北陸新幹線は2024年春、金沢~敦賀間延伸開業を予定している。これに伴う「サンダーバード」など北陸方面へ向かう在来線特急列車の去就も気になるところ。北陸新幹線敦賀延伸開業で、在来線はどのように変わるだろうか。

  • 特急「サンダーバード」は現在、おもに大阪~金沢間で運転されている

■在来線特急列車は敦賀駅止まりに

北陸新幹線の延伸により、福井県にも新幹線が進出することになる。金沢~敦賀間では、途中停車駅として小松駅、加賀温泉駅、芦原温泉駅、福井駅、越前たけふ駅を設置。越前たけふ駅のみ、他路線と接続しない独立駅になる。

敦賀延伸開業により、金沢~敦賀間は現行の1時間12分から43分、東京~福井間は現行の3時間14分から2時間53分、富山~福井間は現行の1時間12分から44分に短縮される見込み。一方、大阪~金沢間は敦賀駅で北陸新幹線に乗換えとなるが、所要時間は現行より約25分短縮され、2時間4分を見込んでいる。

北陸新幹線の敦賀延伸開業後、並行在来線となる北陸本線金沢~敦賀間はJR西日本から経営分離され、第三セクター鉄道による運行に変わる。石川県側の金沢~大聖寺間はIRいしかわ鉄道、福井県側の大聖寺~敦賀間は新会社「ハピラインふくい」が引き継ぐ。

  • 北陸新幹線の工事が進む中、福井県内の北陸本線を走る特急「サンダーバード」

在来線特急列車に関して、福井県は敦賀駅以北の特急列車存続にこだわったが、JR西日本や国から拒否され、昨年6月に断念を発表。最終的に大阪駅・名古屋駅からの特急列車は敦賀駅止まりとなることが決定した。

■特急「サンダーバード」湖西線がネックに

6月19日、筆者は北陸新幹線敦賀駅新駅舎の上棟式を取材するため、大阪駅から敦賀駅まで特急「サンダーバード」に乗車した。2022年6月の時点で、「サンダーバード」は大阪~金沢間を月~木曜日に1日あたり上下各22本、金・土・日曜日と祝日に1日あたり上下各25本を設定。うち上下各1本が七尾線へ乗り入れ、和倉温泉駅まで足を伸ばす。

筆者が乗車した列車は、大阪駅を7時に発車する「サンダーバード3号」。駅構内の北端にあたる11番線ホームに停車している。日曜日の早朝ということもあって、ホームは閑散としており、駅弁を販売する売店は閉まっていた。「サンダーバード」では、車内販売だけでなく、車内にある飲料自動販売機のサービスも今年5月に終了。大阪~敦賀間は約1時間20分だけに、ひょっとしたら北陸新幹線の敦賀延伸後、11番線ホーム上にある駅弁販売の売店も姿を消すかもしれない。

「サンダーバード3号」は683系9両編成。5・6号車の2両が普通車自由席だった。今年3月のダイヤ改正で、「サンダーバード」の自由席車両は1両減った。

  • 特急「サンダーバード」の車両683系の車内(2015年9月の報道公開にて、編集部撮影)

7時に大阪駅を発車すると、ほどなく新大阪駅に停車。数名が乗車したものの、筆者が乗車した6号車の乗客数は10名前後といったところだった。

ところで、北陸新幹線の敦賀延伸後も「サンダーバード」の列車名は生き残るだろうか。「サンダーバード」の名称は1995(平成7)年、特急「雷鳥」の一部列車を振り分ける形で登場した。以来、大阪駅・京都駅から北陸方面の特急列車の名称として君臨。関西では、鉄道ファンでなくても「サンダーバード=北陸へ行く列車」というイメージが強くなっている。引き続き「サンダーバード」という名称を使うのか、敦賀延伸に合わせ、思いきって新しい列車名を導入するのか、気になる。

「サンダーバード3号」は7時28分、京都駅に停車。多数の乗客が乗り込み、京都と北陸との歴史的つながりを実感する。とは言っても、車内は3割ほど埋まった程度。多くが行楽客であり、車内は休日らしいのんびりとした雰囲気に包まれた。

  • 京都駅を発車した「サンダーバード」は、湖西線など経由して敦賀駅へ向かう

京都駅を出発すると、「サンダーバード3号」は敦賀駅まで停車しない。山科駅から湖西線に入り、常時130km/hの高速運転に入る。琵琶湖を眺めながらの「サンダーバード」の鉄道旅行はなかなか楽しい。

ただし、湖西線は強風に悩まされる路線としても有名。比良山系からの強風により、列車の運休や徐行といった運行規制は年50日にも及ぶという。米原駅経由(北陸本線)の場合、湖西線経由と比べて20~40分の遅れが発生する。北陸新幹線が敦賀延伸を果たしたとしても、湖西線が機能不全だと、せっかくの効果も半減してしまう。

JR西日本は6月15日、強風による影響を少しでも減らすために、今秋からAI(人工知能)を使った風の予測システムを試験導入すると発表した。いずれにせよ、北陸新幹線敦賀延伸の効果を最大限にするためにも、継続的な湖西線の風対策は望みたい。

■帰りは敦賀駅から湖西線経由の新快速に乗車

8時20分、「サンダーバード3号」は敦賀駅に到着した。在来線ホームから、高さ37mを誇る北陸新幹線敦賀駅の新駅舎が見える。北陸新幹線の敦賀延伸後、在来線特急列車は新駅舎1階に新設されるホームから発着することになり、同一建物内で新幹線と在来線特急列車の乗継ぎが可能となる。

  • 敦賀駅に到着する「サンダーバード」

  • 工事の進む北陸新幹線敦賀駅の新駅舎・ホーム(6月19日に行われた新駅舎上棟式の取材にて、筆者撮影)

敦賀駅新駅舎の上棟式を取材した後、帰りは敦賀駅を13時23分に発車する姫路行の新快速に乗車した。新快速が敦賀駅に乗り入れるようになってから早16年が過ぎようとしている。待合室では、地元利用者の「新快速はいつ発車かな」という声も聞かれ、敦賀の人々にとっても新快速が生活の足になっていることを実感した。

新快速は定刻に敦賀駅を発車。途中の近江今津駅まで4両の短編成で走る。敦賀駅から近江舞子駅まで途中の各駅に停車することもあり、京阪神間を走る新快速とはいくぶん雰囲気が異なる。北陸本線と湖西線の結節点である近江塩津駅で、米原駅経由(北陸本線)の新快速(姫路行)に乗り継げるが、発車まで約30分待つ必要がある。

  • 敦賀駅からの帰りは新快速を利用した

日中時間帯、敦賀駅発着の新快速は時間的に有利な湖西線経由で運転される。北陸新幹線の敦賀延伸後も、京都・大阪方面への長距離列車の役割を考慮すると、敦賀駅発着の新快速は湖西線経由がメインであり続けるだろう。

北陸新幹線敦賀延伸は関西の鉄道ダイヤだけでなく、社会全般に大きな影響をもたらす出来事になると予想する。今後は敦賀駅から京都・大阪方面へ、北陸新幹線の延伸計画の実現についても注目していきたい。