独立開業するには、「フランチャイズのオーナーになる」という方法もあります。フランチャイズのオーナーになるとどのような仕事をして収入はどのくらいなのかなど、その実態が気になりますよね。
この記事では、フランチャイズオーナーのなり方や仕事内容、収入、オーナーになった時の年齢のほか、メリットやデメリット、心構えなどを詳しくまとめました。
■フランチャイズのオーナーはどんな仕事?
<フランチャイズとは>
フランチャイズとは、フランチャイズ本部である親企業に加盟店がロイヤリティを支払うことで、本部の持つ経営ノウハウを活用したり、ブランド名や看板を使用したりできるビジネスモデルです。
よく知られるものにはコンビニエンスストアや飲食店がありますが、その他にもハウスクリーニングや介護、学習塾など、あらゆる業種がフランチャイズというビジネス形態に参入しています。
フランチャイズビジネスにおいて、本部には「新しいオーナーを迎え入れ、成果の出る店舗を増やす」という目的があります。そこで、仕入れや販売、集客、商品開発などビジネスに必要な要素をパッケージ化することで、加盟店オーナーがスムーズに店舗運営を行える環境を提供するのです。
一方、加盟店オーナーは、こうした本部のサポートを得ることで、自分一人で試行錯誤する時間を省略できます。そして、たとえ未経験でも開業当初から売り上げを出すことを期待できるのです。
<オーナーにはどうやったらなれる? >
フランチャイズオーナーになるには、本部とフランチャイズの加盟契約を締結する必要があります。一般的には、加盟するフランチャイズが決まったら、加盟契約の締結前に店舗となる物件を決定することが多いようです。その後、「契約書の開示」「加盟契約の申し込み」「本部による審査」というステップを踏みます。
これらのステップを経て加盟契約を締結したら、いよいよ本格的な開業準備の始まりです。従業員の採用や備品の準備、接客についての研修などを受け、店舗のオープン日を迎えます。なお、加盟から開業までは、3ヶ月~1年程度かかると考えておくといいでしょう。
<オーナーの仕事内容>
フランチャイズに加盟したら、自分の店舗を運営すること、そして事業を拡大していくことがオーナーの仕事となります。しかし、自分一人で開業する場合と異なり、売上を伸ばすための宣伝活動はほとんど本部が行ってくれるため、オーナーは店舗運営に集中することができます。
オーナーの具体的な仕事は、フランチャイズ本部とのやり取り、在庫や資金の管理業務、一人で営業する場合は電話対応や接客などです。従業員を雇う場合は、募集や採用面接、研修、給与やシフト管理などを行います。ただし、従業員の採用なども本部に一任できるフランチャイズもありますので、オーナーの仕事の範囲は加盟するフランチャイズによって異なるでしょう。
<オーナーと店長との違い>
オーナーと店長では、業務内容が違います。オーナーとは、その店舗の経営者であり、フランチャイズ事業の責任者です。一方、店長とは経営者が指示したサービスを提供するための現場監督のような立場であり、従業員に教育したり指導したりするのが主な仕事です。
なお、オーナーが店長を兼任することもあれば(オーナー店長)、他の人を店長として雇うこともあります(雇われ店長)。
■フランチャイズオーナーの実態とは
<年収はどのくらい? >
フランチャイズオーナーになるとどのくらいの収入が得られるのか、気になりますよね。フランチャイズの代表的な業種の年収目安を見てみましょう。
まず、コンビニエンスストアの場合、加盟するコンビニチェーンや立地によっても異なりますが、平均年収は700万円程度と言われています。ただし、コンビニ1店舗あたりの収入として考えますので、夫婦2人で経営する場合は夫婦合わせて年収700万円となります。
次に、飲食店はどうでしょうか。飲食店オーナーの平均年収は1,000万円程度です。ただし、1店舗だけでなく、複数店舗を展開することでこうした高い年収を得ているオーナーも多いようです。
最後に、今後も市場の拡大が予想されるハウスクリーニングですが、こちらは平均年収950万円程度となっており、飲食店オーナーと並び比較的高収入です。また、ハウスクリーニングは開業資金が0~300万円程度で始められるため、手持ち資金が少なくてもチャレンジしやすい業種といえます。
<オーナーになった時の年齢>
「マイナビ独立」が2017年にフランチャイズオーナー経験者97名に対して行ったアンケートによると、フランチャイズオーナーとして開業した年齢で一番多かったのは30代で30.1%、続いて20代23.7%、40代21.5%、50代19.4%、60代5.4%という結果になりました。
なお、フランチャイズ加盟時の平均年齢は40.3歳、中央値(全体の真ん中に位置する数値)は39.5歳でした。
30代でフランチャイズオーナーになる人が多い理由は、社会経験をある程度積んだこと、また、フランチャイズの開業に必要な自己資金を捻出できる年齢であることが考えられます。
ただし、30代の次に多いのは意外にも20代であり、一方で、40代や50代で開業する人も比較的多くいます。幅広い年齢層の人がフランチャイズに挑戦しているのは、業種が多種多様で、自分の年齢や経験、状況に合わせて多くの仕事から選択できるためでしょう。
