2000年にスタートした公的介護保険制度。保険料の支払額はいつから始まり、いくらかかるのか、介護サービスを受けられる条件やサービス利用時の自己負担額にいたるまで、詳しく解説します。
■介護保険料とは?
介護保険制度は社会全体で介護を必要とする人を支えるための社会保険制度で、市町村と特別区(広域連合を設置している場合は広域連合)が保険者となって運営しています。
現金給付ではなく、介護サービスの提供を受けられる現物給付が原則です。
介護保険は40歳以上が全員加入し、介護が必要になったときには申請をし、要介護認定を受けると、介護サービスを受けられます。
< 介護保険の被保険者 >
・第1号被保険者(65歳以上)
要介護状態になった原因を問わず、公的介護保険のサービスを受けられます。
・第2号被保険者(40歳から64歳)
加齢に起因する以下16種類の特定疾病によって要介護状態になった場合に限り、公的介護保険のサービスを受けられます。
【 特定疾病 】
・がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症
・後縦靭帯骨化症
・骨折を伴う骨粗鬆症
・初老期における認知症
・進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病(パーキンソン病関連疾病)
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・早老症
・多系統萎縮症
・糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
・脳血管疾患
・閉塞性動脈硬化症
・慢性閉塞性肺疾患
・両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
< 介護認定 >
介護サービスを受けるには要介護認定を受ける必要があります。
要介護度は、要支援1~要支援2、要介護1~要介護5の7段階に分けられています。
・要支援1/要介護状態とは認められないが、社会的支援を必要とする状態
・要支援2/生活の一部について部分的に介護を必要とする状態(状態の維持や改善が見込まれる)
・要介護1/生活の一部について部分的に介護を必要とする状態
・要介護2/軽度の介護を必要とする状態
・要介護3/中等度の介護を必要とする状態
・要介護4/重度の介護を必要とする状態
・要介護5/最重度の介護を必要とする状態
< 介護保険証(介護保険被保険者証)は65歳から >
介護保険被保険者証は65歳の誕生月に市区町村より郵送で交付されます。
40~64歳の被保険者には通常交付されません。特定疾病に該当し、要介護認定された人のみに交付されます。
介護保険被保険者証が交付されたら介護保険サービスを受けられるのではなく、別途要介護認定の手続きが必要となります。
■介護保険で利用できる介護サービスは?
介護保険では、利用者の状態に合ったサービスを受けられるように、ケアマネージャーが作成したケアプランをもとにサービスを利用します。
介護給付には、居宅介護サービス・施設サービス・地域密着型介護サービス・居宅介護支援があります。また、介護給付のほかに、介護予防サービス、地域密着型予防サービス、介護予防支援といった予防給付があります。予防給付は、要支援認定を受けた人が介護状態になることを予防するため、日常生活をできるだけ自力で行えるようにサポートしながら、心身機能の改善や維持を図ることを目的としています。
■介護保険料はいくらかかる?
介護保険料は「満40歳に達したとき」より徴収が始まります。
介護保険の財源は、公費が50%、残りの50%が保険料となっています。
介護保険料は、第1号被保険者と第2号被保険者の1人当たりの負担額が同じになるように、介護保険事業計画期間(3年)ごとに見直されます。
< 第1号被保険者(65歳以上) >
3年に1回、市町村ごとに条例で決められる基準額をもとに、本人や世帯の所得などにより段階的に設定されます。
保険料は、年金受給額が18万円以上の場合は年金から自動徴収、年金受給額が18万円未満の場合は口座振替か、役所・銀行・コンビニなどに納付書を持参して納付します。
< 第2号被保険者(40歳から64歳) >
・会社員や公務員の場合
加入している健康保険組合が定める保険料率を月給と賞与に掛けて算出されます。保険料は原則勤務先と折半で負担し、月給や賞与から天引きされます。 40歳以上の被扶養者の保険料は、原則別途納付する必要はありません。
・自営業者など国民健康保険加入者の場合
所得等に応じて市町村が保険料を定め、国民健康保険料に上乗せして徴収されます。保険料は口座振替か、役所・銀行・コンビニなどに納付書を持参して納付します。 国民健康保険には扶養の概念がないので、世帯の中に40歳以上65歳未満の国民健康保険加入者がいれば、その人の介護保険料が発生します。
■介護サービスを利用したときの自己負担は?
