こんにちは。昭和レトロに目がないおじさんです。近頃はコロナ禍もあり、会社での「飲みニケーション」がなくなったと聞きます。
飲み会では気配を消し、人知れず消えるのが得意な「陰キャレベル高め」の学生時代を過ごした筆者。中年になってもその技を磨き続け、夜の社交とは無縁の人生でした。正直、飲み会が消えたと聞いても「ふーん」くらいの他人事ですが、一つだけ悔やまれるのは「スナックなどの昭和文化」を知らずにきたこと。
ところが先日、札幌にある星野リゾートのホテル「OMO3札幌すすきの(おも) by 星野リゾート」が宿泊者向けに「ビギナー向けのスナック体験」プログラムを開始すると聞いたのです。これは良い機会! 令和にスナックデビューするため、体験会に参加してきました。
ホテルのある街全体を楽しむ
すすきのと言えば、新宿の歌舞伎町、福岡の中洲と並んで「日本三大歓楽街」として知られる有名な観光スポット。そうしたエリアにある本ホテル、名前の「OMO」は星野リゾートが展開する都市ホテルブランドです。
施設名の後ろの数字はサービスの幅を表し、本ホテルの「3」はベーシックホテルに位置付けされ、気軽な旅に使える施設、料金が特徴だそう。
同社の北海道広報 担当者さんは、「元々ビジネスホテルとして作られた施設を弊社が引き継ぎ、1階のパブリックスペースを中心に改装して2022年の1月28日よりグランドオープンしました」と説明します。そのため、例えば部屋の浴室は一部を除いて「バスタブがないシャワールーム」など設備面はシンプルな作り。
「他の都市に比べ飲食店が多い札幌。市の調査でも『旅行の目的はグルメ』という声が一番だそうです。そうしたことも踏まえ、夜にすすきのでグルメを楽しいでほしいという考えで『幸せな夜更かし』が本施設のコンセプトになっています」(担当者さん)
具体的には、ホテルのあるエリア、街全体をコンテンツとして利用者に楽しんでもらうため、「ご近所マップ」というホテルのスタッフが作成したお勧めスポットやお店、スタッフが「ご近所ガイドOMOレンジャー(以下、OMOレンジャー)」として街中を歩いて回る「すすきの夜更かし散歩」ツアー、「夜更かしスナックOMO」など、さまざまな仕掛けが用意されているそうです。
SNS含め情報収集には事欠かない時代ですが、やはり現地の人が見て、聞いた「生きた情報」を、本人から直接聞けるのはいいですね。
スナックの歴史を学ぶ
この「夜更かしスナックOMO」という無料イベント、1階のパブリックスペースに「疑似スナック」が設営され、OMOレンジャーがスナックの基本的なマナーや心得などのスナック講座を開講する内容です。
さらに、すすきのから「本物のママ」が出張して来てくれて、用意されたウイスキーの水割りや豆菓子を振る舞いつつ、おしゃべりを楽しむことができる内容となります。これならルールを知らない初心者でも、気軽に楽しめそうですね! なお、ママが臨時休暇する場合はOMOレンジャーが近所のお勧めスナックを紹介してくれるそうです。
ということで、早速筆者も講義に参加。ホテルのスタッフ兼OMOレンジャーの小笠原滉一さん、開口一番「皆さん、そもそもスナックとバー、居酒屋の違いは分かりますか」と質問してきます。「お酒を飲む」という経験がほぼ無いワタクシ、「店の雰囲気? 利用者の客層?」くらいしか思いつきません。
無知蒙昧な筆者があたふたしていると、小笠原さん、スライドを使って丁寧にスナックの語源や歴史を解説してくれます。
結論から言うと、日本で今のスナックが生まれたのは、1964年に開催された東京オリンピックをきっかけに法改正が実施され、「お酒を飲む場であり、軽食を出してくれる」場となったのが始まりみたいです。
時は高度成長期。日本が経済成長していく中でスナックも誕生したのですね。まさに「昭和を象徴する存在の一つ」と言えるでしょう! ゾクゾクしますねー、と昭和萌えで身悶えする筆者を放置し、小笠原さんは粛々と説明を続けます。
「北海道にあるスナックの数は東京に次ぎ2位の4,900店舗あります。ただ、居酒屋、バーの『お勧め』を紹介する書籍は何冊もありますが、スナックは意外と見かけませんよね」(小笠原さん)
このためなのか、最初は小笠原さんもスナックに関する情報が少ないため、今回のツアー企画をきっかけに調べ始め、スナックの関係者の人と話をする中で知見を得ていったそうです。自分の足で稼いだ、他にはないオリジナルの内容なんですね。
「スナックを楽しむ3ケ条」が大切
ここで一緒にレクチャーしてくれる、すすきのにある「スナックあさこ」のママ、五十嵐麻子さんも合流します。
あさこママ、元々は歯科衛生士でしたが、コロナ禍でスナックを始めた女傑(笑。なお、自身の母親もスナックをやっていたので、「いつかは」という想いはあったそうです。しかし、この状況で決断・行動するのは凄いですね。でも、とっても気さくで、話しやすい人でした。さすが接客のプロ!