<開業資金の金額>
前出のアンケートによると、フランチャイズオーナーになる際にかかった開業資金は、1~100万円未満が25.8%と最も多くなりました。続いて、300~500万円未満が23.7%、500~1,000万円未満が20.6%となっており、開業資金1,000万円未満の人は全体の83.5%、そのうち500万円未満の人は62.9%という結果が出ています。
また、フランチャイズは自分で開業する場合より初期費用を抑えられるケースが多く、「自己資金のみで開業資金をまかなえた」という人も51.5%にのぼっています。
ただし、加盟するフランチャイズによって必要となる開業資金には差がありますので、事前にしっかり確認しておくことが欠かせません。また、開業資金とは別に、開業後はランニングコストがかかることも忘れないようにしましょう。
■フランチャイズオーナーのメリット、デメリット
<メリット>
フランチャイズオーナーになる最大のメリットは、起業が初めてでも時間をかけずにビジネスを構築できる点でしょう。「いつかは経営者になりたい」と思っても、未経験の場合はビジネスをどう展開してよいかわからず、起業まで膨大な時間を費やしてしまうことも少なくありません。また、失敗を恐れ、結局ははじめの一歩を踏み出せない人も多いでしょう。
一方、フランチャイズなら、仕入れや採用、販売、接客など店舗運営に関わるさまざまなビジネスノウハウを最初から手に入れることができます。さらに、本部の持つブランドや知名度を活用しますので、オープン当初から集客に困ることはありません。
開業前には研修がありますし、開業後も本部の担当者からアドバイスをもらえるなど継続したサポートが受けられる点もフランチャイズの魅力でしょう。「自分一人で一から起業することに不安がある」という人には、最適なビジネスモデルではないでしょうか。
<デメリット>
一方、フランチャイズオーナーになる最大のデメリットは、「ロイヤリティの支払い」が挙げられます。多くのフランチャイズでは、「売上の何%」という形で本部にロイヤリティを納めることが義務付けられています。中には、「月額固定」で毎月支払う金額が決まっているところもあるようです。
ロイヤリティは、思うように売上が出ない時でも支払わなくてはいけないため、オーナーにとって大きな負担になる場合もあるでしょう。ただし、フランチャイズによってはロイヤリティが免除になるケースもあり、支払い形態は加盟前に必ず確認が必要です。
また、フランチャイズは起業初心者にとっては心強いシステムですが、その一方で「全て自分の思い通りにはできない」というデメリットも存在します。フランチャイズは、基本的には本部の決めたマニュアル通りに営業しなければならないからです。
「自分が経営者である以上、店舗運営のルールは自分で決めたい」という気持ちが強い人は、フランチャイズは避けたほうがいいかもしれません。
■事業を成功させるための心構え
最後に、フランチャイズオーナーとして事業を成功させるための心構えを2点ご紹介しましょう。
<本部とのつながりを大切にする>
フランチャイズビジネスは、基本的に、本部がサービスを作り、加盟店がそれを顧客に届けるという形で成り立っています。本部が商品開発や宣伝、ブランド力の向上などを担う一方、加盟店は本部のサービスを適切なスピードとクオリティで提供するのです。
つまり、本部と加盟店はお互いになくてはならない存在であり、ビジネスを円滑に進めるためには密なコミュニケーションが欠かせません。
本部との基本的なやり取りは、定期的に店舗を巡回する「スーパーバイザー」を通じて行います。スーパーバイザーとは良好な関係を築き、本部からの情報を素早くサービスに反映できるよう心がけましょう。
<経営者としての自覚を持つ>
フランチャイズオーナーとして事業を成功させるためには、加盟したフランチャイズのマニュアルをよく理解し、決められたルールのもと営業を行うことが必須となります。本部が作成したマニュアルは、ビジネスノウハウが詰め込まれた成功に欠かせないものだからです。
しかし、実際に経営者として店舗を運営するのは、オーナー自身です。「マニュアル通りにやってさえいれば大丈夫だろう」といった油断があると、ビジネスを成功させることは難しいでしょう。サービスを気持ちよく顧客に利用してもらうため丁寧な接客を心掛ける、地元に根付いた提案をするなど、オーナーとしてやるべきことはたくさんあります。
本部の決めたマニュアルを守りつつ、経営者としての自覚もしっかり持つ。この両輪が、フランチャイズビジネスの成功には欠かせないのです。
■フランチャイズを活用し、経営者として歩み出そう
今回は、フランチャイズオーナーという仕事についてご紹介しました。ただし、フランチャイズオーナーといっても、業種によって収入やライフスタイルは千差万別です。記事を参考にしつつ、自分が加盟を考えているフランチャイズの実態はどうなのかよく確認し、複数のフランチャイズを比較検討してみましょう。
起業のハードルを下げてくれるフランチャイズ。そのフランチャイズを上手く活用し、経営者としての人生を始めてみてはいかがでしょうか。