業界で今最も注目を集める8人組・ダウ90000にとって初の連続ドラマ『今日、ドイツ村は光らない』(日本テレビ4話=10月8日13:50頃、15日14:50頃、22日14:50頃、11月5日14:50頃/Hulu11話=毎週水曜0:00最新話配信)。千葉県にあるテーマパーク「東京ドイツ村」の最大の目玉であるイルミネーションが始まる前日、いわば“1年で最も暇な1日”での男女9人の悲喜こもごもを描くショートドラマだ。
ダウ90000主宰の蓮見翔は、これが連ドラ脚本初挑戦。手応えや課題を得て、創作活動の大きな糧になったようだ。さらに、快進撃を続けるグループの今後の意気込みなども聞いた――。
■東京ドイツ村に“当て書き”
蓮見が執筆にあたってまず考えたのは、「演劇と設定がかぶらない場所を舞台にしたい」ということ。そこで提案したのが、「今コロナの影響で、ものを食べるというのができない劇場があるんです。食べ物周りの話がちょっとやりづらいところがあったので、フードワゴンという設定が出てきました」といい、「それが置ける場所ということで、スタッフさんがドイツ村を探してくれました」とロケーションが決まった。
ここから、東京ドイツ村に“当て書き”してストーリーを紡いでいく。ドイツ村をイジる描写も登場するが、実際にロケ撮影に協力してくれた場所に対して、この加減はどのように意識したのか。
「バラエティ番組で落とし穴を掘ってるという話を聞いていて、そういう人たちはきっと寛容で、イジっても受け止めてくれるイメージがあったんです。ただ、見ている人が笑えないとただの悪口になっちゃうので、明らかにドイツ村側がおかしいところをチョイスしました。例えば、“ドイツ村”なのにそば屋があるって絶対おかしいじゃないですか(笑)。せっかくドラマなので、そういう画で見たときの面白さは意識しましたね」
■誰も見つけていない映像での感情の伝わり方があるはず
舞台を主戦場としているが、連続ドラマの脚本は「難しいですね。何本も書けるもんじゃないなと思いました」と苦戦を強いられた様子。
「全く別物だと思いました。舞台で書いた経験を生かして今回は書いていて、5分という枠で、ワンシチュエーションの長尺回しという形にさせてくれたので、何とかなりました。なので、普通の1時間のドラマを10話書けと言われて、今の僕が書いたとおりに撮ったら、退屈な画になっちゃうと思います」
そうしたシーンの展開力に加え、感情の描写という点においても、課題が見つかった。
「テレビだと、展開が分かりやすかったり、ベタなほうがいいということがあるじゃないですか。例えば、主人公の感情の変化が分かるのが、セリフじゃなくて、泣くという行動だと伝わりやすいけど、僕はそういう描写を全部嫌がってきたんです。でも、映像的に見て、人が泣いているほうが分かりやすくていいというのは理解してるので、その自分の中のパラドックスみたいなものと葛藤してる部分がありますね。僕は“陰キャ”という言葉が嫌いなんですけど、それをどう表現するかが面白いと思っていて、その誰も見つけていない映像での感情の伝わり方というのが絶対あるはずなので、これから自分の物差しを研ぎ澄ませないといけないなと思いました」
それでも、「5分という尺とカメラワークで補ってくれて、会話の部分はすごく楽しくできたし、全体を通して良い空気感のものが作れて、作品は面白くなっていると思います。これはもう本当にスタッフさんのおかげです」と感謝しながら、「やっぱり自分としては、脚本の段階でスタッフさんに補ってもらわなくてもいいものを書かなければ」と、さらなる向上心をのぞかせる。
■15話の脚本執筆は「トレーニングに近かった」
連ドラの脚本を経験したことによって、舞台にも生きることがあったという。
「普段の演劇は90分で1本ですが、今回は5分で15本なので、5分おきに15回見せ場を作らなければいけないというのが、すごく難しかったんです。話の盛り上げ方や、5分で伝えなきゃいけないから『ここを抜き取っても成立するな』という感覚が分かって、いい意味での端折(はしょ)り方というのがつかめたので、今度90分の本を作ったときは、今までより密度の濃いものにできるようになるんじゃないかと思えました」
今回の執筆は、「トレーニングという形に近かったです」と鍛えられたそうで、「どんどん書いていけば、うまくなっていけるのかなとも思いました」と、手応えがあったようだ。