将来、いくら年金がもらえるのか、気にならない人はいないでしょう。厚生年金は国民年金に上乗せされて支給されるため、厚生年金に加入していることが年金額の増加につながります。そこで、厚生年金を受給できる人の年金額はいくらなのか、平均受給額や割合、男女での違いなどをグラフにしてお見せします。さらに、1年厚生年金に加入すると年金がいくら増えるのか、簡単な計算式もご紹介します。

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■厚生年金の平均額

厚生年金を受給できる人の年金額はいくらなのか、厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から平均額を見てみましょう。

令和2年度末の厚生年金受給者の平均年金月額は14万6,145円となっています。

受給権者※で見ると、14万4,366円となります。

この金額は国民年金(基礎年金)を含んだ額です。国民年金受給者の平均月額は5万6,358円なので、平均額で比べてみると厚生年金は国民年金の約2.6倍の受給額となります。

※年金を受ける権利を持っていて、本人の請求により裁定された者。全額支給停止されている者も含む。

■月額14万円受給している人の数

厚生年金を受給している人の平均年金月額は約14万円とわかりましたが、平均額が必ずしも割合として多いわけではありません。そこで、年金月額を1万円単位の階級別にして受給者の数を見てみましょう。

  • 出典:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成

1万円未満:10万511人
1万円以上~2万円未満:1万8,955人
2万円以上~3万円未満:6万6,662人
3万円以上~4万円未満:11万9,711人
4万円以上~5万円未満:12万5,655人
5万円以上~6万円未満:17万627人
6万円以上~7万円未満:40万1,175人
7万円以上~8万円未満:69万4,015人
8万円以上~9万円未満:93万4,792人
9万円以上~10万円未満:112万5,260人
10万円以上~11万円未満:111万9,158人
11万円以上~12万円未満:101万8,423人
12万円以上~13万円未満:92万6,094人
13万円以上~14万円未満:89万7,027人
14万円以上~15万円未満:91万3,347人
15万円以上~16万円未満:94万5,950人
16万円以上~17万円未満:99万4,107人
17万円以上~18万円未満:102万4,472人
18万円以上~19万円未満:99万4,193人
19万円以上~20万円未満:91万6,505人
20万円以上~21万円未満:78万1,979人
21万円以上~22万円未満:60万7,141人
22万円以上~23万円未満:42万5,171人
23万円以上~24万円未満:28万9,599人
24万円以上~25万円未満:19万4,014人
25万円以上~26万円未満:12万3,614人
26万円以上~27万円未満:7万6,292人
27万円以上~28万円未満:4万5,063人
28万円以上~29万円未満:2万2,949人
29万円以上~30万円未満:1万951人
30万円以上~:1万6,721人

割合が一番多いのが、9万円以上11万円未満の層です。ここを一つの山とすると、次に17万円以上18万円未満のところに二つ目の山ができています。平均である14万円台は91万3,347人と、ボリュームゾーンの中では谷にあたることがわかります。この理由は次の男女別に表した受給権者数を見るとわかります。

■男女別にすると

年金月額を一万円単位の階級別にして、その受給権者数をさらに男性と女性で分けたグラフを作成しました。

<年金月額階級別・老齢厚生年金受給権者数(男性)>

1万円未満:7万2,507人
1万円以上~2万円未満:1万2,071人
2万円以上~3万円未満:5,395人
3万円以上~4万円未満:1万170人
4万円以上~5万円未満:3万714人
5万円以上~6万円未満:6万7,421人
6万円以上~7万円未満:16万3,063人
7万円以上~8万円未満:24万4,810人
8万円以上~9万円未満:24万2,657人
9万円以上~10万円未満:27万3,243人
10万円以上~11万円未満:35万350人
11万円以上~12万円未満:43万8,683人
12万円以上~13万円未満:51万8,659人
13万円以上~14万円未満:60万8,992人
14万円以上~15万円未満:70万4,371人
15万円以上~16万円未満:79万3,583人
16万円以上~17万円未満:88万4,219人
17万円以上~18万円未満:94万8,543人
18万円以上~19万円未満:94万2,288人
19万円以上~20万円未満:87万9,047人
20万円以上~21万円未満:75万7,129人
21万円以上~22万円未満:59万345人
22万円以上~23万円未満:41万4,195人
23万円以上~24万円未満:28万2,665人
24万円以上~25万円未満:19万63人
25万円以上~26万円未満:12万1,426人
26万円以上~27万円未満:7万5,194人
27万円以上~28万円未満:4万4,547人
28万円以上~29万円未満:2万2,741人
29万円以上~30万円未満:1万807人
30万円以上~:1万6,346人

