映画&舞台を完全連動させたプロジェクト「東映ムビ×ステ」シリーズの第4弾として、舞台『死神遣いの事件帖 -幽明奇譚(ゆうめいきたん)-』(東京公演:6月9日~19日 ヒューリックホール東京、大阪公演:6月23日~26日 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ)、映画『死神遣いの事件帖 -月花奇譚(げっかきたん)-』(2022年冬公開)が展開される。
「東映ムビ×ステ」第2弾として制作された『死神遣いの事件帖』シリーズの続編となり、江戸市中で探偵業を営む「死神遣い」の久坂幻士郎(鈴木拡樹)と死神・十蘭(安井謙太郎)の活躍を描く同作だが、今回は新たな死神・亞門(小林亮太)が登場しパワーアップ。前作で命を使い果たした幻士郎は幽霊とり、亞門とともに殺人事件に巻き込まれていく。幻士郎の過去や今冬公開の映画版にもつながるストーリーとなっている。今回は、主演の鈴木と新登場の小林にインタビュー。舞台版ではがっつりバディを組む2人に迫った。
■ファンの広がりが続編に
――もう映画の撮影も先に終わっているということで、お二人は舞台に向けて仲が深まっているところでしょうか?
小林:どんどん仲を深めたいなと思ってる最中です。
鈴木:映画の撮影と舞台の稽古を合わせて 1週間……。
小林:そうですよね。
鈴木:7日以上は現場で一緒に過ごしてますので。息ぴったりですね(笑)
――お互いの印象はいかがですか?
小林:ご一緒したいなと思っていたのですごく嬉しいですし、本当にどなたにも分け隔てなく優しく接する方なので、お話しするとあたたかい気持ちになるんです。
鈴木:共通の演出家さんと一緒にお仕事をしていることもあって、どういう感じなのかなと思ってたんですけど、今回で感じるのは熱量の高さというか。現場に熱を持ち込んでくれる人がいるのはすごくプラスなことで、絶対に刺激になる。助けられてますね。
――今作は『しにつか』の愛称で親しまれてますが、こうやってオリジナル作で続編ができるのも、なかなかないかなと思いました。
鈴木:嬉しいです。やっぱり観てくださった方が続編を期待していただかないと、次につながらないことですし、みんなで「やりたいね」と言ってたことが形にもなって。本当に感謝しています。
――ファンの広がりも大きかったという話も聞いています。そういう反響などは感じられてましたか?
鈴木:僕の場合は、周りの役者から「ムビ×ステやったんでしょう?」「どういう作品?」とよく聞かれていたことが印象深いです。役者の中でも徐々に浸透してきてるんだなと感じています。
――役者の方からの注目もあったんですね。鈴木さんは前作の舞台版には出られていませんが、いないのに幻士郎の影響が強い作品になっていたと感じました。
鈴木:話を出してくれたからこそ、「次は絶対に舞台も出てやるぞ」という意気込みにつながりましたし、それが今回実現したことが嬉しいです。前回の舞台を観ていただいた方にはわかりやすいと思うんですけど、今回の舞台と時系列が同じなんです。前回の舞台の裏で何が行われたかというところに焦点を当てています。
――小林さんは今回から参加することになりまして、また前作の十蘭とも違った立ち位置での登場となりそうですね。
小林:安井くんとは映画の撮影現場でお会いしたのですが、十蘭は「割とつんつんしてるんだ」と思って。逆に亞門は後輩に徹することができるというか、経験の浅い死神だからこそ好奇心旺盛に立ち回れるというところを存分に楽しみました。
――後輩キャラというところでは、作品に入りやすかったところはあるんですか?
小林:自分としては経験してきていないタイプの役なので、会話のテンポも普段の1.5倍くらいを意識してみました。
鈴木:たしかに!
小林:会話がどんどん続いていくのでエネルギーは使いますけど、ふだんの小林亮太だと言えないことも、亞門でいる時は素直に発することができるのが楽しいです。
鈴木:舞台では特に掛け合いがあると思います。本筋以外にも細かい事件がたくさん起こるので、「何それ?」みたいな食いつきの連続で。そのテンポがどこか“傾いて”見えれば……というのが、今回の裏テーマです。どこまで傾けるか、とりあえず1回入れてみて精査しています。
小林:自分が出てないシーンでも、拡樹さんのお芝居を見て「ああ、幻士郎さんはそうやってやるのか。じゃあ幻士郎さんを慕っている亞門もこういうことができるかな」みたいなことを日々トライしています。僕は演出の毛利さんから「ここ、天丼やろうか」と言われて。稽古場で「天丼」と言われたのが初めてで、そんなコメディ要素があるんだ! と思って勉強しています(笑)。稽古の序盤でそういう要素を入れていいと言われたので、逆に他の場面でも遊べるかな? ということは日々試してみています。
――確かに、台本を読ませていただいたら「幻士郎:(気の利いた一言)」みたいな記述があったり。
小林:あれは本当に怖いなあと思いました(笑)
鈴木:「気の利いた一言」と書いてあるってことは、釘を刺されたということですからね(笑)。その時、思ったことを素直に言えばいいかなとは思ってます。また今作では幻士郎が「死神遣い」という職業についてどう思っているかといったことや、父親との関係なども描かれていますし、自分にとっても幻士郎のデータが集まったというか、「こういうことだったんだな」ということが改めてわかり、より幻士郎の像を掴める作品になりました。
■実際にバディを組むなら誰?
――ちなみに、ご自身だったらどのキャラクターとバディを組みたいですか?
