角の利きを生かしてカウンターを決めた西山女王が快勝

西山朋佳女王へ里見香奈女流四冠が挑戦する第15期マイナビ女子オープン五番勝負(主催:マイナビ)の第5局が6月13日に東京の将棋会館で行われました。結果は112手で西山女王が勝ち、五番勝負を3勝2敗として、女王防衛を果たしました。

本局は最終局のため、改めて振り駒が行われ、里見女流四冠の先手番となりました。この手番では里見女流四冠が中飛車、西山女王が三間飛車に振っての相振り飛車となるのは、最近の両者の戦いぶりからも予測できるところです。しかし11手目の▲4八玉で、早くも前例が無くなりました。「(これまでとは)細かく違う部分があって、一手一手考える展開でした」と西山女王は語ります。

本譜は角交換となりましたが、里見女流四冠が47手目に▲6六角と打つと、西山女王も50手目に△2四角と対抗します。「どちらの角がより働くかが、勝負の分かれ目ですね」と立会人の中村修九段は解説しました。

■絶好の反撃

里見女流四冠は53手目に▲9五歩と端攻めに出ましたが、結果的にはこれがどうだったか。「細かい部分で先を見通せていない状況で攻めてしまいました」と振り返っています。△9五同歩に▲8五桂と、角と桂で9筋に狙いをつけましたが、60手目の△4六歩が絶好の反撃になりました。対して▲同歩は△4五歩の継ぎ歩が効果的です。先ほどの▲9五歩で一歩渡したため、後手に持ち歩の余裕ができて、この継ぎ歩攻めが生じているのが皮肉でした。

実戦は△4六歩に▲3七銀と上がり、△4七歩成▲同金左で先手は片矢倉を構築しましたが、4六の地点に歩がないので見た目ほど堅くありません。そして先手は攻撃するなら先ほど味をつけた9筋を狙うしかありませんが、ここから攻めると必然的に後手へ桂香を渡すことになります。もらった香車を生かしての80手目△4四香が、4六の地点を狙う激痛の攻めでした。前述の△2四角もバッチリ利いています。

■西山女王が初の永世女王資格を獲得

こうなってはいかに里見女流四冠といえども粘りようがありません。最後は西山女王が先手玉を寄せ切って勝利し、フルセットの末に女王を防衛しました。西山女王は女王戦5連覇を達成したので「永世女王」の資格を得ました。終局直後には「5期すべてを思い返しても幸運なことが多く、まだまだ永世称号には(ふさわしい)力が足りないかなと思っています」と語った西山女王でしたが、感想戦を終えた後の記者会見では「昨年防衛して、あと1期ということになったときから1年意識していました。いまは素直にうれしく思います」と喜びの声を語りました。

結果として、両者における十番勝負は西山女王が女王を、里見女流四冠が女流王位と、それぞれが保持しているタイトルを防衛する形で幕を閉じました。しかし両者の戦いはまだまだ終わりません。このマイナビ女子オープン最終局は今年度に両者がぶつかった対局としては10局目となりますが、年度初めからまだ2ヵ月しか経っていないのに、10局も行われたことは驚異的です。今年度は白玲戦、女流王将戦、倉敷藤花戦、女流王座戦の4棋戦で両者によるタイトル戦が行われる可能性があります。男性棋士同士の対局でも年度同一カードが20局を超えた例は相当に少ないのですが、西山女王と里見女流四冠の対局が20局を超えても全く不思議ではありません。

新たな局面を迎えた両者の戦いにますます注目です。

相崎修司(将棋情報局)

5連覇を果たし永世女王の資格を得た西山女王(提供:日本将棋連盟)
5連覇を果たし永世女王の資格を得た西山女王(提供:日本将棋連盟)