  • 出典:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成

<年金月額階級別・老齢厚生年金受給権者数(女性)>

1万円未満:2万8,004人
1万円以上~2万円未満:6,884人
2万円以上~3万円未満:6万1,267人
3万円以上~4万円未満:10万9,541人
4万円以上~5万円未満:9万4,941人
5万円以上~6万円未満:10万3,206人
6万円以上~7万円未満:23万8,112人
7万円以上~8万円未満:44万9,205人
8万円以上~9万円未満:69万2,135人
9万円以上~10万円未満:85万2,017人
10万円以上~11万円未満:76万8,808人
11万円以上~12万円未満:57万9,740人
12万円以上~13万円未満:40万7,435人
13万円以上~14万円未満:28万8,035人
14万円以上~15万円未満:20万8,976人
15万円以上~16万円未満:15万2,367人
16万円以上~17万円未満:10万9,888人
17万円以上~18万円未満:7万5,929人
18万円以上~19万円未満:5万1,905人
19万円以上~20万円未満:3万7,458人
20万円以上~21万円未満:2万4,850人
21万円以上~22万円未満:1万6,796人
22万円以上~23万円未満:1万976人
23万円以上~24万円未満:6,934人
24万円以上~25万円未満:3,951人
25万円以上~26万円未満:2,188人
26万円以上~27万円未満:1,098人
27万円以上~28万円未満:516人
28万円以上~29万円未満:208人
29万円以上~30万円未満:144人
30万円以上~:375人

  • 出典:厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成

男性の場合、17万円以上19万円未満が多く、ここを中心にボリュームゾーンができあがっていますが、女性の場合は、9万円以上10万円未満が一番多く、7万円から13万円未満がボリュームゾーンになっています。そのため男女を合わせると二つの山ができ、均して14万円にした場合は、男性の場合も、女性の場合も決して多いとはいえない年金額となるわけです。

以上のことから、平均額を見て、自分が受給できる年金額を想像するのは無理があるといえるでしょう。自分が将来受給できる正確な年金額を知るには、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」か、日本年金機構のサイト「ねんきんネット」で確認することをおすすめします。

■1年厚生年金に加入するといくら増える?

厚生年金の受給額は、働いていた時の給料と加入期間に応じて決まります。この部分を「報酬比例部分」といい、定額である「基礎年金」に上乗せされて支給されます。そのため、年金額を増やそうと思ったら、厚生年金に加入できる事業所で働いて保険料を納める必要があります。2022年4月からアルバイトやパートなどの短時間労働者が厚生年金に加入できる事業所の規模要件が段階的に緩和され、厚生年金に加入しやすくなります。

そこで、1年間厚生年金に加入したら、年金額はどのくらい増えるのか、簡単に試算できる計算式をご紹介します。

<1年厚生年金加入で増える年金額> 年収×0.55%=総額する年金(年額)

※この式はあくまでも目安を知るための簡易的な計算式です。実際の年金額を試算するものではありません。

たとえば、1年間厚生年金に加入した時の年収が300万円であれば、およそ1万6500円年金が増え、その年金を生涯受け取ることができます。

■まとめ

男性と女性では、働き方の違いから、厚生年金の受給額に大きな違いがあることがわかりました。女性は出産、育児などで短時間労働者として働くケースが多いため、どうしても受給額が男性に比べて少なくなりがちです。しかし、厚生年金の加入要件緩和により、短時間労働であっても年金額の上乗せができるようになりました。今後、平均寿命が延びていくことにより、定年の時期はますます後倒しになっていくことが考えられます。仕事を長く続けることが老後の生活基盤を作る助けとなるため、年金を増やす一つの方法として厚生年金の加入を考えてみるといいでしょう。