小林:今回バディものが初めてで、毛利さんから「ホームズとワトソンみたいな関係でいてほしい」と言われて稽古で探っている中なので、拡樹さんしか考えられないというか……。
鈴木:(笑)
小林:それこそ十蘭とか、死神同士で組んだりしても面白そうでなんですけど、やっぱり死神と人間というコンビが面白いなあとも思って。
――そこは「幻士郎」じゃなくて「拡樹さん」なんですか?
小林:そうですね(笑)。重ねちゃってる部分があるかもしれないです。
鈴木:それで言うと、幻士郎とお父さんの衒太夫(神尾佑)が組んでも面白いだろうし、今回は「市村一座」という歌舞伎の一家のお話も出てきますから、そのキャラクターと組んでも面白いことにはなるのかな。廣瀬(智紀)くん演じる左十朗も今回のキーマンですし、もう役を取っ払って本人とバディものでも面白いと思います。
小林:穏やかな空気が流れるんだろうなと思います(笑)
鈴木:そうでしょうね(笑)。悪気のない天然というか……。
小林:かわいらしい。
鈴木:すごいですよね。絶対にあの領域にたどり着けない(笑)
――色々な方の名前をあげていただいたんですが、1人選ぶとしたらいかがですか?
鈴木:僕はじゃあ、廣瀬智紀で!(笑) 左十朗もだけど、廣瀬智紀もキャラクターなので彼を選びたいです。
――廣瀬さん、愛されてますね。
鈴木:そうですね(笑)
――十蘭と亞門のキャラクターの違いについてはいかがですか?
鈴木:それは180度違います。十蘭は愛くるしいんですけど、塩対応ですから(笑)。盛り上がってきたところで彼がぐさっと刺したら終了、みたいなテンプレートが2人にあって、心地よいタイプ。逆に亞門とは波長が同じなので、会話がどんどん続いて誰か止めてくれよ! となるのが楽しいタイプです。
小林:僕自身は、どう演じても十蘭とは違うだろうなと思って意識はしてないんです。ただ稽古場で面白かったのは、亞門が変化すると“亞斬刀”で、十蘭が変化すると“蘭斬刀”なんですけど、拡樹さんが僕のことを「蘭斬刀!」と言ったんですよ! 「違う!!」と思って! ふと十蘭先輩に嫉妬心を……(笑)
鈴木:(爆笑)
小林:やっぱ十蘭か! と感じましたけど(笑)
鈴木:これは絶対にあっちゃだめなことですけど、幻士郎もやりかねないなと思いました。
小林:たしかに、本番でもありうるんだろうなと(笑)。本番でやったらつっこまなきゃいけないなと思って。
鈴木:頼りにしてる(笑)
小林:そういうやりとりがあってもおかしくない関係かなと思っています。
――では、最後に改めて作品の見どころを教えてください。
小林:時代劇×ファンタジーの中に歌舞伎が出てきたり、いろんな要素が詰まっている作品だと思うんです。役者の方々が個性豊かというか、色々なフィールドで培ってきたアイディアが稽古場にあふれてるので、何も考えずに来ていただいて、軸となっていくミステリを解決していく様子を僕らと同じ目線で楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。僕も王道ミステリに挑むのは初めてなので、台本を読んでいても「これってどことつながってるんだ!?」と思ったりして、舞台を見ながら解決していただけるのが楽しいんじゃないかなと思います。
鈴木:読みながら逆推理しなきゃいけないもんね。
小林:どこが伏線だろ!? と考えながら読んでいます。
鈴木:ファンタジーやミステリ、さらには戦隊モノ!? みたいな要素がごちゃまぜな上に、お話が王道でわかりやすいので、ストーリー自体も楽しんでほしいですし、そこを肉付けするようにキャラクターの人間臭さが表現されているので、どう味わってもらえるのかが楽しみです。とにかく笑って帰ってほしいなというのが一番のテーマかな。笑ってほしいです!
■鈴木拡樹
1985年6月4日生まれ、大阪府出身。2007年、テレビドラマ『風魔の小次郎』で俳優デビューし、2008年、『最遊記歌劇伝 -Go to the West-』で初主演を果たす。以来舞台『弱虫ペダル』(12~)シリーズ、舞台『刀剣乱舞』(16~)シリーズなどで活躍し、2.5次元界を牽引。近年は舞台『髑髏城の七人 Season月 下弦の月』(17~18)、『No.9 ー不滅の旋律ー』(18~19)、『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』「バクマン。」THE STAGE(21年)、ドラマ『虫籠の錠前』『カフカの東京絶望日記』(19年)、『映画 刀剣乱舞』(19年)、映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(20年)などに出演する。舞台『アルキメデスの大戦』(22年10月)上演、『映画刀剣乱舞-黎明-』(23年公開)を控える。 衣装/半袖シャツ・パンツ:PAZZO (パッゾ)、長袖シャツ:NUMBER (N)INE (ナンバーナイン)
■小林亮太
1998年12月16日生まれ、愛知県出身。映画、ドラマ、舞台などで活躍し主な出演作に『仮面ライダーアマゾンズ』シリーズ(16〜17年)、『ミュージカル 忍たま乱太郎』シリーズ(15年〜18年)、『僕のヒーローアカデミア』The "Ultra" Stageシリーズ(19年〜)、舞台『鬼滅の刃』シリーズ(20年〜)、Musical『HOPE』(21年)など。舞台『鬼滅の刃』其ノ参 無限夢列車(22年9月〜10月)、ミュージカル『キングアーサー』(23年1月〜3月)上演を控える。