感心する筆者に、「あさこママだけでなく、スナックのママは皆さん話し上手で聞き上手。人と人をつなげるのがとでもうまい存在ですよ。居酒屋と違い、ママとの会話を楽しむことができるのがスナックの魅力の一つなんです」と小笠原さんは説明してくれました。
ただ、魅力は分かるのですが、スナック(だけじゃなくバーなども)は常連さんがいるから敷居が高いと思うのは筆者だけ?
そんな疑問を小笠原さんにぶつけたところ、「『スナックを楽しむ3ケ条』を守れば大丈夫です。お店に入り、まずはお店の様子をよく観察し、あとはママに委ねれば、うまく導いてくれますよ」とアドバイスしてくれました。
この3ケ条とは
1.礼儀正しく楽しむべし
2.出会いを楽しむべし
3.歌を楽しむべし
なんだか物々しいですが、要は「普通にすればいい」とあさこママも言います。
「スナックに来る人はお酒を既に飲んだ状態で来るので、意外といろんな人がいるのですよ。だから『礼儀正しく』はとっても大事なんです」(あさこママ)
お酒を飲まない筆者にはピンと来ませんが、スナックは1軒目に行くお店ではないのですねー。
そんな素朴な疑問に対しても、「場所にもよりますが、スナックの営業時間はたいてい夜の8、9時からです。だから2軒目以降になります。あと食事も簡単なものしか出ないというのもあります」とあさこママは優しく教えてくれました。なるほど、こんな風にママがそつなくすべて対応してくれるのですねー。
なお、お店によっては料理の持ち込みも大丈夫だそうで、あさこママも全然オッケーだと言います。
「先日も、『すすきの祭り』に来たお客さんが銀だこやピザ、みよしの餃子などを持ち込んでうちで大宴会していましたね(笑。もちろん、うちは持ち込み料金も不要ですよ」
これは完全にサードプレイスとして機能していますね。
「ママと仲良くなってしまえば、お店の由来など聞いたり、常連のお客さんとも盛り上がったりして打ち解けることは簡単ですよ」(小笠原さん)
ちなみにあさこママは「みよしの餃子※」が大好きみたいで、持参すると一気に仲良くなれるかも!?
※北海道でのみ展開する、餃子・カレーライスの外食チェーンで、道民のソウルフードとも
すすきのデビューを果たす
2つ目の「出会い」は、ママや他のお客さんとのコミュニケーションだろうと想像がつきますが、最後の歌は何でしょう。小笠原さんに尋ねました。
「スナックというとカラオケです。ここで押さえてほしいのは、誰かが曲をかけたら、その場の雰囲気や空気を大切にするため手拍子をすることです。他の人にすると、逆に自分が歌う時もしてもらえ、気分よく歌うことができると思いますよ」
これ、「昭和の飲み会あるある」なルールではないでしょうか? ちなみに「トイレに行くときも、かがみながら手拍子」となかなか高度なテクニックも大事だとか! ほんとに!? と思いましたが、「これは3Tと言いまして、「ト」イレには「て」い姿勢で「て」拍子を」と小笠原さん。
他のスタッフの方も、よく聞きますね、見かけますなど支持する声が多かったので、そうなのでしょうね……。難易度高いな!
一通りの講義が終了し、次のステップへ。それは実践編として、OMOレンジャーと本物のスナックに行く「はじめてのすすきのスナックツアー」です。幾つか提携するお店がありますが、今回はこのまま「スナックあさこ」へ向かうことに。
陽が落ちて出歩くのは相当久々の筆者、しかも場所は歓楽街すすきのですから、普通なら相当アウェイ感ありますよ。でも今回は頼もしい二人が先導してくれ、お店に向かってずんずん進んでいき、ついに目的地へ。
自分一人なら絶対無理だろう、と思うスナック訪問ですが、さっきまで話していたメンバーだけなので、まったく問題なし! 他のお客さんも来店しなかったので、居心地が悪いこともないまま1時間ほどおしゃべりを楽しみました。
終了後、あさこママからは「うちは飲めない人もウェルカムだから、今度また気軽に来てください」と優しい言葉も! 昭和のカルチャーに触れたいけど、アルコールが苦手な人でも楽しめるプログラムでした。
●information
夜更かしスナックOMO
開催期間:9月1日~11月30日
「スナックのママとおしゃべりを楽しむ」
時間:18~19時、予約不要、参加無料、ウイスキーの水割りと豆菓子(500円)
「すすきのアペロミーティング~スナック編~」
時間:18時~、19時~※各回15分、予約不要、参加無料
「OMOレンジャーとスナックに行く『はじめてのすすきのスナックツアー』」
時間:20~21時半
料金:ツアー参加1名1,000円※飲食代別
定員:4名※最小催行人数1名
予約:夜更かしスナックOMOで当日受付