだ。
アクセルペダルの操作だけで自在な加減速が楽しめる「e-Pedal step」はミニバン専用にチューニング。実際に使ってみるとアクセルオフ時の減速がかなり鋭く、けっこうなスピードでコーナーに侵入しても十分な減速が得られた。これならブレーキペダルに踏みかえる頻度が大幅に少なくなり、足の負担も減るはずだ。
e-POWERで8人乗り仕様が選べるようになったことも新型セレナのトピック。事前取材でセレナ開発陣が「e-POWERに待望の8人乗りが追加」と話していたので、少子高齢化の日本で8人も乗れるクルマに需要があるのかと気になったのだが、聞いてみると、「先代セレナ e-POWERを発売した時、お客様から『なぜ8人乗りが選べないの?』というお声を頂戴した」とのこと。ファミリーカーのセレナだが、例えば子供が少年野球をやっていたり、サッカーチームに所属していたりすると、チームメイトも乗せて移動する「クルマ当番」が回ってくることがあるそうで、そういう場合にはできるだけ多く人が乗せられるクルマが人気だし、そういうクルマを持っている親御さんは重宝がられるのだという。
ところで、日産車ではここ最近、ガソリンエンジン車をラインアップせず、パワートレインをe-POWERのみとする車が増えている。「ノート」「エクストレイル」「キックス」などだ。新型セレナはe-POWERとガソリンエンジンの2本立てだが、なぜなのか。
開発陣によれば「セレナはミニバンなので、お客様はファミリー層が中心です。子供が生まれれば何かと物いりになるので、なるべく車両価格を下げたいと考え、ガソリンエンジンも残しました。ノートはそもそもの車両価格が低いので、(e-POWERのみにするという)思い切ったことができたのだと思います」とのことだった。
価格については新グレードのルクシオンがとびぬけて高く見えるが、このグレードは「ナビもプロパイロット2.0も標準装備ですし、ほかにもいろいろな装備を標準で付けています。ハイウェイスターVはナビが付いていない状態の価格ですから、ここにオプションを付けていくと、ルクシオンとの価格差はそこまで大きくならないんです」との話が聞けた。