ビジネスシーンや報道番組などでよく見聞きする「いたちごっこ」という言葉。「この議論はいたちごっこだ」などのフレーズを聞いたことがある人もいるでしょう。
今回は、いたちごっこの意味や語源、使い方などについて詳しく解説。また、いたちごっこの類語や英語表現などもあわせて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
いたちごっことは
いたちごっこの基本的な言葉の意味を紹介します。
いたちごっこの意味
いたちごっことは、同じようなことを繰り返すだけで決着がつかないことを意味する言葉です。
いつまでたっても埒(らち)が明かない様子や闘争などを表現しており、日常会話でもビジネスシーンでも使用されます。
なお、漢字で「鼬ごっこ」やカタカナで「イタチごっこ」と書かれる場合もありますが、ひらがなで「いたちごっこ」と記載するのが一般的です。
語源は子どもの遊び
「いたち」は細長い体を持つ夜行性の動物ですが、なぜこのいたちが堂々巡りである様子を表す慣用句につながるのでしょうか。実はいたちごっことは、いたちが直接の由来ではなく、江戸時代後期に流行した子どもの遊びが由来となっている言葉です。
このいたちごっことは、2人で向かい合って「いたちごっこ、ねずみごっこ」と唱えながら、互いに相手の手の甲をつねって自分の手をその上にのせ、それを交互に繰り返す際限のない遊びです。
これが転じて「お互いに同じようなことを繰り返して決着がつかないこと」という意味で使われるようになり、無益な状態を表す慣用句となりました。なお、なぜこの遊びに「いたちごっこ、ねずみごっこ」という掛け声が使われているかというと、素早くつまみ合う様子が、いたちやねずみの素早さや、かみつく様に似ているからといわれています。
いたちごっこの使い方と例文
日常生活だけでなく、ビジネスシーンでも使う機会があるいたちごっこという言葉。同じことをずっとやっていたとしても無駄だと思うときに使うため、あまりいい意味では使われません。
使用シーンを間違えないようにするためにも、例文で使い方を確認しておきましょう。
例文
・どれだけ新しいワクチンを開発しても耐性を備えたウイルスが現れる状況は、まさにいたちごっこだ
・偽ブランド品を摘発してもすぐに新たな偽造品が出てくるため、残念ながら常にいたちごっこである
・オレオレ詐欺のような犯罪は、別の形に姿を変えて繰り返されることが多く、警察と詐欺グループの間でいたちごっこの状態が続いている
・姉と弟は考え方がまったく異なる上にお互い譲歩しないため、話し合いをしてもいつもいたちごっこで解決につながらない
・いたちごっこの議論を続けているだけの状態に、チームメンバーは疲弊してしまっているようだ
・新プロジェクトに関する会議は、賛成派と反対派のいたちごっことなり、何も進展しないまま次回へと持ち越す形になった
いたちごっこの類語
言葉の意味をより深く理解したり使い方のポイントを把握したりするためには、類語を知ることが非常に効果的です。
いたちごっこにも、似た意味を持つ言葉や言い換え表現などがいくつかありますので、それぞれの言葉の意味や使い方などを覚えておきましょう。
埒(らち)が明かない
元々「埒が明く」で、物事にかたがつくという意味。「明かない」とした際は、「物事が解決しないこと」や「決着がつかないこと」という意味になる。同じようなことを繰り返す無益な状態を示す表現のため、いたちごっこの類語として使用できます。
「全員が自分の主張ばかりを押し通しても埒が明かない」のように使われることが多いです。
押し問答
「押し問答」とは、対立している者同士が自分の立場を主張し、少しも譲歩しない様子を表す言葉です。物事が解決に向けて進展しない場面などで、いたちごっこの言い換え表現として使用できます。
なお、一般的に「押し問答が繰り広げられる」「押し問答を繰り返す」の言い回しで使われることが多いので、覚えておくといいでしょう。
水掛け論
「水掛け論」は、互いに譲歩や理解をしようとせず、一向に進展しない議論やそのように言い争う様子などを表す言葉です。両者が主張を曲げずいつまでも議論や言い争いの決着がつかない状態はまさにいたちごっこであり、類語として使用できるシーンは多いでしょう。
「国会での水掛け論は時間の無駄だといえるだろう」のように使われます。
堂々巡り
「堂々巡り」とは、議論や思考が進まず同じところで巡っている様子を表す言葉です。語源は僧侶が祈願のために仏堂などの周りをぐるぐる回ったこととされ、「議論が堂々巡りする」などのように使用されます。
「いたちごっこ」と「堂々巡り」は似ていますが、「堂々巡り」が「1人で悩んだ結果答えが出なかった」という場合にも使用できる言葉である一方、「いたちごっこ」は2人もしくは2つ以上の事柄に対してのみ用いられる言葉です。文脈によっては同様に使用できない場合もあるため、注意するようにしましょう。
千日手(せんにちて)
「千日手(せんにちて)」は将棋のルールの一つ。同一局面が4回現れることで、この状態になると無勝負となり、はじめから将棋を指し直します。そのため、いつまでも局面が進展せず同じことを繰り返す状態の比喩表現として、「千日手」が使われることもあるようです。
「2人の議論は、まさに将棋でいう千日手に陥っていた」のように使用します。「いたちごっこ」と同じニュアンスで使える場面が多いので、類語の一つとして覚えておきましょう。
いたちごっこの英語表現
仕事で英語を使ったり外国人の知り合いが多かったりする人の中には、いたちごっこの英語表現を知りたい人もいるでしょう。
いたちごっこは、英語では「a cat‐and‐mouse game」というフレーズで表現することができます。
「a cat‐and‐mouse game」とは、猫とねずみの終わりのない追いかけっこを表現したものです。動物は違いますが、いたちごっこと同じ堂々巡りである様子を表現できるフレーズですので、覚えておくといいでしょう。
なお、「いたちごっこをする」と表現する場合は動詞「play」を用い、「a cat‐and‐mouse game」のあとに前置詞「with」+いたちごっこをする対象を置いて、文章を構成します。
・The swindler plays a cat‐and‐mouse game with the police.
(詐欺師と警察のいたちごっこだ)
いたちごっこの意味や、なぜいたちなのかなどをまとめました
いたちごっこは「同じようなことを繰り返すだけで決着がつかないこと」を意味する慣用句で、江戸時代にはやった子どもの遊びが語源となっています。
堂々巡りで決着がつかないことを表すときに使う言葉であるため、あまりいい意味では使用されません。ビジネスシーンなどで使い方を間違えないよう、注意してください。
類語や英語表現などもあわせて理解しておき、どんなシーンでも自信を持って使えるようにしておきましょう。