三菱地所と東京藝術大学が主催するアートイベント「藝大アーツイン丸の内2022」が、10月23 日(各日11時~20時)まで開催されている。東京藝術大学で研鑽を積み、「三菱地所賞」を受賞した12名の新進気鋭の若手アーティストによる受賞記念展示と公演を実施する本イベント。初日の17日にオープニング・セレモニーが実施され、丸ビルで「三菱地所賞」の授与式が執り行われた。
■街づくりでアートを重視する三菱地所
「藝大アーツイン丸の内」は、将来の飛躍が期待される若手芸術家に「三菱地所賞」を授与し、丸の内を舞台にその作品や演奏を広く社会に紹介する取り組み。今年で16回目の開催を迎え、「三菱地所賞」を受賞したアーティストが放つ多彩な作品などを楽しめる。
「三菱地所賞」は若手芸術家を支援するため、東京藝術大学を優秀な成績で卒業したアーティストの中から、丸の内より発信する文化・芸術の担い手としてふさわしいと認められる者を選考し、授与する賞。
美術部門は美術学部の卒業・修了作品展に出品された作品から特に優秀な制作者に、音楽部門は音楽学部・大学院音楽研究科を優秀な成績で卒業した学生の中から特に優れた演奏家に、それぞれ授与する。本年は美術部門6名、音楽部門6名の12名に授与された。
会期中は、丸ビル1階マルキューブにアートサイトが出現。彫刻や工芸、映像や音を組み込んだインスタレーションなど、美術部門受賞者の作品展示を行うほか、7階丸ビルホールでは音楽5 部門(声楽専攻・ピアノ専攻・弦楽専攻・管打楽専攻、邦楽専攻)の各受賞者による公演も実施する。
本セレモニーでは「オープニングアクト」として、尺八奏者で東京藝術大学音楽学部准教授の藤原道山らによる祝奏を披露され、東京藝術大学長・日比野克彦氏は「生活様式や時代が変わっていくなかで、芸術の社会に対する役割はこれまで以上に重要になってきています。人の心をつなぎ、一人ひとりの個性を尊重し合う多様性の基礎となる芸術の役割を、三菱地所さんとともに築いていきたい」と挨拶。
また三菱地所の吉田淳一社長は、本イベントへの期待を次のように述べた。
「街は時代とともに変化していく生き物のようなものです。街づくりはハードを整えたら終わりではなく、芸術・文化といった要素が非常に重要で、アートは心の豊かさ・ウェルビーイングに大きな影響を与えていると実感しています。三菱地所グループは丸の内はじめ、全国で豊かな街づくりを進めていくため、藝大の皆様に刺激を与えていただきながら、引き続き、街の彩り・豊かさを拡大していきたいと考えています」
■藝大の教授・学生による出張授業も
「三菱地所賞」の美術部門の受賞者は太田琢人(デザイン)、岡ともみ(デザイン)、齋藤弥主子(油画、ポーランド留学中のため本セレモニーは欠席)、時田早苗(工芸)、轟木麻左臣(彫刻)、higoAkari.(映像)の6名。
太田啄人さんは美術部門の受賞者を代表し、「この展示を企画してくださった皆様、藝大と三菱地所の関係者の方々、あと両親に感謝を伝えたいと思います。私の今後の展望としては、宇宙か深海でものづくりをしたいと思っていて(笑)。宇宙や深海への行き方、アプローチの仕方がわかる方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください」と、受賞のコメントを寄せた。
音楽部門を受賞したのは菊川穂乃佳(弦楽)、小嶋早恵(ピアノ)、小玉友里花(声楽)、萩原ももこ(管打楽)、松岡多恵(声楽)、本山愛(邦楽)の6名。
この9月末をもって声楽科博士後期課程を修了した松岡多恵さんは、「私は日本歌曲を専攻し、萩原朔太郎などの詩人を中心として文学の方面から、日本歌曲という音楽を紐解く研究をしてきました。音楽と文学という2つの分野を跨ぐ賛否両論あった研究でしたが、さまざまな先生方・関係者の皆様に背中を押していただき、日本歌曲における日本語の美しさ、その音楽の新たな美しさに改めて気づかされました。大正・昭和前期の詩人による言葉は本当に美しく、そうした日本語の美しさを音楽に乗せて、皆様にお届けできれば」と、受賞の喜びを語った。
「藝大アーツイン丸の内2022」では、音楽部門受賞者のリサイタルを10月21日より順次開催。丸ビル7階丸ビルホールで23日までの3日間、弦楽・器楽・声楽・管打楽・邦楽を修めた6名の受賞者によるコンサートが無料で楽しめる(開演60分前にホール入口で入場整理券を配布し、就学前の子どもの同伴・入場は不可)。
さらに、今年は丸の内エリアにおける文化・アート活動の更なる活性化を目的に、まちに訪れる人とアートを繋ぐ、東京藝術大学の教授陣・学生による出張授業「オープン・プログラム」を展開。
丸ビルをメイン会場にトークライブやワークショップ、学生がガイドとなって丸の内エリア内の芸術作品を巡るツアーなど、さまざまなかたちでアートの魅力に触れる全5プログラムを開講する。詳細は特設サイトなどでチェックしてほしい。
■information
「藝大アーツイン丸の内 2022」
10月23日まで
丸ビル 1 階マルキューブ、7 階丸ビルホール他
東京都千代田区丸の内2-4-1