モーニング娘。を18歳で卒業し、女優への道に進んで4年半が経過した工藤遥。そんななか出会った作品が鳥飼茜氏の人気コミックを実写ドラマ化した『ロマンス暴風域』だ。本作で工藤は、主人公・佐藤民生(渡辺大知)が運命的な恋と思い込む風俗嬢・せりかを演じる。「ちょうど女優業で壁にぶつかっている」という工藤が、その壁を「乗り越えるきっかけになりそう」と語った作品との巡り合わせについて、熱い思いを語った。

  • 工藤遥

■「作品のためならという思いが強かった」

工藤演じるせりかは、非モテの人生を歩むコンプレックスの塊である民生が“運命の出会い”と熱を上げる風俗嬢。劇中には、センシティブなシーンも登場する。

「原作をご覧いただいている方なら、どこまで表現するんだろう……と思う方もいると思います。ただ最初にお話をいただいたときは、どちらかというとそういう部分よりも、せりかという女性のキャラクターの難しさが気になって、しっかり表現できるのだろうかという不安の方が大きかったです」。

とは言いつつも、時間が経つにつれ、だんだんと“センセーショナルな描写”という部分も意識するようになっていったという。

「正直まったく抵抗がなかったかと言えば嘘になりますが、役者というお仕事をしていれば、遅かれ早かれ出会う役柄だとは思いますし、わざわざ避けて通るものではないという思いもありました。もちろん、周囲の方々は私の気持ちを最優先に尊重してくださる人たちばかりなので、どうするかは自分で決めさせていただきました。でも作品のためなら……という思いが強かったので、挑戦しました」。

■「自分らしい芝居」を考えるきっかけに

いろいろな葛藤はあったと言うが、この工藤の決断が女優業に対して「壁にぶつかっているな」と感じていた気持ちをぶち破ることとなる。

「せりかという役に対して、いろいろ考えることが多かったのですが、現場に入ると監督から『間とか、カメラの位置とか繋がりとか、そういう細かいことは気にしなくていい。その場でせりかとして感じた気持ちを大事にしてください』とアドバイスいただいたんです」。

  • (C)「ロマンス暴風域」 製作委員会・MBS

これまで4年半、女優業にまい進してきた工藤。真面目に取り組めば取り組むほど「台本に書かれたことをすべて完璧にやるんだ」という思いに捉われていたという。その結果「上手だね」「お芝居できるね」と褒められることもあったというが、工藤のなかでは、手ごたえを感じることができなかったという。

「とても贅沢な話だと思うんです。でもいただいた役を演じて褒めてもらっても、どこかで『この役は私じゃなくてもいいのかな。ほかの人ならもっと魅力的に演じられるのかも』と思ってしまう。台本と杓子定規に向き合うことで、合格点を目指すというか……」。

しかし、本作で監督から、台本をそこまで気にせず、せりかとして感じたことをそのまま表現してほしいという言葉を受け「自分らしい芝居」を考えるきっかけになった。

「私にこの役を与えてくれた意味を雑に扱ってはいけないんだと気づくことができたんです。でもこれまでしっかりと作り込んでやってきただけに、それをしないで、現場で感じたことを表現するというやり方には不安が大きかったです」。

工藤にとっては新たなチャレンジとなった本作。しかも原作者の鳥飼茜氏が描くキャラクターは、漫画でも人間味あふれる描写が多いだけに、そのプレッシャーは大きかった。

「役者ならみんな演じてみたいキャラクターだと思うんです。漫画のなかですら、あれだけリアルさがあるのだから、生身の人間が演じることで、さらに人間くさくならなければいけない。感情がぐちゃぐちゃに波打つようなせりかをお届けしたいという気持ちは強いです」。