< 第1号被保険者(65歳以上) >
・合計所得金額160万円以上かつ年金収入+その他の合計所得金額280万円(第1号被保険者2人以上:346万円)以上…2割負担
・合計所得金額220万円以上かつ年金収入+その他の合計所得金額340万円(第1号被保険者2人以上:463万円)以上…3割負担
・上記に当てはまらない人…1割負担
< 第2号被保険者(40歳~64歳) >
所得に関わらず1割負担
< 支給限度額 >
在宅サービスでは、要介護度に応じて、介護保険で利用できる1カ月の上限額(支給限度額)が決められています。支給限度額を超えて介護サービスを利用した場合、超えた分は全額自己負担となります。
支給限度額は標準的な地域の例で、介護度に応じ50,320円~362,170円と支給限度額は変わります。大都市等の場合、介護サービスの利用料が高くなるため、支給限度額はさらに高くなります。
■介護の自己負担を抑える公的制度
< 高額介護サービス費 >
1カ月に支払った利用者負担の合計が負担限度額を超えたときに、超えた分が払い戻される制度です。
高額介護サービス費の対象となる部分は、公的介護保険の1~3割負担の部分です。福祉用具の購入費や住宅リフォームの負担分、施設サービスの食費・居住費や日常生活費などは高額介護サービス費の対象とならないので注意が必要です。
< 高額介護合算療養費制度 >
医療保険と介護保険における1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の自己負担の合算額が高額な場合に、自己負担を軽減する制度です。
【70歳未満の限度額】
■介護保険料を滞納したらどうなる?
保険料が納付期限までに納付されないときには、納付期限から20日以内に督促状が発行されます。延滞金が加算され、財産を差し押さえられる場合があります。また、保険料の滞納期間に応じて、保険給付の制限をうけることがあります。
< 1年以上滞納した場合 >
介護サービスを利用するとき、いったん費用の全額を自己負担することになります。滞納分を納付し、返還申請をすると、後で保険給付分が支給されます。
< 1年6カ月以上滞納した場合 >
介護サービスを利用するとき、いったん費用の全額を自己負担することになります。返還申請後も、保険給付分の一部または全部が一時的に差し止めとなり、滞納している保険料にあてられることがあります。
< 2年以上滞納した場合 >
介護サービスを利用するときには利用者の負担額が1割・2割負担の場合は3割へ、3割負担の場合は4割へ引き上げられます。また、2年が経過すると、時効により保険料が納められなくなります。
2年以上滞納すると、高額介護サービス費なども受けられなくなります。
滞納期間が長くなると、自己負担が重くなり、必要な介護サービスが受けられないことにもなりかねません。特に納付書で介護保険料を納付している人は、納付漏れには注意しましょう。
■介護保険料が払えないときは?
災害で大きな損害を受けたり、失業などで著しく収入が減ったりした場合には、保険料の減免を申請できます。また、納付期限の猶予も申請できます。
保険料の支払いが厳しいときには放置せずに、すぐにお住まいの市町村の介護保険窓口に相談するようにしましょう。
■まとめ
元気なときにはあまり意識しない介護保険ですが、実際に介護が必要になったときには暮らしを支えてくれる大切な制度です。
介護にかかる自己負担を減らすための制度も介護保険料を滞納すると利用が制限されてしまいます。
まずはうっかり滞納してしまうことがないように、40歳以上の人は、自分の介護保険料はどのように徴収されているのかを確認しておきましょう。